看護職員のなりすまし防止に資するデータ活用法の構築

文献情報

文献番号
201906014A
報告書区分
総括
研究課題名
看護職員のなりすまし防止に資するデータ活用法の構築
課題番号
19CA2014
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
前田 樹海(東京有明医療大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 望月 聡一郎(湘南医療大学 保健医療学部 )
  • 伊豆上 智子(帝京大学 医療技術学部)
  • 瀬戸 僚馬(東京医療保健大学 医療情報学部)
  • 横田 慎一郎(東京大学 医学部附属病院)
  • 北島 泰子(東京有明医療大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健師、助産師、看護師の免許は、更新制ではなく終身免許であること、複数の免許を同時に所持することが可能なこと、免許証が賞状様の紙に印刷されたものであるため免許所持者が籍登録されている本人かどうか分からない等、比較的容易に免許証を偽造できる状況にあるため、無資格者が看護師になりすまして医療行為を行ったり、保健師や助産師免許を持たない看護師が免許を偽造して業務を行ったりといった犯罪も起きている。本研究は、看護有資格者個人に関連する籍簿データ、就業動態データ(業務従事者届や届出制度(とどけるん)、電子化されていないデータも含む)、住基データといった、現状では分散・独立している複数データを連結もしくは突合する方法と課題、その実現可能性、連結もしくは突合データを保管する場所・方法と注意点、データを看護師等の個人が活用する場合の方法と使用するツールの検討を行い、看護職員のなりすましを防止に資する方策の導出を目的とする。
研究方法
大きく3つの部分からなる。
1.看護職員のなりすましに関する実態調査:新聞記事データベースからの検索ならびに警視庁、県警へのヒアリング、マスメディアによって報道されなかったなりすまし事例収集のためのネット調査を実施。
2.偽装防止に関連するリソースの実態調査:主として看護師免許番号をもとに登録が行われている、都道府県を対象とした業務従事者届に関する質問紙調査、中央ナースセンターを対象としたとどけるんに関するヒアリング調査、法令からみた免許籍にかかわる現行の制度設計の特性の検討、他職種の免許管理に関するヒアリング、看護師免許取得プロセスにおけるなりすましが可能な場合の検討を実施。
3.なりすまし防止に資する方策に関する検討:看護師偽装を判別できるツールとしての可能性を探るため、業務従事者届の千件余の標本と免許籍データとの一致率/正確性の検討、ならびに、なりすまし防止の観点から現行の免許証の代替案を提案するための生体認証技術、本人認証基盤を取り扱う企業へのヒアリング。
結果と考察
1.看護職員のなりすましに関する実態調査:報道よりこの半世紀余で42件の看護職員のなりすまし事件が確認された。ネット調査より免許証の偽造以外に雇用者側の確認不足、組織ぐるみの偽装工作、労使ともに免許証のコピーの提示が当たり前とという風潮がなりすましの温床となっている可能性が考えられた。
2.偽装防止に関連するリソースの実態調査:看護師の業務従事者届は、各自治体によってカスタマイズされ概ね看護職員の就業動向や需給計画に役立てられていたが、記入ミスを職員や業者が人海戦術で修正している実態や、集計や統計解析のために電子データに変換しているといった負担が大きいことが明らかとなった。とどけるんの登録に関しては、法的に「努力義務」であり、離職者の全数把握には至っていないことや免許の登録番号が必須登録項目ではないことから、なりすまし防止のためのデータ基盤としては利用困難であることが判明した。また、法制度面からの検討では免許籍の完全性の堅牢さと可用性の低さが判明、免許籍データの医療安全への活用という観点からデータ活用を考える必要性が示唆された。他職種事例では、更新制の導入や免許データベースの公開、写真付き免許証への切替え等によって偽装防止に奏功している事例が収集された。
3.なりすまし防止に資する方策に関する検討:本人記入の業務従事者届と籍簿との不一致率は7%であり、業務従事者届のデータが必ずしも正しくない可能性が判明した。本人認証のためにはあらかじめ登録した本人ならではの特徴(写真、指紋等)とそれを所持している人物との照合が必要であるが、JPKIとマイナンバーカードの組み合わせによる免許籍との紐付けが現実的な解であると示唆された。
結論
すぐにでも強化すべき対策として、入職時に免許証原本、写真付きID、戸籍抄本の提示ならびに、新規入職者の登録番号を厚生労働省に照会することが挙げられた。また、現行の制度内で行えるなりすまし防止対策として、業務従事者届の電子化とマスターテーブル化、マイナポータルを利用したマスターテーブルの更新と閲覧、籍簿とマスターテーブルとの定期的照合が現実的な解として示された。その際のなりすまし防止にかかわるデータの連携としては、業務従事者届マスターテーブルに各都道府県の業務従事者届データを吸い上げること、業務従事者届の調査年ごとのデータを蓄積し関係データベースを構築すること、業務従事者届マスターテーブルと免許籍のデータの正確性の確認の3点が挙げられた。さらに、組織ぐるみの偽装をよくしするためのさらなるなりすまし対策として第三者が資格確認できるツールの公開が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-03-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201906014C

収支報告書

文献番号
201906014Z