認知症に関与するマイクロバイオーム・バイオマーカー解析

文献情報

文献番号
201903021A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症に関与するマイクロバイオーム・バイオマーカー解析
課題番号
19AC5003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
山本 万里(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 西平 順(学校法人電子開発学園北海道情報大学 医療情報学部)
  • 服部 正平(早稲田大学 理工学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
135,893,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症は、後天的な脳の障害によって認知機能が低下し、患者の記憶を喪失させるのみでなく人格をも崩壊して患者の社会生活機能を喪失させてしまうことから社会問題化している。日本は世界の中でも人口に対する認知症の割合が多いことが知られている。アルツハイマー病を主とする認知機能障害疾患は、我が国においても近年の高齢化に伴って急激に増加しており、その早期発見、早期介入が重要である。そこで、未病者を含む健常者を対象に、アルツハイマー型認知症に関わる血中バイオマーカー、エピゲノムや摂取食品成分等を相互解析して、疾患に関連するバイオマーカー、認知症発症と深く関わる食品・食品成分を明らかにする。また、認知症の口腔及び腸内マイクロバイオーム研究を推進し、口腔微生物を利用した非侵襲性で高精度な認知症の新規早期発見バイオマーカーの開発を目指す。
研究方法
倫理申請の承認を得た上で北海道情報大が収集した健康な被験者474人の血清成分、サイトカイン量と認知症マーカーである血中アミロイドβ(Abeta)値を取得した。さらに各被験者の遺伝子データであるゲノムワイド関連解析(GWAS)および、エピジェネティックデータ(エピゲノム)解析を行い、項目それぞれの相関解析を行った。GWASは日本人集団に特有の疾患関連遺伝子を搭載したSNPアレイであるジェノタイピングアレイ、エピゲノムは約850,000個のヒトCpGサイトを搭載しているIlluminaEPICアレイを用いた。
 また、順天堂大チームが収集した認知症、MCI、非認知症被験者の唾液検体(合計80検体)からそのマイクロバイオームDNAの調製、その16S rRNA遺伝子データの取得、16S rRNA遺伝子データの比較解析を行った。また糞便検体の採取も開始しており、現在採取した検体を冷凍庫にて保存中であり、順次マイクロバイオーム解析に供する計画である。各種マウス実験においては、研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針を遵守し、その研究の承認を得た。各研究に使用する無菌マウス及び各種モデルマウス(Tau P302S Tgマウス、App<NL-G-F>ノックインマウス、C57BL/6Jマウス等)の入手とその飼育環境の適正化を検討、確認した。さらにC57BL/6Jマウスについては抗生剤投与によるマウス本体への影響を調べて、その投与条件がマウス本体に大きく影響しないことを確認した。
結果と考察
健常者(未病者を含む)474人の血清評価項目を用いた解析結果から、認知症と深く関わっている血中Abetaは年齢との相関を示し、血清尿素窒素、血清ミネラル、遺伝子型のApoE E4型との強い関係が認められた。Abetaとゲノムワイド関連解析(GWAS)の量的形質解析の結果、関連が予想される候補SNPsが3箇所存在した。また、エピゲノム解析により、遺伝子Yのメチル化と血中アラキドン酸量の変化の関連を見いだした。今回見いだした血清評価項目を複合的に用いることで、認知症の早期発見・評価ツール開発が可能であると期待される。
 認知症、MCI、非認知症被験者の唾液検体のマイクロバイオームの16S rRNA遺伝子データの比較解析の結果、非認知症群―認知症群間でα多様性の有意な違いが観察された。また、非認知症群―認知症群間及びMCI群―認知症群間でβ多様性の有意な違いが観察された。これらの違いに関与する菌種を異なった分類レベルで下記にまとめた。
・門レベル:スピロヘータ門が認知症患者で有意に増加。
・属レベル:5属が3群間で有意に増減。
・種レベル: 20菌種が非認知症群と比してMCIあるいは認知症で増加、3菌種が健常群と比してMCIあるいは認知症で減少しており、合計23菌種が3群間で有意に増減。以上の結果から、MCIあるいは認知症唾液菌叢は非認知症との比較において変容していることが示唆された。また過去の研究と同様な結果が得られており、MCI/認知症患者の唾液菌叢の変容は再現性があり、新規な診断唾液バイオマーカーの開発に繋がると期待される。
結論
アミロイドβの蓄積と深く関わっている血清尿素窒素、ミネラル、遺伝子型や候補SNPs3個を見いだした。今回見いだした血清評価項目を複合的に用いることで、認知症の早期早期発見・評価ツール開発への可能性を示した。認知症、MCI、非認知症被験者の唾液検体のマイクロバイオームの16S rRNA遺伝子データの比較解析を行い、被験者群間で有意に異なっているスピロヘータ門、23の細菌種を見いだした。MCI/認知症患者の唾液菌叢の変容は再現性があり、新規な診断唾液バイオマーカーの開発に繋がると期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-09-07
更新日
2023-08-03

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201903021C

収支報告書

文献番号
201903021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
169,924,000円
(2)補助金確定額
169,924,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 61,957,098円
人件費・謝金 982,676円
旅費 75,700円
その他 72,877,526円
間接経費 34,031,000円
合計 169,924,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-09-07
更新日
-