文献情報
文献番号
201903020A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病個別化予防を加速するマイクロバイオーム解析AIの開発
課題番号
19AC5002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
- 國澤 純(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター)
- 宮地 元彦(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部)
- 水口 賢司(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 AI健康・医薬研究センター)
- 窪田 直人(東京大学医学部付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
261,017,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究グループは、健常人を対象に腸内細菌叢を中心とするマイクロバイオームデータ、GWASなどのゲノム情報、食事状況や身体活動などの生活習慣、健康診断情報、動脈硬化度や筋力などの生理・体力指標、免疫因子や代謝物など生体内因子等の豊富なメタデータが登録されたデータベースの構築を進めており、平成30年度末時点で、1,200名規模の健常者データを登録している。また一部の参加者においては経時的な変化を解析するための縦断データが含まれている。さらに健常人に加え、同一プロトコルで収集した様々な疾患患者のデータ統合も進めている。
本研究では、これらの研究基盤を活用し、健常者と糖尿病患者のサンプルを対象に、腸内細菌叢の代謝機能を推定できる高機能なメタゲノム解析を実施し、健常者と糖尿病患者の腸内細菌叢の特徴をデータベースで解析が可能になるようにする。さらに未同定の実効分子を同定するための最先端メタボローム解析システムを立ち上げ、測定を開始する。これにより、糖尿病の個別化予防やヘルスケア・機能性食品開発等のためのデータベースならびに人工知能(AI)の機能強化を図る。
本研究では、これらの研究基盤を活用し、健常者と糖尿病患者のサンプルを対象に、腸内細菌叢の代謝機能を推定できる高機能なメタゲノム解析を実施し、健常者と糖尿病患者の腸内細菌叢の特徴をデータベースで解析が可能になるようにする。さらに未同定の実効分子を同定するための最先端メタボローム解析システムを立ち上げ、測定を開始する。これにより、糖尿病の個別化予防やヘルスケア・機能性食品開発等のためのデータベースならびに人工知能(AI)の機能強化を図る。
研究方法
グアニジン塩を含む保存液を用いて採取した便サンプルから、ビーズ破砕法によりDNAを抽出した。16S rRNA遺伝子のV3-V4領域をPCR法で増幅し、MiSeqを用いて塩基配列を解読し、Qiimeパイプラインを用いて菌種を同定した。また同サンプルを物理的に断片化、アダプターを付加し、NovaSeq6000を用いて塩基配列を解読した。Bowtie2を用いてヒトゲノム由来の配列を除去し、マイクロバイオームのメタゲノム情報を取得した。
得られたショットガンメタゲノム情報を格納・解析するためにサーバーに約100TBのディスクを増設した。また、系統組成解析と遺伝子機能解析を実施するために、それぞれKaijuとFMAPをサーバーにインストールした。
得られたショットガンメタゲノム情報を格納・解析するためにサーバーに約100TBのディスクを増設した。また、系統組成解析と遺伝子機能解析を実施するために、それぞれKaijuとFMAPをサーバーにインストールした。
結果と考察
本研究グループが有する各コホートから新たに約900名のサンプルを収集し、糞便の16S rRNA解析を実施した。また本サンプルに加え、共同研究先機関の協力も含め本研究グループで収集した健常者(1,990名)-糖尿病患者(138名)、縦断検体などその他(883検体)の合計3,011検体(医薬健栄研)、健常人(184名)、糖尿病患者(87名)の計271名(東京大学)のショットガンメタゲノム解析を実施した。得られたデータは2,000万リード以上もしくは7Gbp以上の精度の高いものであり、今後の解析に十分耐えられると考えられた。
得られたデータのうち、3,010検体のショットガンメタゲノムデータをサーバーに格納した。また、系統組成解析と遺伝子機能解析を実施するために、それぞれKaijuとFMAPをサーバーにインストールし、解析の環境を整備した。
本研究に参加された方の特徴として、糖尿病患者のBMI(24.9 kg/m2)は健常者(22.0 kg/m2)より有意に高かった。また、糖尿病患者の血糖値(91 vs 127 mg/dl)、HbA1c(5.5 vs 7.1 %)も健常者より有意に高値を示した。
また未同定の実効分子を同定するためのメタボローム解析システムとして、超臨界流体抽出装置、超臨界流体カラムクロマトグラフィー質量分析計(シングルMS)、液体クロマトグラフィー質量分析計(三連四重極型MS)が連動したシステムを導入し、解析を開始した。本装置では、二酸化炭素の超臨界流体を抽出溶媒として用いることで、従来の前処理法では抽出できなかった物質が抽出されると期待される。また本システムには分取システムや液体クロマトグラフィー質量分析計にも連結しており、そのままバイオアッセイスクリーニングや脂質メディエーター、胆汁酸、短鎖脂肪酸、一次代謝物の定量解析を行うことのできる構成とした。
得られたデータのうち、3,010検体のショットガンメタゲノムデータをサーバーに格納した。また、系統組成解析と遺伝子機能解析を実施するために、それぞれKaijuとFMAPをサーバーにインストールし、解析の環境を整備した。
本研究に参加された方の特徴として、糖尿病患者のBMI(24.9 kg/m2)は健常者(22.0 kg/m2)より有意に高かった。また、糖尿病患者の血糖値(91 vs 127 mg/dl)、HbA1c(5.5 vs 7.1 %)も健常者より有意に高値を示した。
また未同定の実効分子を同定するためのメタボローム解析システムとして、超臨界流体抽出装置、超臨界流体カラムクロマトグラフィー質量分析計(シングルMS)、液体クロマトグラフィー質量分析計(三連四重極型MS)が連動したシステムを導入し、解析を開始した。本装置では、二酸化炭素の超臨界流体を抽出溶媒として用いることで、従来の前処理法では抽出できなかった物質が抽出されると期待される。また本システムには分取システムや液体クロマトグラフィー質量分析計にも連結しており、そのままバイオアッセイスクリーニングや脂質メディエーター、胆汁酸、短鎖脂肪酸、一次代謝物の定量解析を行うことのできる構成とした。
結論
本研究により、ショットガンメタゲノム解析による腸内細菌の機能関連ゲノム情報の取得と高機能メタボローム解析システムの導入が行われた。今後本システムを活用し、微生物が産生する有用代謝物の分析を実施し、これまで未測定であった糖尿病予防・改善に繋がる実効因子と産生経路の同定を進める。またこれらのデータを搭載したデータベースは、諸外国と比較しても類をみない多項目(400項目)の背景情報を有する世界最大規模のマイクロバイオームデータベースとなり、これらビッグデータを独自に開発している統合解析プラットフォーム(MANTA)を用いて解析することで、糖尿病の個別化予防や機能性食品開発等のための人工知能(AI)開発へ発展させると共に、民間と連携し糖尿病予防に関連する機能性食品・ヘルスケア関連産業の開発・投資につながると期待される。
公開日・更新日
公開日
2022-09-07
更新日
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