日本の高齢化対策の国際発信に関する研究

文献情報

文献番号
201905001A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の高齢化対策の国際発信に関する研究
課題番号
H29-地球規模-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 尚己(東京大学 大学院医学系研究科 公共健康医学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部)
  • 相田 潤(東北大学 大学院歯学研究科)
  • 斉藤 雅茂(日本福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、日本の高齢者保健に関する施策や取り組み、政策に資するエビデンスを国際的に発信するとともに、WHOの「高齢化と健康に関する世界戦略」策定など、国際的な議論の場へ積極的に参加すること、関連する海外の研究チームや実務機関との連携を深めることで、高齢化に関する世界的な取り組みに資することを目的とする。
研究方法
目的を達成するために、以下の5つの取り組みを進めた。
1)高齢者におけるNon-communicable Disease(NCD)の社会疫学と日本の健康政策の国際的な発信(近藤克則)
2)Age and Dementia Friendly Cities に関する研究(尾島俊之)
3)震災による経済的ダメージと震災後関節炎発症の関連(相田潤)
4)高齢者を対象にした大規模縦断研究で得られた知見の国際的な発信(斉藤雅茂)
5)日本の高齢者保健施策の国際的普及及び世界的知見の国内実装
結果と考察
1 主に高齢者におけるNon-communicable Disease(NCD)の社会疫学と日本における健康政策等について,国際発信することを目的とした.これらについての文献レビューを行い出版した書籍『近藤克則編:健康の社会的決定要因-疾患・状態別「健康格差」レビュー.日本公衆衛生協会,2013』の英語での出版を企画し,Springer社から出版した。2)認知症にやさしいまち指標の検討については、日本老年学的評価研究(JAGES)の一環として収集したデータを分析した。その結果、認知症の人の自己決定の理解のある割合(理解)と、IADL低下群での幸福度が高い割合との偏相関係数は0.585 (p<0.001)、地域活動に参加すべきという割合(共生)と、IADL低下群での趣味のグループ参加割合との偏送関係数は0.341 (p=0.049)であり、それらの指標によりある程度推定できる可能性が考えられた。一方で、受援力と関連の強い項目はみられず、調査を行って把握する必要性が高いと言える。認知症にやさしいまち指標の英語版は、これらの状況を海外で把握したい場合に使用することができる。3)本研究は縦断研究である。ベースライン調査は、東日本大震災の7カ月前の2010年8月に実施した。宮城県岩沼市在住の65歳以上の全高齢者に健康や社会経済状況に関する自記式アンケートを郵送した。東日本大震災は2011年3月11日に起きた。フォローアップ調査は2013年10月に、健康や社会経済状況に関連した調査のほか、震災のダメージ(住宅被害や経済状況の変化)などについても調査を実施された。解析には操作変数法(最小二乗法)を用いた。推計には直線回帰モデルを用いた。ベースライン調査時に関節症を有していなかった2,360名を分析対象とし、そのうち、約3年の追跡調査にて4%に該当する95名が震災後関節炎を発症した。操作変数法による回帰分析の結果、主観的な経済状況の悪化および住宅被害は、関節炎発症と優位に関連していた(係数[95%信頼区間]主観的な経済状況の悪化:0.08 [0.03–0.12] 、住宅被害:0.02 [0.01–0.04])。本研究により、社会経済状況の悪化と関節炎の発症の因果関係を検証することができた。災害後の回復や、医療システムの構築についての重要性が確認された。4)文献レビューは、2020年度発刊予定の"Social Determinants of Health in Non-communicable Diseases (Kondo K. (ed), Springer)"に発表した。プレスリリースについては、2018~2019年度に発表された45本のプレスリリースを英文翻訳し、WHO Regional Office for Western Pacificなど国際機関との情報交換に活用された。5)R1年度はWHO Clinical Consortium on Healthy Ageing委員として主にsocial care評価ガイドライン作成へ参画)Global Network on Long-term Careコアメンバーへの就任、WHOアジア太平洋オフィス(WPRO)への中低所得国における地域包括ケア推進に関するコンサルテーション等を行った。
結論
昨年度までの積み上げを基盤として、今年度はさらに国際機関での活動の拡張、国際共同研究への発展、国内への情報提供等の活動を推進できた。今後は新型コロナ感染症への対応など、新たなニーズへと対応するための準備を追加した。引き続き、世界の高齢者施策の発展に資するべく継続的に活動する

公開日・更新日

公開日
2020-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201905001B
報告書区分
総合
研究課題名
日本の高齢化対策の国際発信に関する研究
課題番号
H29-地球規模-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 尚己(東京大学 大学院医学系研究科 公共健康医学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター )
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部)
  • 相田 潤(東北大学 大学院歯学研究科 )
  • 斉藤 雅茂(日本福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界保健機関(WHO)が進めるHealthy Ageingのアジェンダなど、高齢者保健に関する世界的な動きが加速している。世界で先駆けて高齢化を迎え、その対応のためのシステムをつくってきた日本からの発信を増やし、世界の施策に貢献すること、また世界的な動向から日本が学ぶべきことを理解し日本の施策へ実装する一助とすることを目的として、以下の4つの研究・実践活動を行った。
研究方法
1)地域包括ケアの効果等に関するエビデンスレビューと英語での積極的な発信:2017年にWHOが出版した「高齢者のための包括ケアガイドライン(ICOPE)」に対し、日本の経験と既存のエビデンスをもとに、より一次予防へシフトすべきと提案。日本老年学的評価研究(JAGES)に参加している自治体とのknowledge translationの枠組みを理論的に整理し、WHOから書籍刊行。日本国内の高齢者の健康格差に関するレビュー書籍をSpringer社から出版。日本公衆衛生学会でのシンポジウム「高齢化する世界:日本からの国際発信と世界からの学び」を開催。主にJAGESの知見を英語で発信するウェブサイトのリリース・運営。
2)Age and Dementia Friendly Citiesの進め方や評価指標づくり:日本のAge and Dementia Friendly Citiesに関する活動を整理して、国際発信すべき取り組みやツールを確認、台湾での国際カンファレンスでの報告、評価指標の英語版公表。
3)東日本大震災をはじめとした災害に関連する高齢者の健康の社会的決定要因に関するエビデンスづくりと国際発信:東日本大震災とソーシャル・キャピタルについて文献レビューし書籍化。東日本大震災による高齢者の経済的ダメージと震災後関節炎発症の関連の検証・公表。
4)WHOやその他の国連機関と連携した活動の推進:WHO Clinical Consortium on Healthy Ageing 等複数の委員会委員として活動。その他の国連機関、タイ政府と連携した、データに基づくコミュニティ介入型の介護予防活動の推進に向けたアセアン諸国との国際共同研究を推進。COVID-19の高齢者への影響に関する国際共同研究を開始。WHOガイドライン等からは、年齢差別への対策など世界的に重視されながら国内ではあまり議論が進んでいない事項を整理し、国内のシンポジウムや総説等で紹介。
結果と考察
本研究を通じて、国外の複数の公的文書やガイドラインにJAGESをはじめとした日本のプロジェクトの知見が紹介され、国際的な議論へ実質的な参加が進み、アジア諸国を中心とした地域介入とデータ収集の活動が始まるなどの成果を得た。海外の活動からの学びを国内へ紹介する活動も行った。
結論
タイ政府、国連機関、国内外の国際支援組織等と連携して、国際的な知識の実装や共同研究の推進を行う。特にCOVID-19への対応等と関連した国際共同研究へと発展させていく。

公開日・更新日

公開日
2020-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201905001C

収支報告書

文献番号
201905001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
3,978,281円
差引額 [(1)-(2)]
21,719円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,007円
人件費・謝金 1,430,355円
旅費 762,760円
その他 880,159円
間接経費 900,000円
合計 3,978,281円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-07-31
更新日
-