出生前診断実施時の遺伝カウンセリング体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201907002A
報告書区分
総括
研究課題名
出生前診断実施時の遺伝カウンセリング体制の構築に関する研究
課題番号
H29-健やか-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小西 郁生(京都大学大学院 医学研究科器官外科学婦人科学産科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 秀彦(お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科 ライフサイエンス専攻 遺伝カウンセリングコース)
  • 山田 重人(京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 山田 崇弘(京都大学 医学部附属病院 遺伝子診療部)
  • 西垣 昌和(国際医療福祉大学大学院 遺伝カウンセリング分野)
  • 関沢 明彦(昭和大学 医学部)
  • 浦野 真理(東京女子医科大学病院 遺伝子医療センターゲノム診療科)
  • 金井 誠(信州大学 大学院医学系研究科保健学専攻)
  • 斎藤 加代子(東京女子医科大学 臨床ゲノムセンター)
  • 佐村 修(東京慈恵会医科大学 産婦人科教室)
  • 澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
  • 高田 史男(北里大学 大学院医療系研究科臨床遺伝医学講座)
  • 中込 さと子(信州大学 医学部保健学科看護学専攻)
  • 吉橋 博史(東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科)
  • 久具 宏司(東京都立墨東病院 産婦人科)
  • 池田 真理子(谷口 真理子)(藤田医科大学病院 臨床遺伝科)
  • 左合 治彦(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
  • 佐々木 愛子(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
  • 佐々木 規子(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 鈴森 伸宏(名古屋市立大学 大学院医学研究科 産科婦人科)
  • 福島 明宗(岩手医科大学 医学部 臨床遺伝学科)
  • 福嶋 義光(信州大学 医学部)
  • 蒔田 芳男(旭川医科大学 医学部教育センター)
  • 松原 洋一(国立成育医療研究センター)
  • 江川 真希子(東京医科歯科大学 茨城県小児・周産期地域医療学講座)
  • 小林 朋子(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 ゲノム医学普及啓発寄附研究部門)
  • 浜之上 はるか(横浜市立大学 附属病院 遺伝子診療科)
  • 平原 史樹(国立病院機構横浜医療センター)
  • 増崎 英明(長崎大学)
  • 三浦 清徳(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 吉田 雅幸(東京医科歯科大学 生命倫理研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,385,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 西垣昌和 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻(平成29年4月1日~令和元年12月31日)→国際医療福祉大学大学院(令和2年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
 母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)が平成25年度より臨床研究として開始されたことにより、遺伝カウンセリングの重要性に焦点が当たっている。しかし、出生前診断に関する遺伝カウンセリングの全てに臨床遺伝の専門家が対応するには限界があり、さらに本邦の産婦人科医は減少傾向にあるため、有効な人材活用に向けた教育体制の構築が必要である。一方で、出生前診断の受け手側である妊婦自身が、自律的な判断が出来るようなリテラシーの醸成を含めて、社会体制を整備することも、出生前診断のシステム構築を効率よく行う上で極めて重要な課題である。そこで、本研究班では、妊婦への出生前診断体制を構築するための教育体制、一般に向けた出生前診断に関する啓発方法を検討することを目的とした。
研究方法
主任研究者が以下の研究課題の成果を総括する。(小西)
 本研究班では、分科会により研究を行い、各班の研究成果を相互に利用し、統合的な研究を行うため、3名の研究統括補佐をおき、各分科会の調整、統合を行う。(三宅、山田重人、山田崇弘)
 分科会は、以下の3つの分科会を設定する。
 第1分科会:出生前診断の前後において、妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルの作成(関沢、浦野、金井、斎藤、佐村、澤井、高田、中込、吉橋)
 第2分科会:遺伝カウンセリングに関する知識及び技術向上に関する医療従事者向けの研修プログラムの開発(久具、池田、左合、佐々木愛子、佐々木規子、鈴森、福島、福嶋、蒔田)
 第3分科会:一般の妊婦及びその家族に対する出生前診断に関する適切な普及および啓発方法の検討(松原、江川、小林、西垣、浜之上、平原、増﨑、三浦、吉田)
結果と考察
第1分科会では、臨床遺伝の専門家でない産科医療従事者が出生前遺伝学的検査に関して妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルの作成を行い、産科一次施設で実際に試用した後、評価を行いそれに基づき改定した。さらに、本マニュアルをテキストとして効果的な学習が行えるような講義シリーズを作成し、試行後に評価を行った。より標準化するために担当者を変えて改定し、講義シリーズとマニュアルをセットで使用可能な形に整えた。第2分科会では、臨床遺伝の専門家でない医療従事者が出生前診断において修得すべき目標を達成するために、出生前診断に関わる一次対応のロールプレイ事例集および評価表を複数回の評価を経て作成し、出生前診断に関する遺伝カウンセリング教育カリキュラムを作成した。第3分科会では、出生前検査経験者へのインタビュー調査および一般集団における出生前検査の認識調査をもとに、出生前検査出生前検査に関するリテラシー向上を目的とした介入をデザインした。対象を段階的に設定し、それぞれの段階で醸成すべきリテラシーについて発信するwebサイトを作成した。以上により、遺伝カウンセリング体制の構築に必要となるマニュアルや教材を作成し、実際に試用して評価を行なった。また、出生前診断の適切な普及および啓発に向け、出生前検査に関するリテラシーを対象ごとに設定した発信を行うWebサイトの作成に至った。
結論
 本研究では3つの分科会に分けて研究を行った。第1分科会では臨床遺伝の専門家でない産科医療従事者が出生前遺伝学的検査に関して妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルや講義シリーズを作成した。第2分科会では産婦人科の一般診療における出生前検査に対応するためのロールプレイ研修カリキュラムを作成した。第3分科会では出生前検査関連リテラシー向上と目的としたwebサイトを作成し、獲得すべきリテラシー計18項目を作成した。
 本報告書作成時点におけるCOVID-19の感染状況を考えると、これまでに行ってきた大規模な研修会の開催はしばらく望めない可能性も高い。しかし、出生前診断に関わる遺伝カウンセリング教育のニーズは現実的に存在しているため、オンラインでの研修会の実施なども検討する必要がある。実際に、オンラインによる遺伝カウンセリングが行われようとしており、今回の研究成果から発展させ、オンライン遺伝カウンセリングのコミュニケーション方法の特徴も加味した教育プログラム作りも必要となるであろう。その点では、第1分科会で作成した成果物のオンライン教材化と、第3分科会で作成したWebサイトなどのオンライン資源を有効に利用するカリキュラムの作成が課題となると考えられる。このような新しい研修システム実装とともに出生前診断に関わる遺伝カウンセリング体制を確立し、出生前遺伝学的検査ネットワークの構築につなげたい。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201907002B
報告書区分
総合
研究課題名
出生前診断実施時の遺伝カウンセリング体制の構築に関する研究
課題番号
H29-健やか-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小西 郁生(京都大学大学院 医学研究科器官外科学婦人科学産科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 秀彦(お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科 ライフサイエンス専攻 遺伝カウンセリングコース)
  • 山田 重人(京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)
  • 山田 崇弘(京都大学 医学部附属病院 遺伝子診療部)
  • 西垣 昌和(国際医療福祉大学大学院 遺伝カウンセリング分野)
  • 関沢 明彦(昭和大学 医学部)
  • 浦野 真理(東京女子医科大学病院 遺伝子医療センターゲノム診療科)
  • 金井 誠(信州大学 大学院医学系研究科保健学専攻)
  • 斎藤 加代子(東京女子医科大学 臨床ゲノムセンター)
  • 佐村 修(東京慈恵会医科大学 産婦人科教室)
  • 澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
  • 高田 史男(北里大学 大学院医療系研究科臨床遺伝医学講座)
  • 中込 さと子(信州大学 医学部保健学科看護学専攻)
  • 吉橋 博史(東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科)
  • 久具 宏司(東京都立墨東病院 産婦人科)
  • 池田 真理子(谷口 真理子)(藤田医科大学病院 臨床遺伝科)
  • 左合 治彦(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
  • 佐々木 愛子(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
  • 佐々木 規子(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 鈴森 伸宏(名古屋市立大学 大学院医学研究科 産科婦人科)
  • 福島 明宗(岩手医科大学 医学部 臨床遺伝学科)
  • 福嶋 義光(信州大学 医学部)
  • 蒔田 芳男(旭川医科大学 医学部教育センター)
  • 松原 洋一(国立成育医療研究センター)
  • 江川 真希子(東京医科歯科大学 茨城県小児・周産期地域医療学講座)
  • 小林 朋子(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 ゲノム医学普及啓発寄附研究部門)
  • 浜之上 はるか(横浜市立大学 附属病院 遺伝子診療科)
  • 増崎 英明(長崎大学)
  • 三浦 清徳(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 吉田 雅幸(東京医科歯科大学 生命倫理研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関変更 山田崇弘 北海道大学大学院医学研究院・総合女性医療システム学分野 平成29年4月1日から5月31日 ↓ 京都大学医学部附属病院・遺伝子診療部 平成29年6月1日以降 浦野 真理 東京女子医科大学附属遺伝子医療センター 平成30年4月1日から平成30年4月30日 ↓ 東京女子科大学病院遺伝子医療センターゲノム診療科 平成30年5月1日以降 斎藤 加代子 東京女子医科大学附属遺伝子医療センター 平成30年4月1日から平成30年4月30日 ↓ 東京女子医科大学臨床ゲノムセンター 平成30年5月1日以降 池田 真理子 藤田保健衛生大学 平成30年4月1日から平成30年10月9日 ↓ 藤田医科大学 平成30年10月10日以降 中込 さと子 山梨大学大学院総合研究部 平成30年4月1日から平成30年12月31日 ↓ 信州大学医学部 平成31年1月1日以降 西垣昌和 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 平成29年4月1日から令和元年12月31日 ↓ 国際医療福祉大学大学院 令和2年1月1日以降

研究報告書(概要版)

研究目的
 母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)が平成25年度より臨床研究として開始されたことにより、遺伝カウンセリングの重要性に焦点が当たっている。しかし、出生前診断に関する遺伝カウンセリングの全てに臨床遺伝の専門家が対応するには限界があり、さらに本邦の産婦人科医は減少傾向にあるため、有効な人材活用に向けた教育体制の構築が必要である。一方で、出生前診断の受け手側である妊婦自身が、自律的な判断が出来るようなリテラシーの醸成を含めて、社会体制を整備することも、出生前診断のシステム構築を効率よく行う上で極めて重要な課題である。そこで、本研究班では、妊婦への出生前診断体制を構築するための教育体制、一般に向けた出生前診断に関する啓発方法を検討することを目的とした。
研究方法
主任研究者が以下の研究課題の成果を総括する。本研究班では、分科会により研究を行い、各班の研究成果を相互に利用し、統合的な研究を行うため、3名の研究統括補佐をおき、各分科会の調整、統合を行った。分科会は、以下の3つの分科会を設定した。
 第1分科会:出生前診断の前後において、妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルの作成
 第2分科会:遺伝カウンセリングに関する知識及び技術向上に関する医療従事者向けの研修プログラムの開発
 第3分科会:一般の妊婦及びその家族に対する出生前診断に関する適切な普及および啓発方法の検討
結果と考察
出生前遺伝学的検査(出生前検査)のニーズの高まりに対して産科一次施設における適切な一次対応と、それに連携した遺伝カウンセリングとしての二次対応が重要である。しかし、全ての対応を一次施設で行うには様々な課題があり、高次施設における遺伝カウンセリングと連携を含めた体制構築が重要となる。そこで、本研究班の目的を研究達成するため、分科会ごとに分かれて研究を行った。第1分科会では、臨床遺伝の専門家でない産科医療従事者が出生前遺伝学的検査に関して妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルの作成を行った。さらに、本マニュアルをテキストとして効果的な学習が行えるような講義シリーズのパワーポイントを作成した。マニュアルとセットで使用可能な講義スライドハンドアウトを合わせて作成した。マニュアルや講義シリーズは複数回の評価・改定を行い、完成度を高めた。第2分科会では、臨床遺伝の専門家でない医療従事者が主として一次施設で出生前遺伝学的検査(出生前検査)について対応するにあたり、必要とされる知識や技術を習得すべき目標を定めた。これらの目標を達成するためのロールプレイ事例集および評価表を複数回の評価を経て作成し、出生前診断に関する遺伝カウンセリング教育カリキュラムを作成した。第3分科会では、出生前検査経験者へのインタビュー調査および一般集団における出生前検査の認識調査をもとに、出生前検査出生前検査に関するリテラシー向上を目的とした啓発媒体を作成した。対象を段階的に設定し、それぞれの段階で醸成すべきリテラシーについて発信するwebサイトを作成した。以上により、遺伝カウンセリング体制の構築に必要となるマニュアルや教材を作成し、実際に試用して評価を行なった。また、出生前診断の適切な普及および啓発に向け、出生前検査に関するリテラシーを対象ごとに設定した発信を行うWebサイトの作成に至った。
結論
 本研究では3つの分科会に分けて研究を行った。第1分科会では臨床遺伝の専門家でない産科医療従事者が出生前遺伝学的検査に関して妊婦に提供すべき情報やその伝え方等に関するマニュアルや講義シリーズ、第2分科会では産婦人科の一般診療における出生前検査に対応するためのロールプレイ研修カリキュラム、第3分科会では出生前検査関連リテラシー向上と目的としたwebサイトという成果物を得ることができた。
 本報告書作成時点におけるCOVID-19の感染状況を考えると、これまでに行ってきた大規模な研修会の開催はしばらく望めない可能性も高い。しかし、出生前診断に関わる遺伝カウンセリング教育のニーズは現実的に存在しているため、オンラインでの研修会の実施なども検討する必要がある。この背景として、既にオンラインによる遺伝カウンセリングが行われようとしており、今回の研究成果から発展させ、オンライン遺伝カウンセリングのコミュニケーション方法の特徴も加味したプログラム作りも必要となるだろう。その点では、第1分科会で作成した成果物のオンライン教材化、第3分科会で作成したWebサイトやそれに類似したオンライン資源を有効に利用するカリキュラムの作成が課題となると考えられる。そのような新しい研修システム実装とともに出生前診断に関わる遺伝カウンセリング体制を確立し、出生前遺伝学的検査ネットワークの構築につなげたい。

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201907002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班の成果である各種教材が、日本産科婦人科遺伝診療学会の認定制度に利用されている。
臨床的観点からの成果
本研究班の成果である各種教材が、日本産科婦人科遺伝診療学会の認定制度に利用されている。この認定制度が、新しいNIPTの施設認定の項目に採用されつつある。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201907002Z