小児期に発症する遺伝性腫瘍に対するがんゲノム医療体制実装のための研究

文献情報

文献番号
201908002A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期に発症する遺伝性腫瘍に対するがんゲノム医療体制実装のための研究
課題番号
H29-がん対策-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
熊本 忠史(国立研究開発法人国立がん研究センター (1)中央病院小児腫瘍科、(2)中央病院遺伝診療部門)
研究分担者(所属機関)
  • 中川原章(佐賀国際重粒子線がん治療財団)
  • 恒松由記子(順天堂大学医学部・小児科学講座)
  • 金子安比古(埼玉県立がんセンター・血液内科)
  • 鈴木茂伸(国立がん研究センター中央病院・眼腫瘍科)
  • 川井章(国立がん研究センター中央病院・骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
  • 田尻達郎(京都府立医科大学医学(系)研究科(研究院))
  • 中野嘉子(大阪市立大学大学院医学研究科・医学部ゲノム免疫学)
  • 真部淳(北海道大学医学部小児科)
  • 高木正稔(東京医科歯科大学院医歯学総合研究科・発生発達病態学講座)
  • 服部浩佳(名古屋医療センター・臨床研究センター:予防治療研究室)
  • 宮坂実木子(国立成育医療研究センター小児放射線診断科)
  • 野崎太希(聖路加国際大学聖路加国際病院・放射線診断科)
  • 滝田順子(京都大学大学院医学研究科・発達小児科学)
  • 舩戸道徳(長良医療センター・①第二小児科②再生医療研究室)
  • 伊藤道哉(東北医科薬科大学医学部・医学部医療管理学教室)
  • 田村智英子(FMC東京クリニック・医療情報遺伝カウンセリング部)
  • 田代志門(東北大学大学院文学研究科・社会学研究室)
  • 掛江直子(国立成育医療研究センター臨床研究センター・生命倫理研究室/小児慢性特定疾病情報室)
  • 濱島ちさと(帝京大学・ 医療技術学部)
  • 山崎文登 (慶応義塾大学小児科)
  • 寺澤晃彦 (藤田医科大学救急総合内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,503,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者:真部淳 所属機関名:聖路加国際大学ー→北海道大学 研究分担者:田代志門 所属機関名:国立がん研究センター→東北大学 新規加入 研究分担者:山崎文登 所属機関名:慶應義塾大学 研究分担者:寺澤晃彦 所属機関名:藤田医科大学

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国においてがんゲノム医療提供体制を実装するために、特に小児期およびAYA世代に発症する遺伝性腫瘍に焦点を当て、それらを横断的に扱う診療ガイドライン(GL)を整備し、政策として提言することである。これを達成するため、(1)小児に遺伝学的検査を実施する際の小児およびその家族に対する遺伝カウンセリングを横断的に扱ったGL、(2)多岐に渡る遺伝性腫瘍を個別に扱ったGLの整備を主要研究目標とした。
研究方法
(1) 国内外の遺伝性腫瘍の指針、研究などを吟味して、遺伝カウンセリングの要点をまとめ、LFS患者・家族に対する遺伝カウンセリングで使用するLFSの説明文書、また、医療者用SOPを作成する。
(2-1)LFSの診療GLの作成:LFS-GL作成委員会でClinical Question (CQ)を作成し、Systematic Review (SR)委員会においてSRを行い、Evidence Report(ER)を作成する。これに基づいてLFS-GL作成委員会がCQに対する推奨・GLを作成する。GLは外部評価を経て2019年度版とする。
(2-2) 各遺伝性腫瘍のGLの整備:米国がん学会がH29年にClinical Cancer Research誌に公表した小児期/AYA世代に発症する遺伝性腫瘍の推奨サーベイランス法を中心としたフォローアップとケアの基準に関する17件の論文についてレビューワークを行った後に、ガイダンスを作成、外部評価を経て公表する。
(3)遺伝性腫瘍診療の実態調査:
本邦における小児遺伝性腫瘍診療の実態を明らかにするため、小児がん診療施設を対象にアンケート調査を行い、結果を論文化する。
結果と考察
(1)患者説明文書「LFSについてご理解いただくために」と、医療者用SOP文書「LFSの遺伝カウンセリングの手引き」を作成した。前者はがんの子どもを守る会のレビューを受けた。
(2-1)10,000件を超える文献のSRから作成したERに基づき、「LFS診療ガイドライン」を作成した。CQに対する推奨に対する合意形成は研究分担者・協力者による投票にて行い、GLの外部評価は日本小児血液・がん学会(JSPHO)および日本遺伝性腫瘍学会のパブリックコメント公募により実施した。
(2-2)「小児遺伝性腫瘍診療ガイダンス」を作成した。外部評価は、JSPHOのパブリックコメント公募により実施した。
(3)JSPHO研修施設112施設に対してアンケート調査を実施した。82施設より返信があった。結果を論文化し、英文雑誌Pediatric Blood & Cancerに投稿し掲載された。
がんゲノム医療の普及に伴い遺伝性腫瘍と診断される患者が増加している。実態調査によると、本邦には遺伝学的検査やがんサーベイランスが保険適用になく、小児遺伝性腫瘍患者やその家族への遺伝カウンセリング、心理学的ケアなどの指針もないので、遺伝性腫瘍の対応に苦慮していることが示唆された。本研究班が作成した「LFSの遺伝カウンセリングの手引き」および「LFSについてご理解いただくために」は遺伝性腫瘍患者への遺伝カウンセリング、心理学的ケアに役立つものと考える。
小児遺伝性腫瘍のフォローアップ法として、がんサーベイランスが重要である。米国がん学会が策定した推奨がんサーベイランス法を基に作成した「小児遺伝性腫瘍診療ガイダンス」、および、厳密なシステマティックレビューに基づいた「LFS診療ガイドライン」は本邦における小児遺伝性腫瘍の包括的診療体制整備に役立つ。
各々の小児遺伝性腫瘍は希少疾患である。実態調査では、本邦にはそれぞれの遺伝性腫瘍の専門家は限られており、今後より良い診療体制を整備するためには、前方視的に遺伝性腫瘍発端者およびその血縁者の遺伝学的情報や臨床情報を定期的に収集し、解析結果を担当医療者や患者にフィードバックするようなシステムの構築が必要である。このような情報の収集先となる患者登録システムや検体保存システムを構築した上で、遺伝学的検査、遺伝カウンセリング、がんサーベイランスを小児遺伝性腫瘍診療の骨格として、前方視的に実行していくことが必要である。
結論
政策提言
ゲノム医療の時代においてLFSをはじめとする遺伝性腫瘍の診断は回避できない。遺伝性腫瘍診断の影響は発端者のみならず近親者へも波及する。がん発症の有無に関わらず、遺伝性腫瘍と診断された人がいつでも受けることができる臨床研究を準備し、この結果に基づいて包括的診療体制を整備していく。臨床研究を実施するために、以下を政策提言する。
1) 遺伝性腫瘍レジストリの構築
2) 遺伝性腫瘍を専門とする遺伝カウンセラーの育成
TP53をはじめとするがん易罹患性遺伝子の遺伝学的検査、がんサーベイランスに要する費用に対する公的補助

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201908002B
報告書区分
総合
研究課題名
小児期に発症する遺伝性腫瘍に対するがんゲノム医療体制実装のための研究
課題番号
H29-がん対策-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
熊本 忠史(国立研究開発法人国立がん研究センター (1)中央病院小児腫瘍科、(2)中央病院遺伝診療部門)
研究分担者(所属機関)
  • 中川原 章(佐賀国際重粒子線がん治療財団)
  • 恒松由記子(順天堂大学医学部・小児科学講座)
  • 金子安比古(埼玉県立がんセンター・血液内科)
  • 鈴木茂伸(国立がん研究センター中央病院・眼腫瘍科)
  • 川井 章(国立がん研究センター中央病院・骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
  • 田尻達郎(京都府立医科大学医学(系)研究科(研究院))
  • 中野嘉子(大阪市立大学大学院医学研究科・医学部ゲノム免疫学)
  • 真部 淳(北海道大学医学部小児科)
  • 高木正稔(東京医科歯科大学院医歯学総合研究科・発生発達病態学講座)
  • 服部浩佳(名古屋医療センター・臨床研究センター:予防治療研究室)
  • 宮坂実木子(国立成育医療研究センター小児放射線診断科)
  • 野崎太希(聖路加国際大学聖路加国際病院・放射線診断科)
  • 滝田順子(京都大学大学院医学研究科・発達小児科学)
  • 舩戸 道徳(長良医療センター・①第二小児科②再生医療研究室)
  • 伊藤道哉(東北医科薬科大学医学部・医学部医療管理学教室)
  • 田村智英子(FMC東京クリニック・医療情報遺伝カウンセリング部)
  • 田代志門(東北大学大学院文学研究科・社会学研究室)
  • 掛江直子(国立成育医療研究センター臨床研究センター・生命倫理研究室/小児慢性特定疾病情報室)
  • 濱島ちさと(帝京大学・ 医療技術学部)
  • 山崎 文登(慶応義塾大学小児科)
  • 寺澤晃彦(藤田医科大学救急総合内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
2018年度 所属機関異動 研究分担者:中川原 章 所属機関名:佐賀医療センター好生館ー→佐賀国際重粒子線がん治療財団 研究分担者:中野嘉子 所属機関名:国立がん研究センター→大阪市立大学 研究分担者:滝田順子 所属機関名:東京大学ー→京都大学 研究分担者:濱島ちさと 所属機関名:国立がん研究センター→帝京大学 2019年度 所属機関異動 研究分担者:真部淳 所属機関名:聖路加国際大学ー→北海道大学 研究分担者:田代志門 所属機関名:国立がん研究センター→東北大学 新規加入 研究分担者:山崎文登 所属機関名:慶應義塾大学 研究分担者:寺澤晃彦 所属機関名:藤田医科大学

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国においてがんゲノム医療提供体制を実装するために、特に小児期およびAYA世代に発症する遺伝性腫瘍に焦点を当て、それらを横断的に扱う診療ガイドライン(GL)を整備し、政策として提言することである。これを達成するため、(1)小児に遺伝学的検査を実施する際の小児およびその家族に対する遺伝カウンセリングを横断的に扱ったGL、(2)多岐に渡る遺伝性腫瘍を個別に扱ったGLの整備を主要研究目標とした。
研究方法
(1) 国内外の遺伝性腫瘍の指針、研究などを吟味して、遺伝カウンセリングの要点をまとめ、LFS患者・家族に対する遺伝カウンセリングで使用するLFSの説明文書、また、医療者用SOPを作成する。
(2-1)LFSの診療GLの作成:LFS-GL作成委員会でClinical Question (CQ)を作成し、Systematic Review (SR)委員会においてSRを行い、Evidence Report(ER)を作成する。これに基づいてLFS-GL作成委員会がCQに対する推奨・GLを作成する。GLは外部評価を経て2019年度版とする。
(2-2) 各遺伝性腫瘍のGLの整備:米国がん学会がH29年にClinical Cancer Research誌に公表した小児期/AYA世代に発症する遺伝性腫瘍の推奨サーベイランス法を中心としたフォローアップとケアの基準に関する17件の論文についてレビューワークを行った後に、ガイダンスを作成、外部評価を経て公表する。
(3)遺伝性腫瘍診療の実態調査:
本邦における小児遺伝性腫瘍診療の実態を明らかにするため、小児がん診療施設を対象にアンケート調査を行い、結果を論文化する。
結果と考察
(1)患者説明文書「LFSについてご理解いただくために」と、医療者用SOP文書「LFSの遺伝カウンセリングの手引き」を作成した。前者はがんの子どもを守る会のレビューを受けた。
(2-1)10,000件を超える文献のSRから作成したERに基づき、「LFS診療ガイドライン」を作成した。CQに対する推奨に対する合意形成は研究分担者・協力者による投票にて行い、GLの外部評価は日本小児血液・がん学会(JSPHO)および日本遺伝性腫瘍学会のパブリックコメント公募により実施した。
(2-2)「小児遺伝性腫瘍診療ガイダンス」を作成した。外部評価は、JSPHOのパブリックコメント公募により実施した。
(3)JSPHO研修施設112施設に対してアンケート調査を実施した。82施設より返信があった。結果を論文化し、英文雑誌Pediatric Blood & Cancerに投稿し掲載された。
がんゲノム医療の普及に伴い遺伝性腫瘍と診断される患者が増加している。実態調査によると、本邦には遺伝学的検査やがんサーベイランスが保険適用になく、小児遺伝性腫瘍患者やその家族への遺伝カウンセリング、心理学的ケアなどの指針もないので、遺伝性腫瘍の対応に苦慮していることが示唆された。本研究班が作成した「LFSの遺伝カウンセリングの手引き」および「LFSについてご理解いただくために」は遺伝性腫瘍患者への遺伝カウンセリング、心理学的ケアに役立つものと考える。
小児遺伝性腫瘍のフォローアップ法として、がんサーベイランスが重要である。米国がん学会が策定した推奨がんサーベイランス法を基に作成した「小児遺伝性腫瘍診療ガイダンス」、および、厳密なシステマティックレビューに基づいた「LFS診療ガイドライン」は本邦における小児遺伝性腫瘍の包括的診療体制整備に役立つ。
各々の小児遺伝性腫瘍は希少疾患である。実態調査では、本邦にはそれぞれの遺伝性腫瘍の専門家は限られており、今後より良い診療体制を整備するためには、前方視的に遺伝性腫瘍発端者およびその血縁者の遺伝学的情報や臨床情報を定期的に収集し、解析結果を担当医療者や患者にフィードバックするようなシステムの構築が必要である。このような情報の収集先となる患者登録システムや検体保存システムを構築した上で、遺伝学的検査、遺伝カウンセリング、がんサーベイランスを小児遺伝性腫瘍診療の骨格として、前方視的に実行していくことが必要である。
結論
政策提言
ゲノム医療の時代においてLFSをはじめとする遺伝性腫瘍の診断は回避できない。遺伝性腫瘍診断の影響は発端者のみならず近親者へも波及する。がん発症の有無に関わらず、遺伝性腫瘍と診断された人がいつでも受けることができる臨床研究を準備し、この結果に基づいて包括的診療体制を整備していく。臨床研究を実施するために、以下を政策提言する。
1) 遺伝性腫瘍レジストリの構築
2) 遺伝性腫瘍を専門とする遺伝カウンセラーの育成
TP53をはじめとするがん易罹患性遺伝子の遺伝学的検査、がんサーベイランスに要する費用に対する公的補助

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201908002C

収支報告書

文献番号
201908002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,053,000円
(2)補助金確定額
10,286,000円
差引額 [(1)-(2)]
767,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,144,733円
人件費・謝金 2,468,160円
旅費 2,773,425円
その他 1,350,432円
間接経費 2,550,000円
合計 10,286,750円

備考

備考
自己資金:750円

公開日・更新日

公開日
2021-03-01
更新日
-