諸外国の予防接種制度に関する研究

文献情報

文献番号
201906025A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国の予防接種制度に関する研究
課題番号
19CA2026
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 勝田 友博(聖マリアンナ医科大学 小児科学教室)
  • 宮入 烈(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科 感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,410,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
予防接種法は、施行5年後を目途に改正に向けた検討を行うこととされており、今後、予防接種法の見直しに向けて、諸外国の状況も踏まえた予防接種制度全般の見直しが必要と考えられる。その基礎資料として、本研究では、諸外国における予防接種導入プロセス等について情報収集を行い、またそれらについて国と比較分析を行う。
研究方法
諸外国の予防接種の導入プロセス等、特に、どのような科学的エビデンスが活用されているのか、費用対効果や価格設定の観点でどのような資料でどのような議論が行われているのか等に関して、日本と同程度の予防接種の仕組みを有する諸外国について、各国を訪問し、担当者へのインタビュー等を実施して、情報を整理した。また、世界的な課題となっているワクチン忌避(vaccine hesitancy)に関する現状や対応、ワクチンに関する各国民へのリスクコミュニケーションの実践等についても情報を整理した。その上で、各国の状況を日本の各種制度や実態と比較可能なかたちで整理し、日本の予防接種制度の適用の可能性及びリスクコミュニケーションの具体的なあり方について分析・提言を行った。
結果と考察
今回調査した各国においてワクチンの重要性に対する認識は日本と同様であった。ほとんどの国に、予防接種政策を決定するNational Immunization Technical Advisory Group (NITAG)が存在している。NITAGには正確な疫学データに基づく公衆衛生上有益な判断、成果が求められるが、NITAGを支える人材予算が豊富であった。多くの場合NITAGの決定はそのまま政策として導入されるが、日本は予防接種法を改定するステップが必要な点が諸外国とは異なる点である。
 多くの国は情報技術を積極的に取り入れ、中央管理が過去10年で飛躍的に進んでいる点が日本とは大きく異なっていた。予防接種歴データ(Registry)がしっかり管理されており、接種率によるプログラムの評価、副反応のモニタリングへの活用など、政策に直結する役割を果たしており、日本にも必要なシステムであると考える。また、リスクコミュニケーションについての戦略もproactiveであり、副反応事例が発生した場合などは、諸外国は副反応のモニタリングを目的とした能動的なサーベイランスシステムに加え、モニタリングで得られた仮説を証明するデータベースを保有しており、それらを有意義に活用し情報発信を行っていた。
 ワクチンを輸入に依存しており、システムの重点は提供体制に置かれている国があった。一方で計画的なワクチンの備蓄システムを構築している国もあり、ワクチンの供給不足が発生しても必要なワクチン数が確保できる契約をしていく国などもあり、危機管理という点からも日本とは事情が異なっていた。
結論
日本における接種可能なワクチンの種類は、諸外国のそれとほぼ同等なレベルまで到達している。しかし、接種の推奨の決定や予防接種歴の記録、効果や副反応のエビデンスに基づいた解析や評価、安定供給のためのシステムなど、予防接種を取り巻く環境は諸外国にあって日本にないものが存在した。今後これらの点を整備し、安全に有効にワクチンを活用していける環境を整えることが求められる。

公開日・更新日

公開日
2021-07-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-07-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201906025C

収支報告書

文献番号
201906025Z