文献情報
文献番号
201907008A
報告書区分
総括
研究課題名
「不妊に悩む方への特定治療支援事業」のあり方に関する医療政策的研究
課題番号
H30-健やか-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
前田 恵理(秋田大学大学院医学系研究科衛生学・公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
- 小林 廉毅(東京大学・大学院医学系研究科)
- 石原 理(埼玉医科大学・医学部)
- 左 勝則(チャア スンチ)(埼玉医科大学・医学部)
- 桑原 章(徳島大学・病院)
- 齊藤 和毅(東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科)
- 寺田 幸弘(秋田大学・大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、生殖補助医療(ART)に関する疫学研究や諸外国の公費負担制度に関する調査等の医療政策的研究を通じて、効果的かつ効率的な「不妊に悩む方への特定治療支援事業」(以下、特定不妊治療費助成事業)のあり方を検討する。
研究方法
今年度は経済的支援の観点から、所得と不妊治療に関する2つの疫学研究(小林・左)と韓国の訪問調査(石原)を行った。ART出産歴のある場合の助成条件を検討するため累積出産率の評価(桑原)と生殖医療が周産期医療に与える影響(齊藤)についても検討した。最後に、当該事業を活用した医療と登録制の質の向上に向けて、125の都道府県・指定都市・中核市(都道府県等)を対象に指定医療機関の認定審査状況に関する調査(寺田)を行った。
結果と考察
第15回出生動向基本調査(夫婦調査)の二次分析から、高所得層は不妊の検査・治療を受ける可能性が高いことが示され、埼玉県特定不妊治療費助成事業受給者の個票情報から累積妊娠率は、所得が低い群で高い群と比べ有意に低く、累積妊娠率の差の要因の一つに所得が低い群における高い申請中断率が考えられた。今後、不妊検査助成や一般不妊治療助成といった「入り口」からの経済的支援、所得に応じた特定不妊治療費助成事業助成額の増額、経済的支援策の周知等について検討するとともに、治療の障壁となる社会的要因についても調査が必要である。今年度の訪問調査先の韓国では、不妊治療の保険適用化を含む強力な経済的支援を実施し、同時に保険制度を活用した登録制の基盤を構築していたが、最近の不妊治療のデータは未公表であった。韓国の不妊治療の保険適用化は、健康保険審査評価院による厳しい保険適用基準と医療機関評価を伴っており、わが国で人工授精とARTを直ちに保険診療の枠組に入れることは課題も多いが、現行制度内での自己負担額の減額や、安定的な登録制の整備については別途検討が必要である。
ART出産歴のある場合の助成条件の検討として、ART累積出産率は有用な疫学指標であることが確認できたため、ART出産歴の有無別に解析を追加し、助成の条件について検討していく。また、日本産科婦人科学会の生殖データの解析から、子宮内反症の多くがホルモン補充周期における凍結融解胚移植で発症していること、全症例が経腟分娩で発症していることが明らかとなり、生殖医療を推進した場合に周産期医療全体にどのような影響を及ぼしうるのか、継続的な評価が必要である。
諸外国では医療機関の認定審査を医療と登録制の質の向上に活用しているが、特定不妊治療実施医療機関の認定審査において生殖医療専門医が同行する実地審査を行っているのは24都道府県等にとどまり、現行の認定審査の形骸化が懸念された。全国一律の審査基準に基づいた広域の審査体制(都道府県等間の連携や認定審査に関わる全国統一的な部署・管理運営機関の設立等)を構築し、登録制に関する品質管理も同時に実施すること等について議論していく必要がある。
ART出産歴のある場合の助成条件の検討として、ART累積出産率は有用な疫学指標であることが確認できたため、ART出産歴の有無別に解析を追加し、助成の条件について検討していく。また、日本産科婦人科学会の生殖データの解析から、子宮内反症の多くがホルモン補充周期における凍結融解胚移植で発症していること、全症例が経腟分娩で発症していることが明らかとなり、生殖医療を推進した場合に周産期医療全体にどのような影響を及ぼしうるのか、継続的な評価が必要である。
諸外国では医療機関の認定審査を医療と登録制の質の向上に活用しているが、特定不妊治療実施医療機関の認定審査において生殖医療専門医が同行する実地審査を行っているのは24都道府県等にとどまり、現行の認定審査の形骸化が懸念された。全国一律の審査基準に基づいた広域の審査体制(都道府県等間の連携や認定審査に関わる全国統一的な部署・管理運営機関の設立等)を構築し、登録制に関する品質管理も同時に実施すること等について議論していく必要がある。
結論
第15回出生動向基本調査と埼玉県特定不妊治療費助成事業の個票解析から所得と治療状況の関連が明らかになった。次年度はコンジョイント分析や日本産科婦人科学会生殖データとの連結解析も併せ、経済的要因と治療の関連について、より明確なデータを提示する。
ART出産歴のある場合の助成条件についても、ART累積出産率を用いた疫学研究を継続する。
昨年度の台湾調査、今年度の韓国調査と都道府県等の指定医療機関の認定審査状況の調査からは、経済的支援の拡大のみならず、当該事業を医療と登録の質の向上につなげていく必要性も示されている。
最終年度は、わが国で特に立ち遅れているSDGs 5.6 Reproductive health and rightsについて3.8 Universal Health Coverageを目指す観点を含め、研究を継続し、総合研究報告書で報告する予定である。
ART出産歴のある場合の助成条件についても、ART累積出産率を用いた疫学研究を継続する。
昨年度の台湾調査、今年度の韓国調査と都道府県等の指定医療機関の認定審査状況の調査からは、経済的支援の拡大のみならず、当該事業を医療と登録の質の向上につなげていく必要性も示されている。
最終年度は、わが国で特に立ち遅れているSDGs 5.6 Reproductive health and rightsについて3.8 Universal Health Coverageを目指す観点を含め、研究を継続し、総合研究報告書で報告する予定である。
公開日・更新日
公開日
2020-09-11
更新日
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