我が国の世界保健総会等における効果的なプレゼンスの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201905002A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の世界保健総会等における効果的なプレゼンスの確立に関する研究
課題番号
H29-地球規模-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 明石 秀親(国立国際医療研究センター 運営企画部長)
  • 三好 知明(国立国際医療研究センター 人材開発部長)
  • 野村 周平(東京大学大学院 助教)
  • 阿部 サラ(国立がん研究センター 特任研究員)
  • ミジャヌール・ラハマン(東京大学大学院 助教)
  • 坂元 晴香(東京大学大学院 特任研究員)
  • 齋藤 英子(国立がん研究センター 研究員)
  • 米岡 大輔(東京大学大学院 客員研究員)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,290,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、WHO総会を中心に主要会合における討議内容や状況、日本政府代表団の発言を元にWHO主要会合等における日本のプレゼンスや優位性と弱点そして将来像を実証的かつ包括的に分析評価することを主な目的とする。
研究方法
政策分析と定量的分析の2つのアプローチを有機的に用いて今後のWHO主要会合において我が国がより効果的にイニシアチブを取るための方策を提案する。先のG7に向けて我が国の国際保健外交政策の現場に参画し政策指針をまとめた実績ある研究者が政府及びWHO関係者らと共同で分析を行うために成果が確実に期待できる。さらに特に若手の政府人材を含む将来の国際保健人材に対し会議等でのスピーチや交渉、ファシリテーションの能力開発、効果的・戦略的介入のためのワークショッップ開催を行う。
結果と考察
平成31年度は以下2つの研究を実施した。
1)我が国における医療制度研究
2)各種国際会議における技術支援及び人材育成

研究の実施経過:
1)我が国における医療制度研究
本年度はGlobal Burden of Disease (GBD)の枠組みを用いて保健医療制度の現状と課題を正確に理解する上で重要視されている主要死因データの的確性について、メルボン大学の協力の元で検証を行なった。国の疾病構造や主要死因を分析する上で、死因として不適切または使用不能な主要死因は、比較研究を行なった6カ国の死因データのうち18%であり日本では25%であった。情報が不十分な死因データは6カ国全体の8%を占めており日本では11%であった。例えば日本の70歳以上の死因のうち17% は「高齢」によるものと診断されていた。日本の死因データの約1/4が不適切であることは我が国の疾病負荷を正しく把握し適切な保健医療制度及び投資をする上で大きな課題となりうる。これらの結果はInternational Journal of Public Healthで発表した。

東京大学国際保健政策学教室(GHP)並びにタイIHPP(International Health Policy Programme)ではWHOが事務局をホストするパートナーシップであるAsia Pacific Observatory(APO)のリサーチハブに任命されている。平成31年度はAPOのboard meetingに計2回参加し技術的支援を提供した他、Sri Lanka Health Systems in Transition (HiT)レポート作成支援も行なった。

なお、APOの活動については2017年7月に日本がホストした日ASEAN保健大臣会合成果物に当たる日ASEAN保健大臣会合宣言にも明記されており当教室が実施する研究支援活動は日ASEAN保健大臣宣言の着実な履行を示す一助ともなる。

2)各種国際会議における技術支援及び人材育成
平成31年度はWHO総会等関連会合を視野に入れて第一線の専門家を交えた勉強会を複数回開催した。また、タイ側との共催で行なっている国際保健外交ワークショップについては平成31年5月にタイで開催されたワークショップには日本から分担研究者が参加し技術支援を提供した。同年12月には日本でワークショップを開催し約25が参加した。本ワークショップに於いてはタイ及び中国からアドバイザーを招聘した他タイ若手実務者・研究者も4名招聘し能力強化を行った。

研究成果の刊行に関する一覧表:刊行書籍又は雑誌名(雑誌の時は、雑誌名、巻数、論文名)、刊行年月日、刊行書店名、執筆者氏名:

2019年度
1. Mikkelsen L, Iburg, KM, Adair T, ...., Nomura S, Sakamoto H, Shibuya K, Wengler A, Willbond S, Wood P, Lopez AD. Assessing the quality of cause of death data in six high-income countries: Australia, Canada, Denmark, Germany, Japan and Switzerland. Int J Public Health. 2020 Jan; 65, 17–28.

結論
日本の医療制度研究および健康指標の分析から得られた知見は、書籍・論文として広く公開しており、特に高齢化が急増しているアジア諸国にとって、今後UHC達成を目指していく上で疾病構造と人口動態の変化がもたらす医療システムへの影響の対処方法を検討するための有用な資料となる。同時に、我が国が国際会議等の場でUHCをはじめとするグローバルヘルスの主要課題の議論に参画する際の基盤となる知識を提供するものでもある。

公開日・更新日

公開日
2022-07-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201905002B
報告書区分
総合
研究課題名
我が国の世界保健総会等における効果的なプレゼンスの確立に関する研究
課題番号
H29-地球規模-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 明石 秀親(国立国際医療研究センター 運営企画部長)
  • 三好 知明(国立国際医療研究センター 人材開発部長)
  • 野村 周平(東京大学大学院 助教)
  • 阿部 サラ(国立がん研究センター 特任研究員)
  • ミジャヌール・ラハマン(東京大学大学院 助教)
  • 坂元 晴香(東京大学大学院 特任研究員)
  • 齋藤 英子(国立がん研究センター 研究員)
  • 米岡 大輔(東京大学大学院 客員研究員)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、WHO総会を中心に主要会合における討議内容や状況、日本政府代表団の発言を元に、WHO主要会合等における日本のプレゼンスや優位性と弱点、そして、将来像を実証的かつ包括的に分析評価することを主な目的とする。
研究方法
政策分析と定量的分析の2つのアプローチを有機的に用いて、今後のWHO主要会合において我が国がより効果的にイニシアチブを取るための方策を提案する。先のG7に向けて我が国の国際保健外交政策の現場に参画し政策指針をまとめた実績ある研究者が、政府及びWHO関係者らと共同で分析を行うために、成果が確実に期待できる。さらに、特に若手の政府人材を含む将来の国際保健人材に対し会議等でのスピーチや交渉、ファシリテーションの能力開発、効果的・戦略的介入のためのワークショッップ開催を行う。
結果と考察
1)G7を通じた日本のグローバルヘルスへの貢献に関する分析
主要国際会議の一つであるG7を通じた我が国のグローバルヘルスへの貢献については、まず初年度にUHCを取り上げて分析を行い、その成果はWHO bulletinに掲載された。また、G7伊勢志摩サミットで主要議題として取り上げられたGlobal Health Architectureも翌年度に取り上げ、日本がどのように貢献を行ったか分析を行った。その結果については、Journal of Global Healthに掲載された。

2)我が国における医療制度研究
平成29度はUHCに焦点を当て、世界で最も高齢化が進んだ日本の医療制度を英語で包括的に取りまとめたJapan Health Systems in Transition(HiT)レポートを刊行、本レポートは今後広く、日本の保健医療制度を参照する際の有用なツールとなることが期待される。
東京大学国際保健政策学教室は、WHOが事務局をホストするパートナーシップであるAsia Pacific Observatory(APO)のリサーチハブに任命されている。今回のHiTレポートの刊行はこのAPOの活動の一環でもある。

3) 平成31年度にはGlobal Burden of Disease (GBD)の枠組みを用いて保健医療制度の現状と課題を正確に理解する上で重要視されている主要死因データの的確性について、メルボン大学の協力の元で検証を行なった。これらの結果はInternational Journal of Public Healthで発表した。

3)アジア諸国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジに関する分析
日本がグローバルヘルス分野優先領域として定めているUHCについては、現在世界的にも大きな政策目標となっており、我が国の知見がアジア諸国を中心とした諸外国から求められている。また、低成長と少子高齢化の中で多くの課題が噴出し、我が国がどのように対応していくか、世界の注目を集めている。このような状況を踏まえ、アジア各国を中心にUHCの進捗状況の評価を行なった。平成29年度はアフガニスタン、パキスタン、ネパール、バングラデッシュ、インドのUHC達成状況の評価を実施。平成30年度はさらに対象国を拡大し、ミャンマーを評価した。その結果については、Lancet Global Healthなどはじめとして多くのジャーナルに掲載された。

4)各種国際会議における技術支援及び人材育成
初年度から毎年WHO総会等関連会合に向けて我が国の重要議題や比較優位生がある議題を中心に、過去の議論の経緯を分析し技術的支援をするとともに、分担研究者・研究協力者数名が政府代表団に同行し、会議における討議内容や状況、具体的な進行の様子や、我が国及び主要参加国(G7・新興国)のプレゼンスや貢献の様子を視察した。また平成30年度及び平成31年度はWHO総会等関連会合を視野に入れて第一線の専門家を交えた勉強会を複数回開催した。
なお、日本・諸外国共にUHCを含めた今後のグローバル・ヘルスの推進には人材育成が急務であることから、本研究ではタイ公衆衛生省等と協力し、ワークショップの開催並びに人材開発プログラムの策定を実施した。
結論
日本の医療制度研究および健康指標の分析から得られた知見は、書籍・論文として広く公開しており、特に高齢化が急増しているアジア諸国にとって、今後UHC達成を目指していく上で疾病構造と人口動態の変化がもたらす医療システムへの影響の対処方法を検討するための有用な資料となる。同時に、我が国が国際会議等の場でUHCをはじめとするグローバルヘルスの主要課題の議論に参画する際の基盤となる知識を提供するものでもある。

公開日・更新日

公開日
2022-07-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201905002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果は、我が国のグローバルヘルスにおけるプレゼンスと知的貢献の強化に直接資するものであり、我が国の国際保健外交戦略とも合致した内容である。主な成果物は、政府へ向けたWHO主要会合のための戦略提言書、学術論文、効果的・戦略的介入のためのマニュアル開発とワークショップ開催である。
臨床的観点からの成果
我が国がグローバルヘルス分野の重点課題としてあげるUniversal Health Coverage(UHC)に焦点を当て、我が国の医療保健制度を包括的に分析し、諸外国がUHC達成を目指すうえで有用な知見を抽出した。
ガイドライン等の開発
平成29度はUHCに焦点を当て、世界で最も高齢化が進んだ日本の医療制度を英語で包括的に取りまとめたJapan Health Systems in Transition(HiT)レポートを刊行した。
平成31年度にはGlobal Burden of Disease (GBD)の枠組みを用いて保健医療制度の現状と課題を正確に理解する上で重要視されている主要死因データの的確性について、International Journal of Public Healthで発表した。
その他行政的観点からの成果
本研究から得られた知見は、今後UHC達成を目指す各国にとって、社会経済状況や疾病構造の変化とそれが保健医療政策に及ぼす影響についての対処を講じるために有用となるとともに、我が国が国際会議等の場でUHCの議論に参画する際の基盤となる知識を提供するものである。
その他のインパクト
日本・諸外国共にUHCを含めた今後のグローバル・ヘルスの推進には人材育成が急務であることから、本研究ではタイ公衆衛生省等と協力し、ワークショップの開催並びに人材開発プログラムの策定を実施した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nomura S, Haruka S, Scott G, et al.
Population health and regional variations of disease burden in Japan, 1990–2015: a systematic subnational analysis for the Global Burden of Disease Study 2015.
The Lancet , 390 (10101) , 1521-1538  (2017)
原著論文2
Rahman SM, Rahman MM, Gilmour S et al.
Trends in, and projections of, indicators of universal health coverage in Bangladesh, 1995–2030: a Bayesian analysis of population-based household data
Lancet Glob Health , 6 (1) , e84-e94  (2018)
原著論文3
Rahman MM, Parsons A, Rahman MS 他
Progress towards universal health coverage: a comparative analysis in five South Asian countries
JAMA Intern Med , 177 (9) , 1297-1305  (2017)
原著論文4
Islam MR, Rahman MS, Islam Z 他
Inequalities in financial risk protection in Bangladesh: an assessment of universal health coverage
International Journal for Equity in Health , 16 , 59-  (2017)
原著論文5
Han SM, Rahman MM, Rahman MS 他
Progress towards universal health coverage in Myanmar: a national and subnational assessment
Lancet Glob Health , 6 (9) , e989-e997  (2018)
原著論文6
Mikkelsen L, Iburg, KM, Adair T 他
Assessing the quality of cause of death data in six high-income countries: Australia, Canada, Denmark, Germany, Japan and Switzerland
Int J Public Health , 65 , 17-28  (2020)

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201905002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,250,000円
(2)補助金確定額
4,250,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 282,275円
人件費・謝金 217,845円
旅費 1,793,951円
その他 995,929円
間接経費 960,000円
合計 4,250,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-10-27
更新日
-