社会的ハイリスク妊婦の把握と切れ目のない支援のための保健・医療連携システム構築に関する研究

文献情報

文献番号
201907009A
報告書区分
総括
研究課題名
社会的ハイリスク妊婦の把握と切れ目のない支援のための保健・医療連携システム構築に関する研究
課題番号
H30-健やか-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
光田 信明(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター )
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 武男(国立大学法人 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 国際健康推進医学分野)
  • 菅原 準一(国立大学法人 東北大学大学院 医学系研究科 母児医科学分野)
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
  • 中井 章人(日本医科大学 産婦人科)
  • 荻田 和秀(地方独立行政法人 りんくう総合医療センター)
  • 前田 和寿(独立行政法人 国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター)
  • 佐藤 昌司(大分県立病院)
  • 倉澤 健太郎(公立大学法人 横浜市立大学大学院 医学研究科 生殖成育病態医学  )
  • 佐藤 拓代(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター 母子保健情報センター)
  • 中村 友彦(地方独立行政法人長野県立病院機構 長野県立こども病院 )
  • 清野 仁美(兵庫医科大学 精神科神経科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会的ハイリスク妊娠と児童虐待の強い関連性(因果関係)を実証的に明らかにすることを目的とした。医療・保健・福祉が連携するためには「共通言語」が必要であるので、この研究によって全国の関連機関において適応可能な社会的ハイリスク妊娠の定義およびアセスメントシートの作成、医療・保健・福祉による切れ目のない連携支援体制の構築を目指した。
研究方法
社会的ハイリスク妊娠と子育て困難の関連性(因果関係)を都道府県単位で効果検証する前方視的研究により「大阪府アセスメントシート」を基に作成した「社会的ハイリスクアセスメントシート改訂版」の有用性の検証と乳幼児の育児支援・保護状況の予測につながる妊娠中のハイリスク項目を検討する。
社会的ハイリスク妊娠の妊娠中管理ならびに関係機関との連携構築の指針となる「社会的ハイリスク妊婦の支援と連携に関する手引書」を作成する。
以下の調査により子育て世代包括支援センターとの連携のあり方および周産期メンタルヘルスへルス問題に対する多職種での対応の標準化に向けた取り組みを検討する。
・全国の産科施設における社会的ハイリスク妊婦への支援体制に関する調査
・特定妊婦支援の状況(A市)
・妊娠届出時アセスメント結果と出生児の虐待状況における妊娠期から3歳6か月児健康診査までの追 跡調査(B市)
・本邦の母子保健事業の現状調査(2019)
・全国の周産期母子医療センターにおける支援体制に関する調査
・社会的ハイリスク妊産婦に対するメンタルヘルスケアと連携ネットワークに関する調査
結果と考察
1)社会的ハイリスク妊娠の定義
「社会的ハイリスク」の定義は、これまでなされていなかったこと、医療者のみで扱う用語ではなく、看護師、助産師、ソーシャルワーカー、心理師、行政担当者など幅広い職種が利用する用語であることから、その全体を平易な言葉で俯瞰することが望ましいと考える。社会的ハイリスク妊娠の定義として『経済的要因・家庭的要因などにより、子育て困難が予想される妊産婦』と提案した。

2)社会的ハイリスク妊娠の妊娠中管理ならびに関係機関との連携構築指針『社会的ハイリスク妊娠 手引書(仮称)』の作成
多職種による地域連携の標準化が急務であり、指針となる手引書の作成が進行中である。
関連用語・関連法律の解説、Q&A、事例から学ぶ関係機関の連携等で構成する。

3)社会的ハイリスク妊娠と子育て困難の関連性を効果検証する前方視的研究
「大阪府アセスメントシート」を基に作成した「社会的ハイリスクアセスメントシート改訂版」の有用性の検証と乳幼児の育児支援・保護状況の予測につながる妊娠中のハイリスク項目を検討する。
研究参加医療機関において症例の登録を開始・終了した。
4府県(大阪・宮城・香川・大分)における登録数は、合計7,390例(2020年3月末時点 暫定集計)。

4)子育て世代包括支援センターとの連携のあり方を検討
産科施設において社会的ハイリスク妊婦のスクリーニングが適切に行われておらず行政との切れ目ない多職種連携が十分でないこと、また特定妊婦の頻度は平均2.4%であり「アセスメントシート(妊娠期)」が特定妊婦のスクリーニングツールとして有用であるが行政によるアセスメントシートの評価 だけでは不十分であることが明らかになった。特定妊婦の情報共有状況や各事業の設置率より多機関・多職種間における縦・横方向の連携については、未だ切れ目の解消には至っておらず、産前・産後ともに地域での既存の多職種によるスムーズな連携構築が十分に行われていない。

5)周産期メンタルヘルス問題
社会的ハイリスク妊産婦に対するメンタルへルスケアは、精神科診療につなぐことが最終目標ではなく、妊婦・授乳婦と児のよりよい母子関係と社会的状況の構築を目指し、多職種による連携によってメンタルヘルスと社会的な問題に介入し、継続して支援することが重要であると考える。
結論
特定妊婦の情報共有状況や各事業の設置率より多機関・多職種間における縦・横方向の連携については、未だ切れ目の解消には至っていない。産前・産後ともに地域での既存の多職種によるスムーズな連携構築が十分に行われていないことが課題である。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201907009Z