生活・療養環境による要望特性に応じたがん情報提供・相談支援体制の在り方:地域ニーズの検証と活性化人材の育成と普及

文献情報

文献番号
201908004A
報告書区分
総括
研究課題名
生活・療養環境による要望特性に応じたがん情報提供・相談支援体制の在り方:地域ニーズの検証と活性化人材の育成と普及
課題番号
H29-がん対策-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
藤 也寸志(国立病院機構九州がんセンター 消化管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 西山 正彦(札幌医科大学 医学部)
  • 片渕 秀隆(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 相羽 惠介(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 調 憲(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 渡邊 清高(帝京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,623,000円
研究者交替、所属機関変更
研究代表者交替 西山 正彦(平成31年4月1日~令和元年8月27日)→藤 也寸志(令和元年8月28日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
生活圏で異なる多様なニーズに対応し、求められるものへと正確につなぐ地域完結型情報提供・相談支援システムの確立を目指し、地域の情報提供・相談支援体制とこれを補強する人材養成プログラムを検証・支援し、地域ニーズの抽出に基づく相談支援・情報提供体制の在り方、これを効率化する人材の育成と介入モデル、療養を含めた地域情報づくりモデル等を提案する。
研究方法
(1) 最終年度として、昨年度までの「がん患者さんとご家族向け支援の実態調査」のアンケート調査(平成29年度)および聞き取り調査(平成30年度)の結果を詳細に解析し、地域の医療や介護福祉関連施設や事業所の特性による、がん患者に対応する相談・情報提供のニーズとその特徴を明らかにし、がん患者と家族向けの支援活動の実態を把握するとともに、実態に即した情報提供・相談支援の体制モデルや都道府県・市区町村向け地域情報づくりモデルやマニュアルの策定を目指した。
(2) 地域での患者・家族向けの情報提供や相談支援に携わる市井の人材育成制度である「がん医療ネットワークナビゲーター」の育成を推進した。
結果と考察
アンケート及び聞き取りによる「がん患者さんとご家族向け支援の実態調査」の結果の詳細な解析により、下記(1)~(5)に示すように相談支援・情報提供において新たな視点が生まれた。
(1)相談支援・情報提供ニーズに関し、実際に患者・家族から受けたニーズと施設担当者が感じるニーズとに大きな開きはうかがわれない。
(2)がんの経過に応じて相談ニーズは発生し、がん診療連携拠点病院の相談支援センター以外の、さまざまな専門性を有する関係者・施設でも幅広いニーズに対して積極的な対応が求められている。
(3)情報ニーズは幅広く、治療・検査・症状・セカンドオピニオン・紹介・在宅・緩和・社会保障制度・不安や精神的苦痛・患者会情報・グリーフケアなど多彩な相にわたっており、この傾向はほぼすべての施設で認められる。
(4)情報提供の実施で最もニーズを感じているものの解析では、施設属性や相談件数の多寡また施設の専門性により相談ニーズが異なる可能性がある。
(5)相談ニーズの地域差は、地域のがん医療体制、関連施設構成に依存する可能性がある。
その結果の妥当性を評価するには、より広域な調査が必要と考えられ、さらに地域ニーズの差を明らかにするためには施設属性別の地域差を比較検討しなければならないことがわかった。従って、最終年度に目標としたモデルやマニュアルの作成は時期尚早と判断して行わず、 今後の情報提供・相談支援の有効性向上と都道府県・市区町村向け地域情報づくりに資する基礎的情報と現時点での提案を「実態調査を踏まえた考察と今後の展望」としてまとめることにした。
以上の結果を、「2017年アンケート調査」、「2018年聞き取り調査」、「実態調査を踏まえた考察と今後の展望」としてまとめ冊子化した。さらに、がん医療ネットワークナビゲーターの養成支援の継続により、ナビゲーターやその予備軍の増加、全国への展開が見られ、「がん医療ネットワークナビゲーター~育成推進と活動拡大の都道府県別モデル~」と題する小冊子を作成し、これらの2つの成果物を、全国のがん診療連携拠点病院や各都道府県がん対策推進協議会、さらにアンケート調査への協力施設などに配信した。
本研究で実施した実態調査により、広範囲の医療・介護福祉従事者の情報ニーズと連携ニーズを知ることができた。がん診療連携拠点病院の相談や連携における役割分担や、当該地域の相談支援体制の充実に向けた連携構築のための課題や提案を得るきっかけになると考えられる。また、がん医療ネットワークナビゲーターなどの市井の人材を育成することによって、地域においてがんの相談支援や情報提供に関わる関係者が、地域のニーズに応じた対応策を講じたり、情報コンテンツや相談対応マニュアルの整備や顔の見える連携づくりなど先進的な取り組みを取り入れたりすることで、具体的な患者・家族支援につながるモデルを構築することが可能になることも期待される。
結論
がんの情報提供・相談支援やがん診療連携の実態を把握するため行った本調査は、従来がん診療連携拠点病院等を対象の中心とした調査とは一線を画すもので、がん患者や家族がそのニーズに応じて相談や情報支援を受ける場合に利活用する可能性のある医療・介護を含む関係者に幅広くご協力いただいて実施した初めての調査である。本研究の結果は、さまざまな専門性を有する関係者がニーズに応じた情報を整備し、支援体制の標準化を推進し、教育研修機会を確保することによって、がん患者と家族が必要とする情報や支援によりつながりやすくなる可能性があることを示唆する。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201908004B
報告書区分
総合
研究課題名
生活・療養環境による要望特性に応じたがん情報提供・相談支援体制の在り方:地域ニーズの検証と活性化人材の育成と普及
課題番号
H29-がん対策-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
藤 也寸志(国立病院機構九州がんセンター 消化管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 西山 正彦(札幌医科大学 医学部)
  • 片渕 秀隆(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 相羽 惠介(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 調 憲(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 渡邊 清高(帝京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
研究代表者交替 西山 正彦(平成31年4月1日~令和元年8月27日)→藤 也寸志(令和元年8月28日以降) 所属機関異動 研究分担者 西山 正彦 群馬大学 大学院医学系研究科( 平成29年4月1日~31年3月1日)→ 札幌医科大学 医学部(平成31年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
生活圏で異なる多様なニーズに対応し、求められるものへと正確につなぐ地域完結型情報提供・相談支援システムの確立を目指し、地域の情報提供・相談支援体制とこれを補強する人材養成プログラムを検証・支援し、地域ニーズの抽出に基づく相談支援・情報提供体制の在り方、これを効率化する人材の育成と介入モデル、療養を含めた地域情報づくりモデル等を提案する。
研究方法
(1)と(2)を併行して推進し、地域の情報提供・相談支援体制の実態把握、ニーズの抽出、対応モデル・マニュアルの提案を目指した。
(1) 地域ニーズに基づく情報提供体制の在り方研究
がん診療連携拠点病院・連携医療機関とそれ以外の広範囲の医療介護施設を対象としてアンケート調査・聞き取り調査により「がん患者さんとご家族向け支援の実態」を把握し、実態に即した情報提供・相談支援の体制モデルの策定を試みた。
(2) 支援体制活性化人材の養成並びにその介入モデルの確立研究
情報提供・相談を求める患者・家族を効率よく専門的施設につなぐ、日本癌治療学会によるがん医療ネットワークナビゲーター養成プログラムを支援し、有効な介入モデルの提案を目指した。
結果と考察
(1) 「がん患者さんとご家族向け支援の実態調査」の結果、以下の5点が明らかになった。①相談支援・情報提供ニーズに関し、実際に患者・家族から受けたニーズと施設担当者が感じるニーズとに大きな開きはなかった。
②がんの経過に応じて相談ニーズは発生し、がん診療連携拠点病院の相談支援センター以外の様々な専門性を有する関係者・施設でも幅広いニーズに対して積極的な対応が求められていた。
③情報ニーズは幅広く多彩な相に亘っており、この傾向はほぼすべての施設で認められた。
④情報提供の実施で最もニーズを感じているものの解析では、施設属性や相談件数の多寡また施設の専門性により相談ニーズが異なった。
⑤相談ニーズの地域差は、地域のがん医療体制、関連施設構成に依存する可能性があった。
この結果の妥当性を評価するには、より広域な調査が必要と考えられ、さらに地域ニーズの差を明らかにするためには施設属性別の地域差の比較検討が必要であることがわかった。従って、目標としたモデルやマニュアルの作成は時期尚早と判断して行わず、 今後の情報提供・相談支援の有効性向上と地域情報づくりに資する基礎的情報と現時点での提案を「実態調査を踏まえた考察と今後の展望」としてまとめて冊子化した。
(2) 日本癌治療学会のがん医療ネットワークナビゲーター育成制度を支援した。その結果、シニアナビゲーター69名、ナビゲーター344名が資格認定に至り、シニアナビゲーター資格取得予備軍となる実地見学中途者29名、コミュニケーションスキルセミナー修了者が240名、さらにナビゲーター資格取得予備軍となるe-LEARNING受講者数も499名と大幅に増加した(令和元年11月時点)。この養成支援と実効性検証研究の結果をもとに、「がん医療ネットワークナビゲーター~育成推進と活動拡大の都道府県別モデル~」と題する小冊子を作成した。
(3)(1), (2)の成果物を、全国のがん診療連携拠点病院や各都道府県がん対策推進協議会、さらにアンケート調査への協力施設などに配信した。
本研究の結果、病院や診療所などの積極的医療提供機関と、療養介護施設との連携が必ずしも円滑ではない状況がうかがわれた。多岐にわたる対応諸機関において、互いの情報ニーズと連携ニーズの実態を把握することは、間接的にその地域の患者・家族・支援者のニーズを捉えることにつながり、必要な情報や連携構築に向けた支援のきっかけになる。これを支える人材の養成は、患者・家族・支援者のニーズに応えるために不可避な要素である。
結論
以下の4点を提言する。
1. がん診療連携拠点病院やそれと連携する病院群以外の医療・介護施設やその従事者への情報提供・相談支援の不足(情報が届かず孤立している)や円滑な連携が不足している。
2. これらの克服にはがん診療連携拠点病院の努力のみでは不十分であり、これを支える市井の人材の育成は、患者・家族のみならず、それらを地域で支える広範囲の医療・介護従事者への支援に不可避な要素である。
3. がんの経過に応じて発生する多様なニーズに対して、様々な専門性を有する関係者が、地域の育成人材とともに、ニーズに応じた情報を整備し、支援体制を標準化し、教育研修機会を確保することによって、がん患者と家族が必要とする情報や支援によりつながりやすくなる可能性がある。
4. 適切ながんの情報提供・相談支援の達成のためには、拠点病院を中心とした活動の外にも目を向ける必要があることを提言する。

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
総合研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201908004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
① がん診療連携拠点病院・連携医療機関とそれ以外の広範囲の医療介護施設を対象とした「がん患者さんとご家族向け支援の実態」に関するアンケート調査、それを検証するための聞き取り調査を行い、② 地域のがん情報提供・相談支援体制を補強する人材育成制度を支援し、有効な介入モデルを提案することで、生活圏で異なる多様なニーズに対応し求められるものへと正確につなぐ地域完結型がん情報提供・相談支援体制を確立する道筋を示した。
臨床的観点からの成果
「がん患者さんとご家族向け支援の実態調査」の結果、①がんの経過に応じて相談ニーズは発生し、がん診療連携拠点病院の相談支援センター以外の、様々な専門性を有する関係者・施設でも幅広いニーズに対して積極的な対応が求められていること、②情報ニーズは幅広く多彩な相に亘っており、この傾向はほぼ全ての施設で認められること、③情報提供の実施で最もニーズを感じているものは施設属性や専門性により異なることを明らかにした。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発に関する成果は、現時点ではない。地域のがん診療連携拠点病院に関わる施設以外の広範な地域の医療介護領域を含む、地域でのがん情報提供・相談支援の実態調査の結果を、「実態調査を踏まえた考察と今後の展望」として冊子化した。さらに、市井の人材育成制度である「がん医療ネットワークナビゲーター育成」への行政を含む各都道府県で異なる取組み方について、先行5都道府県別モデルを小冊子化し全国へ提示した。
その他行政的観点からの成果
令和5年3月に発出された第4期がん対策推進基本計画(3. がんとともに尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築の中の「相談支援について取り組むべき施策」)において、厚労省との議論を通じて、本活動を示す「国による社会的人材リソースの活用」が明記された。更なる議論により「関係学会等によるがんの相談支援・情報提供に関する一定の研修を受け、必要に応じ、がん患者やその家族等に対し、拠点病院等のがん相談支援センターを紹介できる地域の人材等が想定される。」と注釈が追加された。
その他のインパクト
市井の人材育成制度である「がん医療ネットワークナビゲーター育成」は、癌治療学会で継続推進されている。現在、800人以上のナビゲーターが誕生している。本年度の学術集会において、例年と同じく、認定がん医療ネットワークナビゲーター検証ワーキングと生涯教育ワーキングによる合同ワークショップ、認定がん医療ネットワークナビゲーター交流会、ナビゲーターのスキルアップセミナー、認定がん医療ネットワークナビゲーターと委員による相互交流会などのセッションが計画され、認定後の活動の支援がなされている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第61回日本癌治療学会学術集会において、がん医療ネットワークナビゲーターに関する検証ワークショップや交流会を開催した。第62回(2024年度)でも同様のセッションが企画されている。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
第4期がん対策推進基本計画の「相談支援において取り組むべき施策」として、がん医療ネットワークナビゲーターを示す記載がなされた。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
がん医療ネットワークナビゲーターのWEB交流を、東京、神奈川、福岡、熊本等を中心として継続的に開催している。また、厚労省健康局がん疾病・対策課へ、本研究の意義を説明した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2024-05-27

収支報告書

文献番号
201908004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,309,000円
(2)補助金確定額
7,309,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 667,800円
人件費・謝金 0円
旅費 1,257,734円
その他 3,697,466円
間接経費 1,686,000円
合計 7,309,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-02-24
更新日
-