医学的適応による生殖機能維持の支援と普及に向けた総合的研究

文献情報

文献番号
201907017A
報告書区分
総括
研究課題名
医学的適応による生殖機能維持の支援と普及に向けた総合的研究
課題番号
19DA1004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
大須賀 穣(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 美由紀(東京大学 医学部附属病院)
  • 藤尾 圭志(東京大学 医学部附属病院)
  • 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学医学部)
  • 高井 泰(埼玉医科大学医学部)
  • 古井 辰郎(岐阜大学大学院医学系研究科)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学医学部)
  • 山田 満稔(慶應義塾大学医学部)
  • 渡邊 知映(上智大学総合人間科学部)
  • 津川 浩一郎(聖マリアンナ医科大学医学部)
  • 西山 博之(筑波大学医学医療系)
  • 細井 創(京都府立医科大学医学系研究科)
  • 杉山 一彦(広島大学病院)
  • 前田 嘉信(岡山大学医歯薬総合研究科)
  • 川井 章(国立がん研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、①日本の現状に応じた医学的適応による妊孕性維持、不妊治療の制度の構築、②妊よう性温存医療登録システムの運用による支援体制の強化、③がん・生殖医療看護師養成の方法の確立、である。まず、日本の現状を踏まえてがん生殖医療を広め患者に届く体制を検証し実現すること、がん・生殖医療において実際に妊孕性温存治療を行う生殖医療専門医のニーズを抽出すること、を目的とする。またこの際に、がんに限らず医学的適応にて妊孕性温存を必要とする患者にこの治療を適切に行き渡らせる体制を構築するために、自己免疫疾患患者に対する妊孕性温存の実態の調査も併せて行う。次に、我々が所属する日本がん・生殖医療学会(JSFP)が設立した日本がん・生殖医療登録システムへの全例登録を通じて、原疾患治療施設と生殖医療施設の連携の実態や疾患、進行期、治療内容ごとの成績を明らかとする。また、JSFPと連携し看護師向けの教育セミナーを主催し継続することによって、最終的には看護師ががん患者に対するがん・生殖医療に関する支援を行う際の情報提供の手法を構築し、テキストの作成を行い、学会による認定制度を確立する。
研究方法
① がん生殖医療提供体制の構築
①-1.日本産科婦人科学会ART登録施設(生殖医療医)を対象とした調査
日本産科婦人科学会ART登録施設614施設を対象とし、アンケート調査を行う。内容としては、以下の3つを含む。(1)2017年本領域のガイドライン発刊後の生殖医療施設でのがん患者への妊孕性温存の実態調査(2)がん患者に対する妊孕性温存治療実施に際しての生殖治療医の意識調査(3)自己免疫疾患の患者の妊孕性温存の相談、診療の経験の調査。
①-2.日本リウマチ学会教育施設(自己免疫疾患治療医)を対象とした調査
日本リウマチ学会教育施設579施設の責任者と対象として、妊孕性を低下させる可能性のある治療を行った症例数や原疾患妊孕性温存の選択肢に関する説明の有無および対応の可否などに関するアンケート調査を実施した。
②妊よう性温存医療登録システムの運用による支援体制の強化
日本産科婦人科学会に登録された全国123の妊孕性温存実施施設において、これまで妊孕性温存のために受診した約2,000症例についての情報を、日本がん・生殖医療登録システム(https://database.j-sfp.org; JOFR)に入力していただき解析を行う。尚、精子に関しては登録施設以外での温存も行われているため、範囲を広げて調査をおこなう。
③がん・生殖医療看護師養成の方法の確立
がん・生殖医療に関するがんと生殖の各専門性を有する看護師の意識調査を行う。本領域のガイドライン刊行から2年経過した現状における、看護師の立場でのニーズや課題を抽出し、刊行前の状況と比較検討することで、教育セミナーの構築に生かす。また、JSFPがこれまで3回実施した看護師スキルアップセミナーの内容を検証し、参加者に対して施行したアンケート調査を分析する。
結果と考察
①がん生殖医療提供体制の構築 については、ガイドライン発刊後の実態を明らかにし、生殖医療医のニーズを抽出するためのアンケート調査を実施した。また、これに加えてがん患者より体制の整備が遅れている自己免疫疾患患者に対して、まず最初の一歩として妊孕性温存の実態を明らかにするために、生殖治療施設、自己免疫疾患治療施設の両サイドから、実態調査を実施した。生殖医療医への調査は現在回収中であり、順調に回収が進んでいる。この結果を解析し併せて先行のAMED研究の結果と比較することにより、ガイドライン発刊により我が国の実態がどのように変容したのか、また生殖医療医が何を求めているのかを明らかにすることができる。自己免疫疾患患者の実態に関しては、原疾患治療医サイドへの調査から、この領域の情報不足、生殖医療医と自己免疫疾患治療医との間の連携不足が明らかになった。この結果をさらに詳細に分析し、生殖医療医側への調査結果と併せて見ることにより、実態と課題が明らかになるだろう。
②妊よう性温存医療登録システムの運用による支援体制の強化 については、主要施設の倫理委員会承認まで終了した。今後JOFRをより使いやすいものへと改善しつつ、登録を推進していく。またここから得られるデータをまとめて解析へと進む。
③がん・生殖医療看護師養成の方法の確立 に関しては、計画していたスキルアップセミナーがCOVID19流行のため延期となったものの、e-learningについては予定通り作成を進めている。
結論
2019年度について、3本の柱それぞれについて、予定通り進捗している。次年度以降、①②に関して得られたデータの解析、成果の還元、③に関してはe-learningの完成、それを用いた看護師の知識向上に関する研究へと進めていく。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201907017Z