循環器病の診療情報収集・活用のための登録様式等の詳細に係る研究

文献情報

文献番号
201906026A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器病の診療情報収集・活用のための登録様式等の詳細に係る研究
課題番号
19CA2027
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
望月 直樹(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 宍戸 稔聡(国立循環器病研究センター 研究推進支援部)
  • 平松 治彦(国立循環器病研究センター 情報統括部)
  • 東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学医学部)
  • 小室 一成(東京大学医学部附属病院循環器内科)
  • 森田 啓行(東京大学医学部附属病院循環器内科)
  • 宮本 享(京都大学 医学研究科)
  • 柴田亜希子(国立がん研究センター がん対策情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,646,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国において循環器病は主要な死亡や介護導入の原因となっており社会的な影響が大きい疾患群である。また、循環器病は急性期治療の必要性や回復期、維持期の再発、増悪を繰り返すといった疾患上の特徴がある。このような循環器病の診療情報収集につき2019年1月より厚生労働省健康局「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」において検討が行われた。同年7月の報告書では公的な情報収集の枠組みの必要性が示され、まずはモデル事業で診療情報の収集事業を開始し、その中で、運用方法や登録内容等の検証を行った上で、診療情報を収集・活用できる全国規模のシステムを構築し、運用開始を目指すとされた。具体策として、まずは急性期医療現場で活用すること、正確な患者数や罹患率を踏まえた診療提供体制の構築や予防等公衆衛生に活用することを目的に、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性冠症候群、急性大動脈解離、急性心不全 (慢性心不全の急性増悪を含む)の急性期入院に際し、各々概ね30項目の診療情報を、顕名で収集することが示された。本研究は、検討会報告書に従って循環器病の診療情報の収集・活用の取組を進めるに先立ち、診療情報収集の対象疾患及び収集項目の定義等の詳細や、また、循環器病の診療情報収集・提供に適した登録様式について明確にすることを目的として実施した。
研究方法
研究方法としては、研究計画1:検討会にて提言された6疾患およびその収集項目の細部(定義等)について、国立循環器病研究センター各科担当医師および医療情報部を中心に策定した。研究計画2:研究計画1で策定された定義書(案)について、これら6疾患について十分な診療実績を持ち、データの一般化可能性が見込まれるとともに協力の得られた5施設(横浜市立大学附属市民総合医療センター、小倉記念病院、済生会熊本病院、京都大学医学部附属病院、国立循環器病研究センター)において、実際に登録を担う事が見込まれる診療情報管理士等による入力シミュレーションを行った。研究計画3:研究計画1で策定された定義書 (案)と、既存の循環器疾患登録事業で収集されるデータ項目名の一致について調査を行った。研究計画4:診療情報収集の基礎的な設計にあたり、すでに実施されている全国がん登録システムや、既存の循環器系疾患登録事業における情報収集方法とデータの管理について調査を行った。
結果と考察
定義書(案)を「別刷1」に纏めた。基本作業としては、患者基本情報などの共通項目と疾患別の収集項目に分類する作業から開始し、患者基本情報など共通項目については、「全国がん登録」に準拠する形で整理した。疾患別収集項目については「疾病、傷害および死因統計分類提要 ICD-10(2013年版)」、日本循環器学会や日本脳卒中学会の各疾患ガイドライン、各種疾患登録レジストリなどの公開情報を元に策定した。また、治療内容など処方内容の記載にあたっては、当初は世界保健機関が統括管理する、解剖治療化学分類法に基づく分類表を準備したが、実臨床での収集の際にはこの分類が適さないことがわかった。
 この定義書(案)について全5施設、計10名の診療情報管理士ないしは医師事務作業補助者(経験年数: 中央値7 [四分位 5-9]年)による入力シミュレーションを実施した。結果、入力時間は各疾患30分以内であった。入力時間は、経験年数と逆相関がみられた。既存レジストリとの入力項目の比較では、患者基本情報など共通項目で概ね6割程度、疾患別項目で2-9割程度の一致をみた。
 これらの結果をもとに、診療情報収集の基礎的な設計について検討した。「全国がん登録」システムは、広く情報を収集していること、顕名(実名)による登録が行われていること、個人情報に配慮したデータ管理が行われていることから、本研究課題で必要と思われる機能を網羅していると考えられたが、登録用システムと管理用システムの分離、両システム間のFirewallの設置よるアクセスコントロールの実現などの基本的な構成については今後さらに検討する必要があるものと思われた。循環器系疾患における収集システムにおいてもこれは非常に参考になるものと考えられた。
結論
本研究では、これら6疾患の急性期入院に関する診療情報の収集に関して、対象疾患の定義(疾患分類、登録範囲)および収集項目、収集基盤構築について検討を行った。今回の結果を踏まえて、今後少数の医療機関におけるシンプルなモデル事業で診療情報の収集を開始し、さらにその中で登録内容や運用方法、情報収集システム等の検証を行い、全国レベルの悉皆性のあるデータベースへ展開することにより、今後の循環器疾患の適切な医療の提供や循環器疾患の現状の把握に基づいた政策が可能となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2020-10-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201906026C

収支報告書

文献番号
201906026Z