文献情報
文献番号
201906002A
報告書区分
総括
研究課題名
看護職等が受ける暴力・ハラスメントに対する実態調査と対応策検討に向けた研究
課題番号
19CA2002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
三木 明子(関西医科大学 看護学部精神看護学領域)
研究分担者(所属機関)
- 佐々木 美奈子(東京医療保健大学 医療保健学部看護学科)
- 林 千冬(神戸市看護大学 基盤看護学領域看護管理分野)
- 吉川 徹(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 過労死等防止調査研究センター )
- 和田 耕治(国際医療福祉大学 医学研究科)
- 矢山 壮(関西医科大学 看護学部)
- 的場 圭(関西医科大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,584,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、看護管理者または医療安全管理責任者を対象に、医療施設で看護職等が患者やその家族から受ける暴力等やその対策の実態把握を行い、暴力等の予防策、暴力等の対応策、被害を受けた看護職等の健康状態や勤務継続への影響などを明らかにし、看護職等が安全に安心して働くことができるための組織における対応策について検討することを目的とする。
研究方法
100床以上の全医療機関5,341施設の看護管理者等へ暴力等の予防策、暴力等の対応策、被害を受けた看護職等の健康状態などを調査項目とした郵送調査を実施した。基本属性の記述統計、各項目の記述統計を算出し、病床数別、一般病院と精神科病院別、公的機関と民間病院別で各項目の比較を行った。また、これまでに発生した患者・家族からの看護職等への暴力被害のうち、最も対応に困った事例を1つ挙げるように依頼し、自由記載の内容ごとに集計し、意味内容で分類した。実地調査では、総合病院3施設、精神科病院1施設において、先駆的な暴力・ハラスメント対策の取り組み内容についてヒアリングを行った。
結果と考察
941施設より回答が得られた(回収率17.6%)。200床以下は497施設(52.9%)であった。平成30年度における看護職等に対する暴力等の実態は、患者・家族等による身体的暴力、精神的暴力、セクシュアルハラスメントのいずれかの報告があった施設は85.5%であった。暴力の内容別にみると、患者による身体的暴力が最も多く平均5.6±18.8件、精神的暴力は平均2.2±7.9件、セクシュアルハラスメントが1.0±3.0件であった。暴力等による他部署や警備員への応援依頼は全報告件数のうち14.7%、警察への届出は2.8%であった。看護職等の労災適用があった施設は22.4%、身体的受傷は41.0%、精神的不調は15.6%、暴力が原因で看護職等が休職した施設は5.6%、離職した施設は3.9%であった。
暴力等の予防策として、「暴力等の対応に関するマニュアルを作成している」が82.0%、「医療機関の方針として、患者・家族等へいかなる暴力も容認しないことを周知している」が78.9%、「暴力等の発生のリスクが高い場合、複数人でかかわる」が92.0%と実施率が高かったが、「職場を巡視して、暴力等が起こりやすい所を特定して、改善している」が49.8%、「暴力等の発生時に安全な場に避難できる経路を確保している」が45.9%、「ロールプレイなどを取り入れた暴力等予防のためのコミュニケーショントレーニングを行っている」が42.7%、「暴力等の対応策をまとめた簡便なマニュアルを全職員に配布するなどして周知している」が42.6%、「警備員を配置して、巡回することで暴力等の発生を防止する体制を整えている」が44.7%と低かった。
暴力等の発生時の対策として、「緊急時や夜間時、責任者へ定められた手順で連絡をとる」が93.1%と実施率が高かったが、「元警察職員(警察OB)に応援依頼する」が26.1%と低かった。
暴力等の発生後の対策として、「発生後に記録し報告書を提出する」が91.3%と実施率が高かったが、「暴力等のケースについて他の医療機関と情報共有する」が35.3%で低かった。
被害者への支援体制は「暴力等の被害を受けた職員が利用できる相談窓口がある」が83.6%と実施率が高かったが、「被害者を支援する病院以外の資源・サービスがある」が35.5%と低かった。
以上の結果をふまえて、医療施設における暴力等の対策マニュアルの内容に含めてほしい12のポイントを示した。本調査の結果では、暴力等に対するリスク管理体制がある施設は65.5%、暴力等の対応に関する研修を開催した施設は69.9%であり、平成20年に実施された同様の調査と比較すると、約10年で暴力等の対応に関する管理体制を整えている施設が増えている。また、過去1年間における看護職等に対する患者・家族等による暴力等の報告も増えていた。一方で、精神的暴力、セクシュアルハラスメントの報告が少なく、報告されていない潜在的な暴力等があると看護管理者等の77.8%が回答していることから、傷害などの身体的影響が少ない暴力でも看護職等が報告できるような職場の安全文化の醸成、システムの整備が早急に必要である。また、被害者への支援については相談窓口があると83.6%が回答しているが、実際に相談体制が機能し実効しているのか、被害者支援が十分に行われているのかについては検証が必要である。
暴力等の予防策として、「暴力等の対応に関するマニュアルを作成している」が82.0%、「医療機関の方針として、患者・家族等へいかなる暴力も容認しないことを周知している」が78.9%、「暴力等の発生のリスクが高い場合、複数人でかかわる」が92.0%と実施率が高かったが、「職場を巡視して、暴力等が起こりやすい所を特定して、改善している」が49.8%、「暴力等の発生時に安全な場に避難できる経路を確保している」が45.9%、「ロールプレイなどを取り入れた暴力等予防のためのコミュニケーショントレーニングを行っている」が42.7%、「暴力等の対応策をまとめた簡便なマニュアルを全職員に配布するなどして周知している」が42.6%、「警備員を配置して、巡回することで暴力等の発生を防止する体制を整えている」が44.7%と低かった。
暴力等の発生時の対策として、「緊急時や夜間時、責任者へ定められた手順で連絡をとる」が93.1%と実施率が高かったが、「元警察職員(警察OB)に応援依頼する」が26.1%と低かった。
暴力等の発生後の対策として、「発生後に記録し報告書を提出する」が91.3%と実施率が高かったが、「暴力等のケースについて他の医療機関と情報共有する」が35.3%で低かった。
被害者への支援体制は「暴力等の被害を受けた職員が利用できる相談窓口がある」が83.6%と実施率が高かったが、「被害者を支援する病院以外の資源・サービスがある」が35.5%と低かった。
以上の結果をふまえて、医療施設における暴力等の対策マニュアルの内容に含めてほしい12のポイントを示した。本調査の結果では、暴力等に対するリスク管理体制がある施設は65.5%、暴力等の対応に関する研修を開催した施設は69.9%であり、平成20年に実施された同様の調査と比較すると、約10年で暴力等の対応に関する管理体制を整えている施設が増えている。また、過去1年間における看護職等に対する患者・家族等による暴力等の報告も増えていた。一方で、精神的暴力、セクシュアルハラスメントの報告が少なく、報告されていない潜在的な暴力等があると看護管理者等の77.8%が回答していることから、傷害などの身体的影響が少ない暴力でも看護職等が報告できるような職場の安全文化の醸成、システムの整備が早急に必要である。また、被害者への支援については相談窓口があると83.6%が回答しているが、実際に相談体制が機能し実効しているのか、被害者支援が十分に行われているのかについては検証が必要である。
結論
今後は、暴力等の対応策のうち実施率の低かった、避難経路の確保、ロールプレイを取り入れた実地訓練、簡便なマニュアルの全職員への配布と周知、警備員による巡回体制について、改善が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2020-09-04
更新日
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