乳幼児健康診査に関する疫学的・医療経済学的検討に関する研究

文献情報

文献番号
201907019A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児健康診査に関する疫学的・医療経済学的検討に関する研究
課題番号
H29-健やか-指定-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院 総合研究部医学域社会医学講座)
  • 弓倉 整(弓倉医院)
  • 秋山 千枝子(西山 千枝子)(医療法人社団千実会)
  • 小倉 加恵子(国立成育医療研究センターこころの診療部 児童・思春期メンタルヘルス科)
  • 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 田中 太一郎(東邦大学 医学部)
  • 鈴木 孝太(愛知医科大学 医学部衛生学講座)
  • 佐々木 渓円(実践女子大学 生活科学部食生活科学科)
  • 朝田 芳信(鶴見大学 小児歯科学)
  • 船山 ひろみ(鶴見大学 小児歯科学)
  • 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 黒田 美保(名古屋学芸大学 ヒューマンケア学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児健康診査(以下、「乳幼児健診」とする。)で対処すべき疾病や健康課題に対して、疫学的な視点も加味して標準的な健診項目を提示し、医療経済学的にその効果を分析する手法を検討すること、及び、乳幼児健診事業と他の健診事業との連携を視野に入れた提言を行うこと。
研究方法
以下の研究目標について研究を進めた。
【研究目標1.1】乳幼児健診の標準的な健診項目の提示
1)標準的な医師診察項目の作成
2)保健指導における食物アレルギー対応の意義
【研究目標1.2】スクリーニング対象疾患の医療経済学的検討
1)3~4か月児健診におけるDDHのスクリーニング
2)乳児股関節検診への超音波検査導入の医療経済学的検討
【研究目標2】他の健康診査等との連携を視野に入れた乳幼児健診事業のあり方の検討
1)歯科保健分野における検討
2)栄養分野における検討
3)乳児健康診査の保健師業務の質的分析
【研究目標3】先行研究で開発した乳幼児健診の事業評価モデルの検証
結果と考察
【研究目標1.1】乳幼児健診の標準的な健診項目の提示
乳幼児健診でスクリーニングすべき疾病を選定する条件(1. 乳幼児健診で発見する手段がある、2. 発見や治療に臨界期と介入効果がある、3. 発症頻度が出生1万人に1人以上、または、4. 保健指導上重要を満たすこと、以下、「疫学的検討の条件」とする。)を定めた。疫学的検討の条件に基づいて、乳幼児健診における標準的な医師診察項目と対象疾患を作成した。他研究班や関連学会との協議を重ね、3歳児健診の頭囲測定と3~4か月児・1歳6か月児・3歳児健診の胸囲測定は測定の根拠に乏しいこと、1歳6か月児・3歳児健診の心雑音や呼吸音の聴診は疾病スクリーニングの根拠に乏しいこと、及び3歳児検尿は、現在の尿蛋白による方法では先天性腎尿路奇形のスクリーニングとして根拠に乏しいことを示した。
【研究目標1.2】スクリーニング対象疾患の医療経済学的検討
レセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database、以下「NDB」とする。)を用いた乳幼児健診の医療経済学的検討のため、乳児股関節脱臼を対象疾病として、適切な時期での疾病発見による医療費抑制効果、及び一時スクリーニングにおける超音波検査の費用対効果を試算した。NDBデータを用いて乳幼児健診事業の費用対効果を算出する手法を示すことができた。
【研究目標2】他の健康診査等との連携を視野に入れた乳幼児健診事業のあり方の検討
乳幼児健診と他の健診事業との連携について、生涯を通じた健康の保持を目的とする基本領域と、年齢や対象に応じたスクリーニング検査である個別疾患領域に整理するモデルを提言した。データヘルス計画等の医療費削減は、個別疾患領域に共通の目的である。PHR(personal health record)を軸とした個人の情報と関係機関との情報共有システムの構築は、基本領域ならびに個別疾患領域の目標達成に不可欠である。
【研究目標3】先行研究で開発した乳幼児健診の事業評価モデルの検証
 乳幼児健診時の子育て支援の必要性の判定を活用した支援の評価モデルは、実証的な検討の結果、乳幼児健診や母子保健事業の現場に適用可能性があることを示した。
結論
研究班において定めた疫学的検討の条件に基づいて、乳幼児健診における標準的な医師診察項目と対象疾患を作成した。他研究班や関連学会との協議を重ね、3歳児健診の頭囲測定と3~4か月児・1歳6か月児・3歳児健診の胸囲測定は測定の根拠に乏しいこと、1歳6か月児・3歳児健診の心雑音や呼吸音の聴診は疾病スクリーニングの根拠に乏しいこと、及び3歳児検尿は、現在の尿蛋白による方法では先天性腎尿路奇形のスクリーニングとして根拠に乏しいことを示した。
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NBD)の第三者提供(特別抽出)データを用いた乳幼児健診の医療経済学的検討のため、乳児股関節脱臼を対象疾病として、適切な時期での疾病発見による医療費抑制効果、及び一時スクリーニングにおける超音波検査の費用対効果を試算した。NDBデータを用いて乳幼児健診事業の費用対効果を算出する手法を示すことができた。
乳幼児健診と他の健診事業との連携については、生涯を通じた健康の保持を目的とする基本領域と、年齢や対象に応じたスクリーニング検査である個別疾患領域に整理するモデルを提言した。データヘルス計画等の医療費削減は、個別疾患領域に共通の目的である。PHRを軸とした個人の情報と関係機関との情報共有システムの構築は、基本領域ならびに個別疾患領域の目標達成に不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201907019B
報告書区分
総合
研究課題名
乳幼児健康診査に関する疫学的・医療経済学的検討に関する研究
課題番号
H29-健やか-指定-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院 総合研究部医学域社会医学講座)
  • 弓倉 整(弓倉医院)
  • 秋山 千枝子(西山 千枝子)(医療法人社団千実会)
  • 小倉 加恵子(国立成育医療研究センターこころの診療部 児童・思春期メンタルヘルス科)
  • 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 田中 太一郎(東邦大学 医学部)
  • 鈴木 孝太(愛知医科大学 医学部衛生学講座)
  • 佐々木 渓円(実践女子大学 生活科学部食生活科学科)
  • 朝田 芳信(鶴見大学 小児歯科学)
  • 船山 ひろみ(鶴見大学 小児歯科学)
  • 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 黒田 美保(名古屋学芸大学 ヒューマンケア学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児健康診査(以下、乳幼児健診)で対処すべき疾病や健康課題に対して、疫学的な視点も加味して標準的な健診項目を提示し、医療経済学的にその効果を分析する手法を検討すること、及び、乳幼児健診事業と他の健診事業との連携を視野に入れた提言を行うこと。
研究方法
以下の研究目標を定めて取り組んだ。
【研究目標1.1】乳幼児健診の標準的な健診項目の提示
1)標準的な医師診察項目の作成
2)乳幼児健診における既往症の把握
3)保健指導における食物アレルギー対応の意義
【研究目標1.2】スクリーニング対象疾患の医療経済学的検討
1)「健やか親子21」に対する医療経済学的視点からの考察
2)3~4か月児健診におけるDDHのスクリーニング
3)乳児股関節検診への超音波検査導入の医療経済学的検討
4)乳幼児健診事業の経費と人員の検討
【研究目標2】他の健康診査等との連携を視野に入れた乳幼児健診事業のあり方の検討
1)妊娠期のデータとの連結と活用
2)学校健診との連携
3)歯科保健分野における検討
4)栄養分野における検討
5)発達臨床心理領域からの検討
6)地域保健分野の視点から見た乳幼児健診のあり方に関する検討
7)乳児健康診査の保健師業務の質的分析
【研究目標3】先行研究で開発した乳幼児健診の事業評価モデルの検証

結果と考察
【研究目標1.1】乳幼児健診の標準的な健診項目の提示
乳幼児健診でスクリーニングすべき疾病を選定する条件(1. 乳幼児健診で発見する手段がある、2. 発見や治療に臨界期と介入効果がある、3. 発症頻度が出生1万人に1人以上、または、4. 保健指導上重要を満たすこと、以下、「疫学的検討の条件」とする。)を定めた。疫学的検討の条件に基づいて、乳幼児健診における標準的な医師診察項目と対象疾患を作成した。
【研究目標1.2】スクリーニング対象疾患の医療経済学的検討
レセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database、以下「NDB」とする。)を用いた乳幼児健診の医療経済学的検討のため、乳児股関節脱臼を対象疾病として、適切な時期での疾病発見による医療費抑制効果、及び一時スクリーニングにおける超音波検査の費用対効果を試算した。NDBデータを用いて乳幼児健診事業の費用対効果を算出する手法を示すことができた。
【研究目標2】他の健康診査等との連携を視野に入れた乳幼児健診事業のあり方の検討
乳幼児健診と他の健診事業との連携について、生涯を通じた健康の保持を目的とする基本領域と、年齢や対象に応じたスクリーニング検査である個別疾患領域に整理するモデルを提言した。データヘルス計画等の医療費削減は、個別疾患領域に共通の目的である。PHRを軸とした個人の情報と関係機関との情報共有システムの構築は、基本領域ならびに個別疾患領域の目標達成に不可欠である。
【研究目標3】先行研究で開発した乳幼児健診の事業評価モデルの検証
 乳幼児健診時の子育て支援の必要性の判定を活用した支援の評価モデルは、実証的な検討の結果、乳幼児健診や母子保健事業の現場に適用可能性があることを示した。
結論
研究班において定めた疫学的検討の条件に基づいて、乳幼児健診における標準的な医師診察項目と対象疾患を作成した。他研究班や日本小児医療保健協議会を介して関係学会とも協議を重ね、共通理解を形成した。
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NBD)の第三者提供(特別抽出)データを用いた乳幼児健診の医療経済学的検討のため、乳児股関節脱臼を対象疾病として、適切な時期での疾病発見による医療費抑制効果、及び一時スクリーニングにおける超音波検査の費用対効果を試算した。NDBデータを用いて乳幼児健診事業の費用対効果を算出する手法を示すことができた。
乳幼児健診と他の健診事業との連携については、生涯を通じた健康の保持を目的とする基本領域と、年齢や対象に応じたスクリーニング検査である個別疾患領域に整理するモデルを提言した。データヘルス計画等の医療費削減は、個別疾患領域に共通の目的である。PHRを軸とした個人の情報と関係機関との情報共有システムの構築は、基本領域ならびに個別疾患領域の目標達成に不可欠である。
3年間の研究成果に基づいて、「データヘルス時代の乳幼児健康診査事業企画ガイド ~生涯を通した健康診査システムにおける標準的な乳幼児健康診査に向けて~」を刊行し、全国市町村など乳幼児健診事業関係機関等に配布した。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201907019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
NDB(National Database)データを活用して乳幼児健康診査(以下、「乳幼児健診」とする。)事業を、我が国で初めて医療経済学的に分析し、3~4か月児健診における先天性股関節脱臼のスクリーニングの医療費削減効果を試算した。資産金額は見落とし例を防ぐための医師研修やスクリーニング後のフォローアップへの経費の根拠としての活用が可能であるとともに、今後、この手法を、例えば3歳児健診での視覚・聴覚検査の医療経済学的な妥当性に応用可能である。
臨床的観点からの成果
乳幼児健診でスクリーニングすべき疾病を選定する条件(1. 乳幼児健診で発見する手段がある、2. 発見や治療に臨界期と介入効果がある、3. 発症頻度が出生1万人に1人以上、または、4. 保健指導上重要を満たすこと、以下、「疫学的検討の条件」とする。)を定めた。疫学的検討の条件に基づいて、乳幼児健診における標準的な医師診察項目と対象疾患を作成した。他研究班や日本小児医療保健協議会を介して関係学会とも協議を重ね、共通理解を形成した。
ガイドライン等の開発
「データヘルス時代の乳幼児健康診査事業企画ガイド ~生涯を通した健康診査システムにおける標準的な乳幼児健康診査に向けて~」を刊行し、全国市町村など乳幼児健診事業関係機関等に配布した。今後、「経済財政運営と改革の基本方針 2018」(いわゆる骨太方針 2018)(平成 30 年6月 15 日閣議決定)で示された乳幼児期・学童期の健康情報の一元的活用などデータヘルス時代の母子保健情報の利活用に向けた市町村の乳幼児健診事業の企画に寄与することが期待される。
その他行政的観点からの成果
母子保健法に基づいて半世紀以上にわたって実施されてきた乳幼児健診事業であるが、これまで、健診プログラムとして達成すべき評価指標や、医療経済学的効果の科学的エビデンスは検討されてこなかった。本研究により乳幼児健診で対処すべき疾病や健康課題に対して、疫学的な視点も加味して標準的な健診項目を提示し、医療経済学的にその効果を分析する手法を示すことができた。先行研究の成果と合わせて乳幼児健診事業の標準化に寄与することができた。
その他のインパクト
第76回日本公衆衛生学会総会シンポジウム9「健やかな親子とは:健やか親子21(第2次)の重点課題戦略と「愛の鞭ゼロ作戦」(2017年)、第78回日本公衆衛生学会総会シンポジウム24「健やか親子21(第2次)中間評価と成育基本法」()で報告した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
27件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
石川みどり、阿部絹子、秋山有佳他
学童期の食の課題を見据えた 幼児の食支援・活動に関する事例検討
日本栄養士会雑誌 , 63 (5) , 41-47  (2020)
原著論文2
山崎嘉久
乳幼児健診で健やかな親子を支援する
小児科 , 66 (2) , 191-197  (2019)
原著論文3
山崎嘉久
「健やか親子21(第2次)」における乳幼児健診の意義
小児内科 , 50 (6) , 890-895  (2018)

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
2024-05-27

収支報告書

文献番号
201907019Z