健康寿命の延伸に向けた地域保健と職域保健の連携に資するデータ項目及び分析方法の明確化のための研究

文献情報

文献番号
201906024A
報告書区分
総括
研究課題名
健康寿命の延伸に向けた地域保健と職域保健の連携に資するデータ項目及び分析方法の明確化のための研究
課題番号
19CA2025
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 源太(京都大学医学部附属病院 診療報酬センター)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 田村 寛(京都大学国際高等教育院)
  • 大寺 祥佑(京都大学医学部附属病院 医療情報企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康寿命の延伸および生活の質の向上のためには、健康づくりが進みにくい対象者等に対して、地域保健と職域保健が連携し、継続的かつ包括的な保健事業を展開することが必要である。地域全体の健康課題を把握し、地域・職域の関係者が同じ目標に向かって取り組んでいくためには課題の共有が必要であるが、具体的な保健事業を展開する二次医療圏協議会においては、課題を把握するための分析方法が不明確であること、また課題を把握するための仕組みが十分でないことから地域特性を活かした事業の展開ができていないという意見がある。近年ではレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)をはじめとして、様々な保健医療分野での大規模データベースが構築されており、これらのデータを用いて地域保健・職域保健の現況を明らかにする客観的な指標が提示できれば、関係者間での課題の共有がすすみ、地域保健・職域保健の連携にまつわる議論を円滑化・活性化させることが期待できる。本研究は、NDBを事例とし、NDBに収載されたデータから、地域・職域連携における健康課題の把握や保健事業の展開等に活用できる客観的な指標の同定を試みることを目的とするものである。
研究方法
2014年度実施分のNDB特定健診データから、二次医療圏協議会での活用に耐えうるよう、喫煙の有無に関する項目を例として試行的に二次医療圏単位での集計を行い、指標の作成の可否についての検討を行う。NDBデータの分析によって得られた結果の指標化に際しては、Zスコアによる評価を試みた。
結果と考察
都道府県別及び二次医療圏別の集計結果、都道府県別及び二次医療圏別のZスコアをグラフ化したところ、同一都道府県内においても、二次医療圏ごとにZスコアに大きな幅がしばしば認められるという結果となった。二次医療圏別のZスコアでは、男性においては、県庁所在地の二次医療圏が当該県内において最もZスコアが低くなる傾向にある一方、女性においては必ずしもその傾向があてはまらず、逆に一部の都道府県においては、県庁所在地の二次医療圏が当該県内において最もZスコアが高くなっている事例が認められた。本研究では質問1項目に対する試行的集計にとどまったが、NDBをリソースとして二次医療圏単位での集計を行うことが可能であることが明らかにできたとともに、得られた結果からは、同じ都道府県内でも二次医療圏ごとに特定健診の結果が大きく異なることを確認することができた。また、今回の研究では詳細な解析にて証明できたわけではないながらも、喫煙の有無という項目においては、県庁所在地を含む二次医療圏か否かということとZスコアの値との相関を示唆する結果を得ることができた。県庁所在地は多くの場合、その都道府県の保健医療政策の拠点であるとともに、経済・商業の中心地でもあることから、今回のような喫煙の有無といった指標に限らず、特定健診の他の項目においても同一県内の他の二次医療圏とは異なる傾向が現れてくる可能性がある。これらを明らかにしていくのは今後の課題である。
一方で、二次医療圏単位の分析に特有の課題も確認できた。2014年度のNDB特定健診データにおいて、この喫煙の有無を問う質問に対して二次医療圏別かつ性・年齢階級別の集計では集計結果が10未満となる事例が所々に認められ、他の集計値から加減算を行うことで集計結果が類推されないよう、追補的に複数の空欄を作成せざるを得なかった。また、郵便番号情報を元に受診者を二次医療圏別に割り付けたものの、その割り付けに漏れた事例が全体の2.6%を閉めていた。対応表作成の不具合やデータベースの記録時、登録時の不具合などが原因として考えられるが、利用者による集計の精度向上を図る目的でも、こうした基本的な情報は利用者の解釈や努力にゆだねることなく、何らかの形で簡単に参照できるような仕組みがあることが望ましいのではないか。
結論
NDB特定健診データを用いて、都道府県別及び二次医療圏別の、喫煙の有無に関するZスコアを導出することができた。同一都道府県内においても、二次医療圏ごとにZスコアに大きな幅がみられる結果となるなど、Zスコアを活用し、NDB特定健診データを用いて二次医療圏別の健康状況に関する指標を導出することが可能であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2023-08-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201906024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
具体的な保健事業を展開する二次医療圏協議会においては、課題を把握するための分析方法や課題を把握するための仕組みが十分に整っておらず、地域特性を活かした事業の展開が容易でない、という意見がみられることがあった。本研究により、NDBを適切に活用することで地域・職域連携の基礎資料となる客観的な指標を同定でき、健康課題の把握や保健事業の展開等に活用できる可能性があることが示された。また、その指標作成における課題についても明らかにすることができた。
臨床的観点からの成果
NDBデータはレセプト情報と特定健診・特定保健指導情報によって構成されているが、受診者の住所情報は特定健診情報にのみ含まれているとともに、利用者の側で二次医療圏単位に割り付ける対応表を準備する必要がある。こうしたハードルが存在するものの、NDBの特定健診データから受診者を二次医療圏に割り付けて集計することが可能であることを本研究にて明らかにすることができた。今後、NDBの特定健診データにレセプトデータを紐づけることで、より受診者の病態に即した分析や集計を実施できることが示された。
ガイドライン等の開発
本研究は、過去の厚労科研「健診・医療・介護等データベースの活用による地区診断と保健事業の立案を含む生活習慣病対策事業を担う地域保健人材の育成に関する研究」(研究代表者:横山徹爾)の議論を踏襲し、特定健診データの地域別特徴を要約する際の指標として案内されているZスコアを使用し、かつ二次医療圏というより粒度の小さい単位での集計という新たな知見を加えることができた。この点で、厚労科研が蓄積してきた、健康課題の把握という責務を担う人材育成の知見を継承・強化できたと考えている。
その他行政的観点からの成果
2019年度内においては本研究で得られた知見を直接ガイドライン等の開発や審議会等での議論に活用される機会は得られなかったが、2020年度以降、「これからの地域・職域連携推進の在り方に関する検討会」のような審議会や、あるいはその他行政が推進するモデル事業などにおいて、本研究の知見を提供できるよう、厚労省関連部局と連携を図っていく。
その他のインパクト
都道府県単位という地域情報から更に粒度を小さくして二次医療圏単位でNDB特定健診データを集計するという取組は、二次医療圏情報をNDBデータに外挿する作業が煩雑であることもあり、これまでの厚労省の公表資料やその他の研究においてはみられなかった。地域におけるきめ細かな医療政策の実現には都道府県単位での指標を参照にするだけでは不十分であるとの声もあり、今回の知見をきっかけにして、二次医療圏単位でのNDB特定健診データの分析が活性化し、地域における医療政策の充実化に貢献することが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201906024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,200,000円
(2)補助金確定額
7,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,067,842円
人件費・謝金 2,629,208円
旅費 244,220円
その他 1,597,730円
間接経費 1,661,000円
合計 7,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-18
更新日
-