わが国の至適なチャイルド・デス・レビュー制度を確立するための研究

文献情報

文献番号
201907015A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国の至適なチャイルド・デス・レビュー制度を確立するための研究
課題番号
19DA1002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
沼口 敦(名古屋大学 医学部 附属病院 救急・内科系集中治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 小保内 俊雅(公益財団法人 東京都保健医療公社多摩北部医療センター 小児科)
  • 竹原 健二(国立成育医療研究センター 政策科学研究部)
  • 溝口 史剛(前橋赤十字病院 小児科)
  • 青木 康博(名古屋市立大学 大学院医学研究科 法医学)
  • 太田 邦雄(金沢大学 医薬保健研究域 医学教育研究センター)
  • 犬飼 岳史(山梨大学 大学院医学工学総合研究部 小児科)
  • 中右 弘一(旭川医科大学 大学病院 小児科)
  • 細矢 光亮(福島県立医科大学 医学部 小児科)
  • 森崎 菜穂(国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
  • 山岡 祐衣(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小林 博(小林内科)
  • 山中 龍宏(緑園こどもクリニック)
  • 長尾 能雅(名古屋大学 医学部 附属病院  )
  • 山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 子どもの死に際して死因や周辺事象の検証を行う必要性が成育基本法等に謳われた。そのためのチャイルド・デス・レビュー(CDR)制度は,防げる死から子どもを守ることを目的とする。既にCDRを実装する諸外国からは「各機関の死因同定の質の向上」「関係機関の連携・効率性の改善」「犯罪捜査・訴追状況の改善」「小児医療提供体制の改善」など様々な効果が報告されてきた。
 申請者は,日本小児科学会パイロット研究(2016)および,平成28-30年厚労科研「小児死亡事例に関する登録・検証システムの確立に向けた実現可能性の検証に関する研究(溝口史剛班長)」に携わり,CDRをわが国で運用するための方法論を提案した。この結果を受けて,厚生労働省は令和2年度より,行政事業化を見据えたモデル事業(以下,当事業)を開始するとした。当事業は,CDR制度への強い期待のもと立案されたが,これまでわが国に類似事業の経験がなく,綿密な検討と調整を必要とする。そこでCDRの社会実装にかかる唯一の研究である本研究が,当初の研究計画を修正し,同事業の円滑な実施を支援することとした。
 本研究は,参加自治体での制度設計と実施支援によって直接的に,またわが国に至適なCDRのありかたを探索することによって間接的に,当事業を支援することを目的とする。わが国に現存しない制度を設計し支援するとともに,先行する諸外国にも実装されない評価尺度を開発して有効な制度運用を目指す研究であり,独創的な内容である。
研究方法
 本研究を主要2課題から構成した。
 課題1は「地域における厚労省CDRモデル事業の実施体制と支援体制の開発」である。地方自治体が主体となる当事業が円滑かつ有効に実施されるためには,参加自治体それぞれが事業内容を把握し,体制を構築する必要がある。沼口,竹原が,複数の研究分担者・研究協力者(小児科医,法医病理医,地域自治体担当者)とともに実施した。東京都(小保内),山梨県(小保内,竹原,犬飼),石川県・富山県・福井県(太田ほか),群馬県(溝口),福島県(細矢),北海道(中右)など複数地域で,多職種間における共通認識,情報連携のあり方を探索し,法規上の課題を抽出した。
 課題2は,「有効なCDR制度と中央支援体制の探索」である。当事業を含むわが国のCDRの目指すべきものを定め,そこに到達するために主体自治体を支援する体制を探索する。沼口,溝口が複数の研究分担者・研究協力者(日本小児科学会子どもの死亡登録・検証委員会等)とともに実施した。沼口,溝口,森崎,山中が医療機関に限定するCDRデータを解析して,検証と提言の方法を提案した。小林(警察業務に協力する医師),長尾(医療事故調査制度),山崎(保健医師)が,既存制度との連携を模索した。また山岡は,米国で既稼働のCDRが社会に影響する過程を解析した。
結果と考察
 課題1に関して,当事業を遂行するにあたって当面必要な支援ツール(手引き,調査票,検証マニュアル,説明同意書等)を逐次開発した。地域自治体がCDRを主宰するに際して必要な共通認識,事前準備を具体的に列挙し,当事業参画地域への適用を開始している。以後,モデル事業の実施主体である自治体の支援を継続し,経験を蓄積し他自治体とも共有する仕組みの開発が望まれる。
 課題2に関して,理念的に目指されるCDR制度の備えるべき調査方法と手順,検証と評価の内容を模索し,提言手順も含め確立した。これらは最終的に,課題1の結果とともに支援ツール,特に調査票と検証マニュアルの策定に活かされた。この結果の解析をすすめ,自治体毎の取り組みとCDRの有効性を客観的に評価する精度評価尺度の開発を目指すことが望まれる。
 このように,CDRについて現在まで探索課題として遺残した「具体的な制度設計」と「社会への還元方法」の両面を,当事業の支援を通して探求する。どの地域でも実施可能なシステムの共通要件と地域によるバリエーションの許容範囲を明らかにし,相互的な情報共有や学術交流を旨とする会議体を組織して, CDRの安定的な全国展開に貢献することを目指す。
結論
 本研究は当事業の準備を多面的に支援しており,円滑な開始が期待される。今後,事業の運営支援を継続し,この経験を蓄積することで,わが国における至適なCDR制度の全体像を提案することが可能になる。本研究が厚生行政に大きく貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201907015Z