健康増進のための住環境についての研究

文献情報

文献番号
201906016A
報告書区分
総括
研究課題名
健康増進のための住環境についての研究
課題番号
19CA2016
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
林 基哉(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐伯 圭吾(公立学校法人 奈良県立医科大学 医学部)
  • 杉山 大典(慶應義塾大学 看護医療学部)
  • 荒木 敦子(北海道大学 環境健康科学研究教育センター)
  • 長谷川 兼一(秋田県立大学 システム科学技術学部)
  • 羽山 広文(北海道大学 大学院工学研究院 空間性能システム部門 建築環境学研究室)
  • 桑沢 保夫(国土技術政策総合研究所 住宅研究部)
  • 東 賢一(近畿大学 医学部)
  • 阪東 美智子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 開原 典子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 金 勲(キム フン)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、住居環境に起因する健康影響・健康増進に関係する過去の文献をレビューし住居環境に係る健康影響・健康増進及びその機序に関するエビデンスを収集して整理する。また、住宅及び健康影響等の関連する統計データを収集して整理する。これによって、今後の調査研究に向けた基礎情報とし、健康影響・健康増進に資する科学的エビデンスの利活用方法について提言することを目的とする。
研究方法
Ⅰ 住宅の空気環境及び温熱環境、住居環境に起因する健康影響・健康増進に関する文献及び関連の調査研究の最新動向に関する情報を収集して整理する。
① 過去の研究委員会成果(建設小省委託業務「住宅生産イノベーションプロジェクト 健康で快適な住宅開発業務・健康阻害要因とその性能水準」H2、建設省建築研究所「健康的な住居環境形成技術の開発」H10 、国土技術総合研究所「シックハウス対策技術の開発」H13 、国土交通省住宅局「住宅のカビ・ダニ等のアレルギー源に係る実態把握及び情報提供に係る検討」H19 、一般社団法人 日本サステナブル建築協会 健康維持増進住宅研究委員会・コンソーシアムH23、日本サステナブル建築協会スマートウエルネス住宅等推進調査委員会研究企画委員会H30等)の活用
② 研究文献調査(世界保健機関(WHO)住宅と健康のガイドライン(Housing and Health Guidelines)及びそのエビデンス、パブメド検索で室内温熱環境及び空気環境等の室内環境要素と健康影響に関する文献を取得する。
③ 住居環境及び健康影響増進に関する研究者及び研究機関(東京都健康長寿センター研究所の入浴事故調査、日本サステナブル建築協会によるスマートウエルネス住宅、北海道大学環境健康科学研究教育センター及び北海道立総合研究機構の北方型住宅等)の視察及びヒアリングにより、近年の調査研究の現状と動向に関する情報を収集する。

Ⅱ 総務省統計局住宅・土地統計調査、国土交通省気象庁アメダス気象データ、厚生労働省人口動態統計を用いて、住宅の省エネ法対応、暖冷房換気設備の普及、気象条件、室内環境に関連する可能性がある疾病の状況等に関する基礎情報を整理する。なお、アメダス気象データと人口動態統計については、関連付けする手法を用い、心疾患、脳血管疾患等の関係性に関する整理の方法を検討する。
Ⅲ 以上を用いて、収集された科学的エビデンスをもとに、今後の研究デザインの提案を行う。
結果と考察
住居環境の実態・動向、住居環境に起因する健康影響の実態及び機序に関する国内外のエビデンスを入手し整理することで、我国の現状と将来の住居環境に起因する健康影響を把握する材料を得た。また、住宅の省エネルギー化に伴う断熱気密化や暖冷房換気設備の普及の効果や新しい住宅における住まい方や健康リテラシーに関する基礎情報を得た。また、これらの収集された科学的エビデンスの利活用方法についての提言により、今後の研究の進むべき方向性を示した。
建築物の省エネルギー基準の強化にともなって、住宅の断熱熱気密化が急速に進み居住環境の向上が期待される一方で、常時換気設備や暖冷房装置の使用方法に関する理解不足、エネルギー節約のための誤った使用など、建物性能を活かしていない居住環境によるシックハウスやヒートショック等の問題、旧来の非気密低断熱におけるダンプネス及びヒートショック等による影響が改めて確認された。
結論
本研究によって、居住環境における様々な健康リスク要因に関するエビデンスが収集され、研究デザインの要素が明らかになった。住居内の温熱光環境は、循環器疾患等の健康リスクの重要な要因であり、地域の気象条件の影響も看過できない。また、音環境の影響に関する指摘もあり、居住環境に起因する健康リスクに関する研究課題が挙げられる。SHS、SBS、ダンプネス等の空気環境に係る健康影響に関する知見は多いが、居住環境との関係についての課題が挙げられる。
住宅の構法、省エネレベル、地域によって居住環境は多様性であり、高齢者などのハイリスク者への対応、居住リテラシーの必要性に関する指摘がある。
今後は、エビデンスの追加と整理、居住環境の実態把握、居住環境に起因する健康リスクの想定、居住環境の改善による効果を、QOL、医療費の側面から推定することが必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201906016C

収支報告書

文献番号
201906016Z