児童福祉施設における栄養管理のための研究

文献情報

文献番号
201907022A
報告書区分
総括
研究課題名
児童福祉施設における栄養管理のための研究
課題番号
19DA2001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
研究分担者(所属機関)
  • 石田裕美(女子栄養大学 栄養学部)
  • 由田克士(大阪市立大学大学院 生活科学研究科)
  • 野末みほ(常葉大学 健康プロデュース学部)
  • 原 光彦(東京家政学院大学 人間栄養学部)
  • 阿部 彩(東京都立大学 人文科学研究科)
  • 緒方裕光(女子栄養大学 栄養学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、健やか次世代育成の政策を学術面からサポートする役割をもち、児童福祉施設や子どもの実態を把握し分析する。日本において子どもの貧困率は13.9%(2015年)と先進国の中でも高い。特に社会経済的に困難な子どもでは、保育所をはじめとする児童福祉施設での給食が、必要な栄養の確保に重要であることが考えられる。しかし、これらを実証した研究はみられない。さらに、児童福祉施設の食事の提供にあたっては、必要な各種栄養素等の量が1日単位で示されている「日本人の食事摂取基準」を参考に、各施設が提供する給食等の給与栄養量の目標を設定することになっている。しかし、どの程度の給与量が設定され、実際の食事としてどの程度提供されているかの実態は不明であることから、児童福祉施設の栄養管理の検証が必要である。そこで、本研究の目的は、①児童福祉施設に通う子どもの発育、食事とその中での給食の役割を、家庭の社会経済的条件との関連をふまえて、明らかにすること。②児童福祉施設の栄養管理の質の向上のために、給食の提供基準を検討すること。これらのエビデンスをもとに、児童福祉施設の栄養管理に資する基準(給食摂取基準)の策定への提言。「保育所における食事の提供ガイドライン」及び「児童福祉施設における食事の提供ガイド」改定にあたっての提言につなげる。
研究方法
3年間の全体計画では、1年目に保育所等の児童福祉施設の栄養管理の実態調査をおこない(研究1)、2年目に保育所等を利用する園児の調査を実施し(研究2)、3年目に保育所以外の児童福祉施設を含めた事例調査とまとめをおこなう計画である。
令和元年度は1年目であり、主に研究1について実施した。全国を8つのブロックに分け(北海道、東北、関東甲信越、近畿、東海、中国・四国、九州、沖縄)、各ブロックから1都道府県を選び、その中の政令市または中核市1市にある全ての保育所等を対象とした(札幌市、仙台市、川崎市、浜松市、堺市、松山市、熊本市、那覇市)。調査票を用いた郵送法で調査を実施した。回収率をあげるため調査依頼にあたっては公益社団法人日本栄養士会、社会福祉法人日本保育協会、公益社団法人 全国私立保育園連盟、自治体等の協力を得た。
さらに、研究2について、園児の食事調査の調査方法を標準化するため、近畿、東北ブロックで先行実施した。調査は、保護者による平日2日、休日2日の園児の食事記録、世帯状況等の質問紙調査、施設での身体計測値記録である。施設で調査票の配布、回収を依頼した。
結果と考察
研究1では、1537施設のうち979施設から回答を得た(回収率63.7%)。その内、運営形態に回答のあった962施設(62.6%)を解析した。運営形態は、公立19.8%、私立80.2%であり、認可保育園が72.9%であった。給食形態は完全給食の施設が公立54.5%、私立84.2%であった。栄養状態等のアセスメントとして、身長、体重の把握、昼食の摂取状況の把握はほとんどの施設で実施されていたが、給与栄養目標量の設定や見直しに結び付いていなかった。完全給食の場合、おやつを含む給与栄養目標量は、ミネラル、ビタミンは1日当たりの食事摂取基準の40~50%以上であり、給与量はエネルギー、カルシウム、食塩相当量を除き、給与目標量以上であった。たんぱく質は食事摂取基準の約90%の給与目標量、給与量であった。さらに、栄養管理加算、管理栄養士・栄養士の雇用の有無で栄養管理の実施状況の違いがみられ、栄養管理加算の認定なしに比べて、認定ありの施設、また、管理栄養士や栄養士の雇用なしに比べて、雇用されている施設では栄養管理が良好であった。
研究2では、明石市4施設322人中163人(50.6%)、仙台市7施設340人中100人(29.4%)から同意を得た。特に4日間の食事調査について、対象者の負担を軽減し、回収率を上げる必要性が示唆された。本結果より、食事記録を含め調査内容と方法について確認し、標準化した。
結論
研究1より、保育所等の栄養管理の実施状況は、対象者の身体状況の定期的な把握や給食の摂取状況の把握のアセスメントは実施されていたが、その結果は給与栄養目標量の設定や評価、見直しに必ずしも結びついておらず、栄養管理のPDCAサイクル化に課題が認められた。栄養管理のPDCAが実施される条件として栄養管理加算の認定、管理栄養士や栄養士の雇用が示唆された。栄養管理加算の認定、管理栄養士等の配置を推進しつつ、それを活かした栄養管理のPDCA手法について、ガイドラインの見直しが必要であると考えられた。研究2より、園児の食事調査の方法について決定し、次年度の調査のベースができた。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201907022Z