文献情報
文献番号
201906020A
報告書区分
総括
研究課題名
ナショナルビッグデータを用いた新専門医制度の地域外科医療に及ぼす影響の評価研究
課題番号
19CA2021
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 俊義(一般社団法人日本外科学会)
研究分担者(所属機関)
- 黒田 新士(岡山大学病院 新医療研究開発センター)
- 浜本 隆二(国立がん研究センター がん分子修飾制御学分野)
- 隈丸 拓(東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学講座)
- 瀬戸 泰之(東京大学大学院医学系研究科 消化管外科学)
- 山下 啓子(北海道大学大学院医学院 乳腺外科学)
- 吉野 一郎(千葉大学大学院医学研究院 呼吸器病態外科学)
- 戸井 雅和(京都大学大学院医学研究科 乳腺外科学)
- 馬場 秀夫(熊本大学大学院生命科学研究部 消化器外科学)
- 渡邊 昌彦(北里大学医学部 外科)
- 森 正樹(九州大学大学院 消化器・総合外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、NCD、日本外科学会会員情報から得られたデータを中心に、外科医師の勤務実態に関する調査結果をもとに労働環境も加味し、現時点および将来における必要外科医師数の算出を行うことを目的とする。
研究方法
ステップ1. 「集約化の必要のない術式」の評価
2017年のNCDデータをもとに、虫垂切除術、胆嚢摘出術、気胸手術(2016年データ)に限定し、施設属性(hospital volume)が術後短期成績(術後在院期間、手術時間、出血量、術後合併症など)の評価項目に影響を与えるかを解析し、集約化の必要性について検討した。
ステップ2. 「モデル医療圏」の評価
NCD登録データの、患者居住地の郵便番号と手術が行われた施設住所から、同一都道府県内で手術を受けた患者の割合(都道府県内手術完遂率)を算出した。また、他都道府県で手術を受けた場合は、どの都道府県で受けたか、またどの都道府県から患者が流入してきたかの解析も行い、都道府県外患者流入率を算出した。
ステップ3. 「適正外科医師数」の評価
1)日本外科学会会員情報をもとに、日本全国および都道府県ごとの、性年齢別医師数を算出した。
2) 外科医師の勤務実態調査として、日本外科学会会員(40,121人)を対象に、オンラインで、直近1週間の勤務実態を調査し、週あたりの性年齢別労働時間(診療+診療外+外勤)および当直回数を算出した。
3) まず、働き方改革の観点から、性年齢別労働時間が60時間以内/週となるように(当直1回あたり15時間として加味)、またタスクシフトにより7%労働時間が短縮すると仮定して、2019年時点での必要外科医師数を算出した。次に、ステップ2の対象疾患をもとにNCDから、2011年から2017年までの7年間の平均性年齢別手術症例数と2015年の性年齢別人口より、性年齢別全国手術率を算出した。国立社会保障・人口問題研究所より発表されている地域別の人口動態推計をもとに、将来における「性年齢別手術率が同じ」、「都道府県の患者流出入率が同じ」および「手術数あたりの医師数が同じ」と仮定し、2025年・2030年・2035年における必要外科医師数を、それぞれの時点において7%のタスクシフトを考慮して算出した。
2017年のNCDデータをもとに、虫垂切除術、胆嚢摘出術、気胸手術(2016年データ)に限定し、施設属性(hospital volume)が術後短期成績(術後在院期間、手術時間、出血量、術後合併症など)の評価項目に影響を与えるかを解析し、集約化の必要性について検討した。
ステップ2. 「モデル医療圏」の評価
NCD登録データの、患者居住地の郵便番号と手術が行われた施設住所から、同一都道府県内で手術を受けた患者の割合(都道府県内手術完遂率)を算出した。また、他都道府県で手術を受けた場合は、どの都道府県で受けたか、またどの都道府県から患者が流入してきたかの解析も行い、都道府県外患者流入率を算出した。
ステップ3. 「適正外科医師数」の評価
1)日本外科学会会員情報をもとに、日本全国および都道府県ごとの、性年齢別医師数を算出した。
2) 外科医師の勤務実態調査として、日本外科学会会員(40,121人)を対象に、オンラインで、直近1週間の勤務実態を調査し、週あたりの性年齢別労働時間(診療+診療外+外勤)および当直回数を算出した。
3) まず、働き方改革の観点から、性年齢別労働時間が60時間以内/週となるように(当直1回あたり15時間として加味)、またタスクシフトにより7%労働時間が短縮すると仮定して、2019年時点での必要外科医師数を算出した。次に、ステップ2の対象疾患をもとにNCDから、2011年から2017年までの7年間の平均性年齢別手術症例数と2015年の性年齢別人口より、性年齢別全国手術率を算出した。国立社会保障・人口問題研究所より発表されている地域別の人口動態推計をもとに、将来における「性年齢別手術率が同じ」、「都道府県の患者流出入率が同じ」および「手術数あたりの医師数が同じ」と仮定し、2025年・2030年・2035年における必要外科医師数を、それぞれの時点において7%のタスクシフトを考慮して算出した。
結果と考察
ステップ1. 「集約化の必要のない術式」の評価
虫垂切除術、胆嚢摘出術、気胸手術のいずれにおいても、リスク調整後の再入院率とClavien-Dindo分類Grade3以上の合併症発生率において、hospital volume別の施設間に有意差を認めなかった。
ステップ2. 「モデル医療圏」の評価
都道府県内手術完遂率の高い上位5都道府県は、北海道(99.5%)・沖縄(98.8%)・愛知(98.3%)・新潟(98.1%)・長野(98.0%)であり、行政上の医療圏の観点からは理想的な医療体制を提供している道県と考えられた。また、都道府県外患者流入率が高い5都道府県は、東京(17.6%)・群馬(8.9%)・千葉(8.6%)・栃木(8.1%)・奈良(8.1%)であり、関東地方・関西地方で高い傾向にあった。
ステップ3. 「適正外科医師数」の評価
全国における2019年の必要医師数は45,504人で実際の医師数(39,210人)との差は6,294人であった。2025年、2030年、2035年における必要医師数との差は、人口減少に伴う手術数の減少により徐々に低下傾向にはあるが、それぞれ6,275人、5,932人、5,611人であった。2019年の医師数を維持するための年間養成数は753人で、2025年、2030年、2035年の医師数を維持するための年間養成数は、それぞれ1,700人、1,292人、1,104人であった。2019年の必要医師数は、すべての都道府県で2019年の医師数以上であったが、2025年、2030年、2035年では、11県(和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、徳島県、香川県、高知県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県)において、必要医師数が現在の医師数未満となったが、これらはすべて西日本の県であった。
虫垂切除術、胆嚢摘出術、気胸手術のいずれにおいても、リスク調整後の再入院率とClavien-Dindo分類Grade3以上の合併症発生率において、hospital volume別の施設間に有意差を認めなかった。
ステップ2. 「モデル医療圏」の評価
都道府県内手術完遂率の高い上位5都道府県は、北海道(99.5%)・沖縄(98.8%)・愛知(98.3%)・新潟(98.1%)・長野(98.0%)であり、行政上の医療圏の観点からは理想的な医療体制を提供している道県と考えられた。また、都道府県外患者流入率が高い5都道府県は、東京(17.6%)・群馬(8.9%)・千葉(8.6%)・栃木(8.1%)・奈良(8.1%)であり、関東地方・関西地方で高い傾向にあった。
ステップ3. 「適正外科医師数」の評価
全国における2019年の必要医師数は45,504人で実際の医師数(39,210人)との差は6,294人であった。2025年、2030年、2035年における必要医師数との差は、人口減少に伴う手術数の減少により徐々に低下傾向にはあるが、それぞれ6,275人、5,932人、5,611人であった。2019年の医師数を維持するための年間養成数は753人で、2025年、2030年、2035年の医師数を維持するための年間養成数は、それぞれ1,700人、1,292人、1,104人であった。2019年の必要医師数は、すべての都道府県で2019年の医師数以上であったが、2025年、2030年、2035年では、11県(和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、徳島県、香川県、高知県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県)において、必要医師数が現在の医師数未満となったが、これらはすべて西日本の県であった。
結論
1. 虫垂切除術、胆嚢摘出術、気胸手術は、集約化の必要のない術式とみなすことができる。
2. 愛知県、岡山県、福岡県は地域の拠点県として機能している。また、関東地方と関西地方はそれ自体が一つの医療圏として機能している。
3. 将来必要な外科医師数は現状よりも多く、診療科偏在の解消のために、より多くの外科医師の育成が必要である。一方で、西日本のいくつかの府県で将来的に外科医師が充足することが推測されるため、外科医師の地域偏在の解消のために、外科の専門研修プログラムにおいても募集定員のシーリング等の対策が必要となる可能性がある。
2. 愛知県、岡山県、福岡県は地域の拠点県として機能している。また、関東地方と関西地方はそれ自体が一つの医療圏として機能している。
3. 将来必要な外科医師数は現状よりも多く、診療科偏在の解消のために、より多くの外科医師の育成が必要である。一方で、西日本のいくつかの府県で将来的に外科医師が充足することが推測されるため、外科医師の地域偏在の解消のために、外科の専門研修プログラムにおいても募集定員のシーリング等の対策が必要となる可能性がある。
公開日・更新日
公開日
2020-10-09
更新日
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