文献情報
文献番号
201906032A
報告書区分
総括
研究課題名
世帯構造の変化が社会保障に与える影響の分析研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
19CA2033
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
- 阪東美智子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 増井英紀(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 酒井正(法政大学 経済学部)
- 西村幸満(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部 )
- 竹沢純子(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
- 佐藤格(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
- 藤間公太(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,683,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、2040年にかけて想定される単身高齢世帯の増加などの日本における今後の世帯構造の変化が、必要な専門職の人的資源、社会保障給付費のみならず、社会保障制度そのもののあり方に与える影響について明らかにすることである。
研究方法
2040年の国民生活について展望するために、各省庁が公表している将来予測等にかかる資料を収集し、整理した。倫理審査を受審の上、高齢者を中心とした公的サービスの枠外の生活支援を実施する事業者の担当者に対してインタビュー調査を実施した。また、制度外生活支援についてあるサービス提供者に事例調査を実施した。国民生活基礎調査、生活と支え合いに関する調査の二次利用の申出、全国消費実態調査のオンサイト利用の申出、一橋大学世代間問題研究機構が管理する「くらしと仕事に関する調査:2011年インターネット調査」の利用申請をそれぞれ行って分析を行った。
結果と考察
「生活と支え合いに関する調査」を用いた分析により、社会関係の希薄化において加齢効果は顕著であるが,就職氷河期世代特有の効果は確認できなかった。高齢者の社会関係の希薄化は,会話頻度の多寡ではなく,会話人数の減少と関係がある。単身者世帯,ひとり親世帯,自営業には,家族との安定した社会関係が希薄であり,これらが社会問題化している社会的孤立へと繋がる可能性が高いと考えられた。
「年金定期便」のデータを収集している「暮らしと仕事に関する調査」を用いて、① 初職の雇用形態を調整したうえでも、就職氷河期世代は(それ以前の世代に比べ)年金未納期間の割合が高くなり、② 同世代は、30歳時点で(未婚で)親と同居している確率も高いが、(同世代では)初職が正規雇用であると親と同居している確率は低くなる結果が得られた。
「生活と支え合いに関する調査」を用いた、単身高齢世帯の暮らし向きと頼れる人の有無の関連、そのジェンダー差を順序ロジット分析は、「頼れる人の有無」や「頼れる人は誰か」は確定的な関連を示さなかった一方、所得については一貫して暮らし向きに対して正の関連を持っていた。また、ジェンダー差が存在することを示す結果は得られなかった。
「平成26年度全国消費実態調査」を用いた生活支援等サービス(配食、家事代行料、タクシー代)及びそれらと代替的な関連支出(調理食品、調理食品・外食以外の食料、自動車等関係費)についての分析により、要介護状態の高齢者が含まれる世帯の消費支出傾向には、食事の外部化支出や移動手段に対する支出を始めとして、それまでの生活における性別役割分業の存在に起因する支出傾向の性差が存在する可能性が示された。これにより、世帯構造の変化は要介護高齢者の外部サービス利用について変化をもたらすと考えられた。
国民生活基礎調査を用いたマイクロシミュレーションによる将来推計はすべての世帯、単身高齢男性、単身高齢女性の全ての世帯で所得が増加する結果を示した。他方で、相対的に低所得である層の割合は増大することとなり、引き続き所得再分配政策の重要性が示唆された。介護需要については、単身世帯は夫婦のみ世帯やその他世帯と比較し、「介護サービス利用無し」の割合が小さいため、シミュレーション結果である単身世帯の増加が即公的介護保険の介護サービスやその他の介護サービスの利用増加につながる可能性が示唆された。
生活支援団体代表者等へのインタビュー調査の対象は、公的制度の(介護・障害)サービス提供を担うことを通じて人材・資金を確保するケース、対象者から会費の納付を受けるケースに大別される。いずれでも制度外支援の資金確保の困難に直面し、結果として人材確保の困難に直面するケースが見られた。また、制度外生活支援サービスを提供する際に規制により影響を受けていた事例や、サービス提供にかかる団体支援についての情報が適切に共有されていないと考えられる事例も見られた。高齢化により業務負担がさらに重くなると考えられる医療専門職との適切な連携も解決すべき課題として未だ重要であると考えられた。
さらに「相談」についてのサービス提供者に対する事例調査は、相談時間は中央値で一時間程度であるが、ばらつきが非常に大きいこと、他へ連携すべき緊急性のある相談は少ないものの、逆に継続した対応が必要となるケースが大半であることを示した。このため、制度外相談事業であっても事業の継続性を担保するためのシステム的な措置が必要であると考えられた。
「年金定期便」のデータを収集している「暮らしと仕事に関する調査」を用いて、① 初職の雇用形態を調整したうえでも、就職氷河期世代は(それ以前の世代に比べ)年金未納期間の割合が高くなり、② 同世代は、30歳時点で(未婚で)親と同居している確率も高いが、(同世代では)初職が正規雇用であると親と同居している確率は低くなる結果が得られた。
「生活と支え合いに関する調査」を用いた、単身高齢世帯の暮らし向きと頼れる人の有無の関連、そのジェンダー差を順序ロジット分析は、「頼れる人の有無」や「頼れる人は誰か」は確定的な関連を示さなかった一方、所得については一貫して暮らし向きに対して正の関連を持っていた。また、ジェンダー差が存在することを示す結果は得られなかった。
「平成26年度全国消費実態調査」を用いた生活支援等サービス(配食、家事代行料、タクシー代)及びそれらと代替的な関連支出(調理食品、調理食品・外食以外の食料、自動車等関係費)についての分析により、要介護状態の高齢者が含まれる世帯の消費支出傾向には、食事の外部化支出や移動手段に対する支出を始めとして、それまでの生活における性別役割分業の存在に起因する支出傾向の性差が存在する可能性が示された。これにより、世帯構造の変化は要介護高齢者の外部サービス利用について変化をもたらすと考えられた。
国民生活基礎調査を用いたマイクロシミュレーションによる将来推計はすべての世帯、単身高齢男性、単身高齢女性の全ての世帯で所得が増加する結果を示した。他方で、相対的に低所得である層の割合は増大することとなり、引き続き所得再分配政策の重要性が示唆された。介護需要については、単身世帯は夫婦のみ世帯やその他世帯と比較し、「介護サービス利用無し」の割合が小さいため、シミュレーション結果である単身世帯の増加が即公的介護保険の介護サービスやその他の介護サービスの利用増加につながる可能性が示唆された。
生活支援団体代表者等へのインタビュー調査の対象は、公的制度の(介護・障害)サービス提供を担うことを通じて人材・資金を確保するケース、対象者から会費の納付を受けるケースに大別される。いずれでも制度外支援の資金確保の困難に直面し、結果として人材確保の困難に直面するケースが見られた。また、制度外生活支援サービスを提供する際に規制により影響を受けていた事例や、サービス提供にかかる団体支援についての情報が適切に共有されていないと考えられる事例も見られた。高齢化により業務負担がさらに重くなると考えられる医療専門職との適切な連携も解決すべき課題として未だ重要であると考えられた。
さらに「相談」についてのサービス提供者に対する事例調査は、相談時間は中央値で一時間程度であるが、ばらつきが非常に大きいこと、他へ連携すべき緊急性のある相談は少ないものの、逆に継続した対応が必要となるケースが大半であることを示した。このため、制度外相談事業であっても事業の継続性を担保するためのシステム的な措置が必要であると考えられた。
結論
世帯構造の変化を踏まえた形での給付費の推計を実施、男女差を考慮した制度給付外の支出の精密な推計の実施、それらを踏まえた施策の実施が必要である。また、制度外支援の人材確保には提供者への、サービス提供体制を踏まえた適切な資金供給が必要である。これらを下支えする所得再分配施策を重視した施策を引き続き実施していく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2020-10-15
更新日
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