輸出先国のリスク管理に対応した残留農薬データ等の補完のための研究

文献情報

文献番号
201906030A
報告書区分
総括
研究課題名
輸出先国のリスク管理に対応した残留農薬データ等の補完のための研究
課題番号
19CA2031
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 友紀子(農林水産省)
  • 加藤 拓(東京農業大学応用生物科学部 農芸化学科)
  • 荒川 史博(日本ハム株式会社中央研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,880,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際標準の農薬最大残留基準値(MRL)の国内設定や、農産品等輸出先国へのインポートトレランス申請に必須であるが、これまでのわが国においては要求等がされていなかった事項について検討し、現在の政府方針である農産品等の輸出促進に貢献することを目的とする。具体的には、(1)わが国の消費においてまた輸出産品として重要であるがこれまでに検討されていない食品の加工係数の推定、(2)国際的なMRL設定とそれへの適合検証に整合させる上で要素となる分析部位の違いによる残留濃度への影響の評価、(3)効率的なリスク管理の観点からも世界で広く活用されている農薬残留物分析法(QuEChERS法)の厳密な性能評価、(4)わが国の作物残留試験データの不足を補い国際的な要求水準を満たす信頼できるMRLを設定するための国際的に公表されたデータ(グローバルデータセット)の活用について検討する。
研究方法
分析法の厳密な性能評価や、加工における農薬残留物の挙動解析(加工試験)に必要な、農薬等を投与した結果としての残留物を含む試料(インカード試料)を作成するための作物栽培方法として、ノイバイエル法と野外圃場栽培の両方を検討した。短期栽培が可能な葉菜類のうち、コマツナ・チンゲンサイ・ホウレンソウをノイバイエル法により、ハクサイ、レタス、カブを野外圃場において栽培した。投与する農薬には、脂溶性の違い等から選択したアゾキシストロビン、ピリダリル、ベンチオピラド、メタフルミゾンを用いた。QuEChERS法の性能を、作成したインカード試料の計画的な分析を通じて厳密に評価することを試みた。加工係数の推定にも必要な加工試験の実施を、わが国からの輸出可能性等を踏まえ着目したこめを対象に検討した。政府職員を対象にインポートトレランス申請に関する演習を伴う研修を実施した。「残留物の定義」の決定に関するOECD ガイドラインの改定作業に参画した。その他、国内流通する農産品における残留物濃度の海外MRLへの適合度の検証及び、FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)が公開している作物残留試験データのデータベース化の検討にも取組んだ。
結果と考察
使用基準を踏まえた農薬投与を含むノイバイエル法により、予想される最大値に近い残留濃度を持ったインカード試料を作成することが可能であった。また、ハクサイ等の大型葉菜類についても、野外圃場において生育状態をそろえて栽培することが可能であった。ただし、残留を意図した農薬以外の農薬を使用せざるを得ない場合への考慮が課題として特定された。
 本研究ではまず基本となるQuEChERS法を特定し規定した。そのうえでQuEChERS法、わが国の公示一斉分析法並びに個別分析法を用いてインカード試料を計画的に分析した。その結果、調製時あるいは試料保存時の安定性に疑義が呈されたメタフルミゾン代謝物Dを除き、QuEChERS法によっても規制のための分析法に要求される性能を達成可能であることが示唆された。ただし、検討した作物と農薬との組合せに限定される。  
 こめを対象とした加工試験の実施に向けて、商業的な取組を模したこめ原油の製造方法がパイロットプラントを用いて検討された。検討において、こめ原油の収量が低いという課題が明らかになったが、加工工程の見直しにより改善する可能性が示唆された。
 わが国から輸出先国へのインポートトレランス設定の申請を、より科学的かつ国際的に整合した方法で実施できるようにするために、必要な知識やデータ、報告書に記述すべきことなどについて整理し資料を作成し、担当政府職員を対象として演習を伴う7日間の研修を実施した。OECDによる、残留物の定義の決定に関するガイドラインの改定に協力した。
 その他として、国内流通するイチゴにおける各種農薬残留物濃度のいくつかは、諸開国政府が設定するMRLの値を超過する可能性があることが示唆された。また、グローバルデータセットとしての活用を検討するために、JMPR評価書によって公開されているデータを主要情報の欠損を防いで整理するための様式を開発し、データベース化を試行した。
結論
本研究により、作物残留試験によらないインカード試料の入手可能性が示された。今後、より多くの作物と農薬との組合せについてインカード試料の作成方法を検討する。また、インカード試料の供給と連動させて分析法の厳密な性能評価や加工試験を実施することにより、国際標準となるMRL設定やインポートトレランス申請に必要だが現在は取得されていないデータを新たに取得しデータギャップを埋める。その他にも、グローバルデータセットの収集解析よる効率的かつ効果的なMRL設定の方法論を検討する。最終的に、得られた研究成果の厚生労働省への提供を通じて、国産農産品等の輸出促進に貢献する。

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
2021-10-06

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
2021-10-06

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201906030C

収支報告書

文献番号
201906030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,770,000円
(2)補助金確定額
13,770,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,557,844円
人件費・謝金 2,037,709円
旅費 583,784円
その他 2,700,663円
間接経費 1,890,000円
合計 13,770,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-08
更新日
-