保健サービスによる寝たきり予防活動に関する調査研究

文献情報

文献番号
199800724A
報告書区分
総括
研究課題名
保健サービスによる寝たきり予防活動に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
池上 直己(慶応義塾大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会における保健婦活動として、寝たきり予防活動が重要な役割を占めることになる。ところが、このような寝たきり予防活動の対象となる者が地域にどのくらい存在するのかは必ずしも明らかではなく、また、どのようなサービスを提供することが適切であるかについても明確ではない。そこで、本調査研究では、①地域において寝たきり予防活動の対象となる住民がどの程度存在するか、②そのような対象者に対してどのようなサービスを提供することが適切なのか、をそれぞれ把握し、③実際の保健予防サービスを寝たきり予防活動の対象者に対して試行的に提供し、どの程度効果が発揮できるかを調査分析する。さらに、④調査地域を拡大して普及方法を検討するとともに、サービスの適切性の評価方法を検討することを目的とする。
研究方法
①ある地域の全高齢者の中から無作為に抽出した高齢者に対して、アンケート調査を行い、回答結果から全く健康で問題がないと思われる者とすでに「寝たきり」と思われる者とを除いた者を、当面「寝たきり予防活動の対象者」と規定する。②「寝たきり予防活動の対象者」を介入群と対照群に分け、介入群に対して概ね3ヵ月ごとに保健婦が訪問する。その際、MDS-HCにより包括的にアセスメントを行い、CAPsによって焦点を絞って会話を進め、予防的ニーズを把握する。また、必要に応じてサービスを調整する。訪問の参考になるように「寝たきり予防訪問マニュアル」を作成し、現場の意見を踏まえて修正を加えていく。③介入群と対照群に1年ごとにアンケート調査を行い、健康状況や介護状況、受診状況、サービス利用状況を把握し、変化に差があるかどうかを検定する。④介入群の追跡結果からサービス調整の成果を検討するとともに、実施地域を拡大する。
結果と考察
本調査に先立ち、調査に適切に回答できるかを検討するため、10人の高齢者に対してプレテストを行った。テストは、1週間をおいて2回行った。その結果、1人を除きすべての項目に回答できていること、2回とも「寝たきり予防活動対象」と設定される者が同一であることが確認された。
A町(人口約2万5千人)の高齢者992人(全高齢者の約16%)、B市(人口約180万人)の高齢者3,500人(同約1.6%)をそれぞれ無作為に抽出し、「寝たきり予防アンケート調査」を実施した。回収はそれぞれ882人(ただし、抽出時にすでに要介護状態にあり保健婦が訪問していた95人を除いて郵送したため、回収率は92.4%)、2,663人(回収率76.1%)であった。
A町とB市を比較すると、入院・入所者数の割合に差があり、A町では回答数の1.3%が、B市では4.4%が入院・入所中であった。これは、B市に比較的病院・施設が整っていることによるものと考えられる。また、保健婦の相対数にも差があり、A町では高齢者6,078人に対して担当保健婦6人(高齢者千人当りに1人の保健婦)、B市では高齢者215,234人に対して担当保健婦44人(同0.02人)となっていることも背景と考えられる。 
アンケートの結果から寝たきり予防対象者の条件として①全く健康で生活に不便を感じていないと思われる者、②すでに寝たきり等の要介護状態にあると思われる者、③すでに訪問看護サービスを受けている者(サービスのコーディネートを受けている可能性があるため)を除外した。その結果、A町では186人、B市では433人が対象となり、それぞれ有効回答の20.3%、16.3%が訪問対象になると推計された。なお、これを割り返すと、A町には在宅高齢者の18.8%、B市には同じく12.4%の寝たきり予防活動の対象者が存在することが推計される。
対照群と健常群のそれぞれ13人に対して、看護職が訪問の上、アンケート結果と一致しているかをみた。その結果、訪問はアンケートの回答から2ヵ月以上を経たため、項目ごとの選択肢にはやや違いがみられるものもあったが、対照群は全て寝たきり予防活動の対象であること、健常群は全て対象外(健常)であることが確認された。
以上の結果から、本調査で使用した「寝たきり予防に関するアンケート調査」の項目は郵送調査でも信頼性があることがわかった。
寝たきり予防活動の対象者を、それぞれ同じような属性になるように介入群と対照群に分け、介入群に対して保健婦が電話で予約の上、訪問活動を開始した。
今後、概ね3ヵ月ごとに訪問を継続し、その都度、アセスメントと訪問計画を作成する。
結論
入院・入所者数に差はあったものの、保健婦活動として、今後重要になると考えられる寝たきり予防活動の対象者が有効回答の在宅高齢者の中で16%~20%程度存在することが把握された。今後、継続した訪問活動によりこのような対象者の状態像及び予防ニーズを明確にすることができ、対応策(提供すべきサービス)の検討が可能となる。また、予防的に関わるべき対象者を把握し、効果的な活動方法を明らかにすることによって、保健所及び市町村保健婦の新たな役割を提示することができる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)