新たなソーシャルキャピタルを醸成しつつ母子の健康向上に寄与する情報発信手法の開発

文献情報

文献番号
201907013A
報告書区分
総括
研究課題名
新たなソーシャルキャピタルを醸成しつつ母子の健康向上に寄与する情報発信手法の開発
課題番号
H30-健やか-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
上田 豊(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 正(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学 )
  • 小林 栄仁(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学 )
  • 瀧内 剛(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学 )
  • 八木 麻未(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学 )
  • 池田 さやか(国際医療福祉大学三田病院 婦人科)
  • 平井 啓(大阪大学大学院人間科学研究科人間科学専攻)
  • 荒堀 仁美(大阪大学大学院医学系研究科小児科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現代の子育ては核家族化や対人関係の希薄化により、母親一人にその重責が集中し、これが母親の孤立を生み、うつ、子供の不健康・虐待につながっていると考えられる。母親に適切な情報を届け、母親を他者との関係の中に置けるような環境の構築が喫緊の課題である。
当研究では、オンラインメディアによる母子保健関連健康情報の発信が新たなソーシャルキャピタルの醸成につながり、母子保健の改善に寄与するかどうかを検証する。
研究方法
(1)子育て世代の母親における健康情報の収集・共有方法および自治体の医療健康情報・支援体制提供状況の調査(2018年度に実施済み)
(2)地域全体へのInstagram(当初のFacebookから変更)を利用した健康情報提供の有効性の評価
地域子育て支援窓口等の案内等をInstagram広告で広報し、その効果を広告クリック数・リンク先情報へのアクセス数および、地域子育て支援窓口相談率等(前年度までの参加率と比較)で検証する。また、Instagramでの広報においては、孤立感の軽減を図るべく、自己肯定感や自己効力感を向上させるようなメッセージも発しつつ、地域子育て支援窓口への相談を誘導する。参加者にはアンケート調査を行い、参加のきっかけなどを調査する。
(3)対象者個々へのオンラインメディアを利用した健康情報の提供の有効性の評価(新たなソーシャルキャピタルの醸成と健康行動に及ぼす影響)
 従来の紙媒体による広報(紙媒体群)と比較し、ソーシャルキャピタルにおいてオンラインで情報伝達の有効性が高まっていると考えられることから、SNS(Facebook、Twitter、LINE、Instagram等)のQRコード(URL)を記載した案内による広報(QRコード群)の効果を検証する。提供する母子保健関連医療健康情報の内容としては、前述の調査と同様に、地域子育て支援窓口等の案内とする予定である。効果は問い合わせ率等で検証する。
結果と考察
(1)子育て世代の母親における健康情報の収集・共有方法および自治体の医療健康情報・支援体制提供状況の調査(2018年度に実施、報告済み)
(2)地域全体へのFacebookを利用した健康情報提供の有効性の評価
 計画に基づいて、大阪府高槻市において、12月にInstagramを活用して地域子育て支援窓口の案内および孤独感を軽減する(自己効力感を高める)メッセージを発信したところ、フリークエンシー:10.06、リンククリック(ユニーク):771、リーチ:24736、インプレッション:248834の結果であった。その後に行われた1月~3月の4か月健診受診者に対してアンケートを行い、Instagram情報の認識度や孤独感・自己効力感等を、Instagramによる情報発信前の6月~8月の4か月健診受診者に行ったアンケートと比較検討する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、1月~3月の4か月健診の一部が延期となり、また担当保健所での当調査業務の一部の遂行が困難となっている。今後の状況により研究の遂行について再検討を行う予定である。
(3)対象者個々へのオンラインメディアを利用した健康情報の提供の有効性の評価(新たなソーシャルキャピタルの醸成と健康行動に及ぼす影響)
大阪府八尾市において、4か月健診受診者において、従来の環境(特別な案内なし)および、地域子育て支援窓口の案内や母親の孤独感を軽減する(自己効力感を高める)メッセージを記載した紙面(紙媒体)を送付した環境での地域子育て支援窓口等への相談状況や受診者の孤独感等についてアンケート調査などを行って把握する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、4か月健診の一部が延期となり、また担当保健所での当調査業務の一部について遂行が困難となっている。今後の状況により研究の遂行について再検討を行う予定である。
結論
八尾市のアンケート調査および全国を対象にしたインターネット調査から、子育てで孤独を感じることと有意に相関する独立因子として、経済的な不安感や子育てへの満足感や自信の有無といった母親の内面に関わる因子が有意なものとして検出され、さらに、母親自身の自己効力感と子育てでの孤独を感じるかどうかが有意に相関していることも明らかになっている(2019年度報告済み)。現在、地域子育て支援窓口の案内や母親の孤独感を軽減する(自己効力感を高める)メッセージをSNS(Instagram)やQRコードで発信することの有効性を評価する調査を行っている。ただし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一部作業が停止状態となってしまっており、今後の状況により研究の遂行について再検討を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201907013Z