文献情報
文献番号
201906035A
報告書区分
総括
研究課題名
東京地下鉄サリン事件におけるカルテ等の救護・医療対応記録のアーカイブ化のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19CA2036
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
奥村 徹(公益財団法人 日本中毒情報センター)
研究分担者(所属機関)
- 前川 和彦(社会医療法人東明会 原田病院)
- 石松 伸一(聖路加国際病院 )
- 那須 民江(中島 民江)(中部大学)
- 山末 英典(浜松医科大学)
- 吉岡 敏治(森ノ宮医療大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
東京地下鉄サリン事件の風化は確実に進んでいる。そのため被害者の診療録が廃棄されるなど貴重な記録が散逸しつつある。本研究では、東京地下鉄サリン事件における医療・救護情報のアーカイブ化及びその活用に関する基本構想を研究した。
研究方法
救護・医療情報の存在のリストアップ、情報収集の可能性に関する予備調査(医療機関アンケート調査)、アーカイブ化に関する諸課題の検討、アーカイブの活用方法の検討と提言の項目に沿って議論、調査を行った。兵庫県人と防災未来センターの震災アーカイブ、熊本地震アーカイブ、忠海病院における毒ガス障害者のカルテ保存の状況も現地調査した。
結果と考察
医療機関へのアンケート調査では回答率答率は35.9%(14/39)と低く、対象39医療機関のうち、大学付属病院は12病院含まれていたが、うち回答は皆無と関心の低さが目立ち、医療機関では確実に資料の散逸化、風化が見られ始めていた。アーカイブの対象となるものは広く捉え単に診療録(カルテ)に留まることなく、写真、動画、出版物、個人の手記、聞き取り、学会発表のデータ、未発表データ、松本サリン事件に関わる情報、本邦の化学兵器の歴史、など今後散逸しかねない資料を幅広く収集することとした。法的には、存命被害者の数が膨大であること、事件から既に二十余年もの長年月を経ていることからすると、本人の承諾を得るという手段には限界があり、匿名化の手段を積極的に検討せざるを得ない。診療録をそのまま、pdf保存するか、個人情報を消去した上でpdf化するか、必要項目を定めて転記しデジタル化を図るか、様々なアーカイブ化の方法が考えられたが、将来の活用の道を残すため、可能な限り、一次資料としての生データをなるだけ網羅しすべきであると思われた。阪神淡路大震災の知見よりoral history を有効に活用すべきことが示唆された。
結論
今後資料の収集にあたっては、医療機関のみならず、地下鉄事業者(帝都高速度交通営団(現東京メトロ))、地区医師会、消防(搬送記録)、警察(被害届)、検察、裁判所(裁判記録)被害者本人、家族、被害者団体、被害者支援団体、防衛省、科警研、メディア等(NHK、新聞各社、通信社、テレビ局、ラジオ局等)、著述家、研究者、研究団体(後の健康調査)、出版社、地方公共団体等様々な関係機関の情報に当たり、適宜キーパーソンのoral historyも聴取すべきである。法的問題の解決方法は、アーカイブ化の趣旨を達成しつつも、同意していない者の利益を害しないような匿名化の要件をいかに設定するかという点にある。
公開日・更新日
公開日
2020-10-08
更新日
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