医薬品評価情報作成システムの有用性評価研究

文献情報

文献番号
201906017A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品評価情報作成システムの有用性評価研究
課題番号
19CA2017
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
鹿野 真弓(学校法人東京理科大学 薬学部薬学科)
研究分担者(所属機関)
  • 永井 尚美(武蔵野大学  薬学部)
  • 山田 博章(横浜薬科大学 臨床薬学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,585,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品・医療機器等の開発・流通のグローバリゼーションや製品の多様化を受けて、国際的な協力の重要性が世界の規制当局間の共通認識となりつつある。こうした中、世界保健機関(WHO)や、各国/地域の医薬品規制当局のリーダーで構成される薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)では、情報共有を視野に入れて各規制当局のリソースをより有効に活用する取組みが進められている。
さらに本邦においては、日本で承認された医薬品・医療機器がアジア諸国で迅速に受け入れられることを目指しており、医薬品等の評価結果や安全性情報の英語等での発信を積極的に行っていく必要がある。
AI自動翻訳ツールの性能は、近年、著しく進歩しており、本研究では、代表的なAI自動翻訳ツールを用いて自動翻訳の正確性等の特徴や課題を評価することでその有用性を確認し、規制当局の医薬品評価情報作成のパフォーマンス向上に資する活用法に関する研究を行うことを目的とする。
研究方法
1)自動翻訳ツールの選定
医学・薬学の専門用語にも十分に対応できるAI等を活用した自動翻訳ツールを利用するため、本学HP上で研究への協力を広く呼びかけ、本研究の主旨や本研究事業の仕組みを踏まえて協力を了承された、T-4OO(Translation For Onsha Only:株式会社ロゼッタ)及びCOTOHA(株式会社みらい翻訳/NTTコミュニケーションズ/株式会社翻訳センター)。を用いた。いずれも独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)が、その英訳とともに公表している新医薬品の承認審査報告書や医薬品規制調和国際会議(以下、ICH)各種ガイドライン等の薬事規制関連文書を用いて学習を行ったものを利用した。

2)評価対象文書の選定
平成30年以降に承認された新有効成分含有医薬品のうち、効能・効果に偏りが無いよう以下の4つの医薬品を選定し、PMDAが公表している新医薬品の審査報告書を評価対象に用いることとした。
・イミフィンジ点滴静注120mg、同点滴静注500mg(以下、イミフィンジ)抗悪性腫瘍薬
・スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL(以下、スキリージ):炎症性疾患治療薬
・ヘムライブラ皮下注30mg、同60mg、同90mg、同105mg、同150mg(以下、ヘムライブラ):血液疾患治療薬
・レルミナ錠40mg(以下、レルミナ):婦人科疾患治療薬

3)評価方法
事前に製薬企業各社での英訳産物評価法についてヒアリングを行い、評価スコア含め評価方法を定めた。上記で選択した4つの審査報告書について、2種の自動翻訳ツールを用いて翻訳した翻訳産物のうち、品質分野、毒性分野、薬理分野、ADME分野、臨床分野、及び英語の専門性の観点からの評価を実施した。
結果と考察
審査報告書のAI翻訳ツールによる翻訳産物について、専門性の観点及び英語の正確性の観点から評価した。その結果、翻訳不備の要因がいくつか特定され、原文作成の段階で翻訳不備を防ぐ方策を取るとともに、定型記載や専門用語の学習・カスタマイズによるAI自動翻訳ツールの性能向上や事後的な人手によるチェックが必要と考えられた。しかし、例えば過去の翻訳事例の機械的反映等、AI自動翻訳特有の翻訳不備の一部は特段のパターンによらず突発的に発生することから、そのチェックを行う際には審査報告書全体について原文と英文の比較による確認作業が必要となり、人的リソースの軽減効果は限定的で、審査報告書英訳の公表版作成に活用することは現時点では現実的ではないと考えらえる。一方で、各分野の専門性を有する者であれば、翻訳不備があっても論旨の概略を把握することは可能と考えられ、例えば規制当局間で早急な情報提供を求められる場合など、必要に応じてAI自動翻訳ツールで英訳を行い、一定の翻訳不備が含まれることを説明した上で最低限の確認・修正のみを行った審査報告書のAI自動翻訳英文版を情報提供することが有用なケースはあると考えられる。AI自動翻訳ツールは、学習やカスタマイズ等によるレベルアップのみならず、翻訳エンジン自体の性能向上も期待されるものであることから、今後、より質の高い自動翻訳ツールが使用可能となることが望まれる。
結論
現時点では、審査報告書英訳の公表版作成にAI自動翻訳ツールを活用することは現実的ではないが、一方で、翻訳不備があっても各分野の専門性を有する者であれば論旨を把握することは可能と考えられる。必要に応じて、一定の翻訳不備が含まれる前提で、審査報告書のAI自動翻訳英文版を情報提供することが有用なケースはあると考えられる。今後、AI自動翻訳ツール、翻訳エンジンのさらなる性能向上も期待され、より質の高い自動翻訳ツールが使用可能となることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2020-08-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2020-08-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201906017C

収支報告書

文献番号
201906017Z