文献情報
文献番号
201906019A
報告書区分
総括
研究課題名
2040年を念頭に置いたロボット・AI等による医療福祉分野におけるイノベーション創出に向けた研究
課題番号
19CA2019
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
本田 幸夫(常翔学園大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部ロボット工学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,920,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、未来イノベーションワーキング・グループ」の中間取りまとめに示されたイノベーション取組例のうち、厚生労働省が重点的に取り組むべき課題である「①希望すればいつでも、いつまでも自宅で暮らせる事を可能にする生活支援ロボットシステムに関する研究開発動向並びにその実用化を加速させる実証研究」及び「②健康寿命の延伸に向けた運動効果の社会実装」に関連するロボット・AI等の実用化を具体化するための方策を検討しまとめることにある。
研究方法
本研究テーマの課題である①希望すればいつでも、いつまでも自宅で暮らせる事を可能にする生活支援ロボットシステムに関する研究開発動向並びにその実用化を加速させる実証研究と②健康寿命延伸に向けた運動効果の社会実装に関して、斯界の有識者ヒアリング、国内外の研究動向、国や自治体における社会実装状況について調査をした。
結果と考察
一つめの研究テーマである「希望すればいつでも、いつまでも自宅で暮らせる事を可能にする生活支援ロボットシステムに関する研究開発動向並びにその実用化を加速させる実証研究の実態に関する調査研究」に関しては、日本では日本医療研究開発機構(以下AMED)が研究開発支援から実用化を推進する全体を統轄する組織として支援活動を行っている。このような介護を視点にした生活支援ロボットの開発実用化事業は世界的にも日本が先頭を走る活動であり、サービスロボット分野の安全規格としてISO13482を主導的にまとめ、2014年に制定・発行されている。日本における研究開発の課題は,ロボットの普及が遅々として進まない事にある。その理由としては,専門家の医者等が使用する医療用ロボットとは異なり,本研究テーマの対象である福祉ロボットは一般の人々が使用するロボットであるため,一般社会のロボット利活用の理解が進んでいないことにある。欧州は介護者の身体的負担軽減に関するロボット機器の開発・導入が世界で一番進んでおり,デンマークなどの欧州の福祉先進国においては,可能な限り自立した生活を維持できる施策を行っているため、普及が促進されていると考えられる。また,欧米では研究開発から社会実装・スケール化に至る一連のエコシステムを実現するために,多様な専門人材が参画した司令塔組織を構築することで政府や自治体,既存の研究組織と連携した一貫性のある体制を整備しており、このような事業化まで見据えたエコシステムの存在が普及促進に大きく貢献している。そのため,今後のロボットの研究開発方向である「身体的なアシスト」から「脳や精神的な要因への介入を図るロボット」の研究開発も日本よりも容易に進められる可能性が大きい。二つめの研究テーマである「健康寿命延伸に向けた運動効果の社会実装に関する調査研究」については,世界的にも注目をされており様々な研究が進んでいるが,まだ基礎研究の段階であると考えられる。それは,医療における治療行為であるリハビリテーションに関しては,治験結果などのデータは揃いつつあるが,特に治療を必要としない健常者が,高齢化に伴い運動効果の差異によってロコモティブシンドロームやサルコペニア,フレイル状態へ至るのかを説明できる定量的な指標とエビデンスとしてのデータが明確になっていないことにある。健康に関係する身体情報や活動データの収集には個人情報に関する倫理面等の問題があるが,新しい健康産業創出の可能性が期待される分野であるので各国とも国が中心になり産業育成の観点から各種活動を進めている。研究方向としては,運動促進のためにロボット技術による身体的な介入に加えて,脳と心がどのように反応をしているのかを解明する脳科学と連動した研究開発が進められている。
結論
高齢化が進み、ロボティクスに対しての技術集積や産業クラスターがある我が国において、国策として、この領域に積極的に取り組んでいく必要があり、日本としては研究開発からその成果を社会に還元するための商品化までに至るエコシステムの構築が重要であり、全体を統括する司令塔機能の強化が必要である。
公開日・更新日
公開日
2020-10-21
更新日
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