文献情報
文献番号
201906023A
報告書区分
総括
研究課題名
一般用医薬品の適正使用の一層の推進に向けた依存性の実態把握と適切な販売のための研究
課題番号
19CA2024
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
- 渡邉 和久(公益社団法人 日本薬剤師会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,145,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、先行する「民間支援団体利用者のコホート調査と支援の課題に関する研究」で得られた薬物依存症者の情報を活用し、解析することで、一般用医薬品による依存等の傾向を把握した(研究1、以下「患者調査」と表記する)。さらに、現在の薬局等における、「濫用等のおそれのある医薬品」の販売の実態を調査することで、一般用医薬品による依存が疑われる事例がどの程度存在するのかを把握し、その購入方法やきっかけ、販売実態をふまえ、適切な販売の実施のためのガイドライン等の検討を行った(研究2、以下「販売調査」と表記する)。
研究方法
研究1:民間支援団体を利用する薬物依存症患者を対象とした患者調査(既存データの再分析および追加インタビュー)
研究2:薬局・ドラッグストア(店舗販売業)を対象とした販売に関する調査(質問紙調査)
研究2:薬局・ドラッグストア(店舗販売業)を対象とした販売に関する調査(質問紙調査)
結果と考察
研究1:一般用医薬品症例の特徴として、次の6点が明らかとなった。
1.若年の男性が多い
2.高学歴・非犯罪傾向
3.精神科的な問題を有する
4.薬物依存が重症
5.違法薬物の使用歴がある
6.再使用率が高い
また、一般用医薬品症例への追加調査により、次の2点が明らかとなった
1.販売数量が制限されているエスエスブロン®錠などの鎮咳去痰薬のみならず、販売数量が制限されていないパブロンゴールドA、エスタックのような総合感冒薬の依存症例がいること。
2.大量・頻回購入に対する販売制限や、乱用が疑われる者に対する「声かけ」をしている薬局・ドラッグストアが存在する一方で、乱用・依存を後押しするような大量販売・不適切販売を続けている薬局・ドラッグストアが存在すること。
「私みたいな依存者を出さないためにも、薬剤師さんには、ちゃんと売って欲しい」という患者のメッセージを真摯に受け止め、薬局やドラッグストアなど一般用医薬品を販売する現場における予防啓発や、依存症患者の早期発見・早期介入を含めたサポート体制を考える必要がある。
研究2: 一般用医薬品の販売に関して次の4点が明らかとなった。
1.頻回購入・複数個購入が発生しているのは、薬局より、ドラッグストア(店舗販売業)が多かった。
2.ジヒドロコデインを含有する鎮咳薬など、主として「濫用等のおそれのある医薬品」として販売数量が制限されている医薬品が頻回購入・複数個購入の対象となっていた。
3.一方、「濫用等のおそれのある医薬品」としての規制の対象になっていない一部の製品(パブロン/パブロンゴールドA/パブロンSゴールド等)も頻回購入・複数個購入の対象となっていた。
4.適正販売の取り組み事例としては、こまめな声掛けや、陳列の工夫(カウンターの背後に置く、1箱のみ又は空箱の陳列等)が多く、販売記録の作成、注意喚起のPOPの作成、対象商品購入時にレジで確認できるシステムの導入、近隣店舗との情報共有などがあげられた。
1.若年の男性が多い
2.高学歴・非犯罪傾向
3.精神科的な問題を有する
4.薬物依存が重症
5.違法薬物の使用歴がある
6.再使用率が高い
また、一般用医薬品症例への追加調査により、次の2点が明らかとなった
1.販売数量が制限されているエスエスブロン®錠などの鎮咳去痰薬のみならず、販売数量が制限されていないパブロンゴールドA、エスタックのような総合感冒薬の依存症例がいること。
2.大量・頻回購入に対する販売制限や、乱用が疑われる者に対する「声かけ」をしている薬局・ドラッグストアが存在する一方で、乱用・依存を後押しするような大量販売・不適切販売を続けている薬局・ドラッグストアが存在すること。
「私みたいな依存者を出さないためにも、薬剤師さんには、ちゃんと売って欲しい」という患者のメッセージを真摯に受け止め、薬局やドラッグストアなど一般用医薬品を販売する現場における予防啓発や、依存症患者の早期発見・早期介入を含めたサポート体制を考える必要がある。
研究2: 一般用医薬品の販売に関して次の4点が明らかとなった。
1.頻回購入・複数個購入が発生しているのは、薬局より、ドラッグストア(店舗販売業)が多かった。
2.ジヒドロコデインを含有する鎮咳薬など、主として「濫用等のおそれのある医薬品」として販売数量が制限されている医薬品が頻回購入・複数個購入の対象となっていた。
3.一方、「濫用等のおそれのある医薬品」としての規制の対象になっていない一部の製品(パブロン/パブロンゴールドA/パブロンSゴールド等)も頻回購入・複数個購入の対象となっていた。
4.適正販売の取り組み事例としては、こまめな声掛けや、陳列の工夫(カウンターの背後に置く、1箱のみ又は空箱の陳列等)が多く、販売記録の作成、注意喚起のPOPの作成、対象商品購入時にレジで確認できるシステムの導入、近隣店舗との情報共有などがあげられた。
結論
1.患者調査を通じて、一般用医薬品の薬物依存患者の特徴が明らかとなった。また、販売調査を通じて、「濫用等のおそれのある医薬品」の頻回購入・複数個購入の実態が明らかとなった。
2.患者調査、販売調査の両方において、販売数量が制限されていない総合感冒薬(パブロン/パブロンゴールドA/パブロンSゴールド、エスタック等)が、薬物依存・頻回購入・複数個購入の対象となっている事実が明らかになったことから、行政においては、「濫用等のおそれのある医薬品」の規制の在り方について、関係業界と議論する必要があると示唆される。
3.販売調査からは、医薬品の適正販売に対する具体的な取り組み事例が示された一方で、患者調査からは、乱用・依存を助長してしまうような大量販売・不適切販売を続けている薬局・ドラッグストアが一部で存在する事実も明らかとなった。医薬品販売に関わる企業は、一般用医薬品等の乱用・依存に対する理解を深めていくことが求められる。
4.今後、各団体及び企業が主体となって、一般用医薬品等の販売に従事する者(薬剤師や登録販売者)に対して、「濫用等のおそれのある医薬品」に関する研修を充実させていくことが必要である。具体的な研修内容としては、「濫用等のおそれのある医薬品」の販売制度に関する周知、顧客から頻回購入・複数個購入を求められた際の対応、薬物乱用・依存が疑われる患者への対応等が想定される。薬剤師向けのゲートキーパー研修会等、処方薬乱用・依存や自殺予防といったメンタルヘルス分野の既存研修をベースに、一般用医薬品等の販売者向けの研修プログラムを組み立てていくことが可能と考えられる。
2.患者調査、販売調査の両方において、販売数量が制限されていない総合感冒薬(パブロン/パブロンゴールドA/パブロンSゴールド、エスタック等)が、薬物依存・頻回購入・複数個購入の対象となっている事実が明らかになったことから、行政においては、「濫用等のおそれのある医薬品」の規制の在り方について、関係業界と議論する必要があると示唆される。
3.販売調査からは、医薬品の適正販売に対する具体的な取り組み事例が示された一方で、患者調査からは、乱用・依存を助長してしまうような大量販売・不適切販売を続けている薬局・ドラッグストアが一部で存在する事実も明らかとなった。医薬品販売に関わる企業は、一般用医薬品等の乱用・依存に対する理解を深めていくことが求められる。
4.今後、各団体及び企業が主体となって、一般用医薬品等の販売に従事する者(薬剤師や登録販売者)に対して、「濫用等のおそれのある医薬品」に関する研修を充実させていくことが必要である。具体的な研修内容としては、「濫用等のおそれのある医薬品」の販売制度に関する周知、顧客から頻回購入・複数個購入を求められた際の対応、薬物乱用・依存が疑われる患者への対応等が想定される。薬剤師向けのゲートキーパー研修会等、処方薬乱用・依存や自殺予防といったメンタルヘルス分野の既存研修をベースに、一般用医薬品等の販売者向けの研修プログラムを組み立てていくことが可能と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2023-08-15
更新日
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