日本の集中治療臨床情報を基盤として人工知能を用いた本邦発の重症度予測モデルの開発とパネルデータ活用環境の醸成

文献情報

文献番号
201903018A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の集中治療臨床情報を基盤として人工知能を用いた本邦発の重症度予測モデルの開発とパネルデータ活用環境の醸成
課題番号
19AC1005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
大嶽 浩司(昭和大学 医学部麻酔科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 悟(京都府立医科大学 集中治療部)
  • 飯塚 悠祐(自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科)
  • 濱上 知樹(横浜国立大学 大学院工学研究院)
  • 高木 俊介(横浜市立大学 附属病院集中治療部)
  • 山崎 眞見(横浜市立大学 データサイエンス学部)
  • 山中 竹春(横浜市立大学 医学部臨床統計学)
  • 土井 研人(東京大学 大学院医学研究科 救急科学)
  • 長谷川 高志(特定非営利活動 法人日本遠隔医療協会)
  • 野村 岳志(東京女子医科大学 集中治療部)
  • 澤 智博(帝京大学 医療情報システム研究センター)
  • 長嶺 祐介(横浜市立大学 医学部麻酔科学)
  • 松村 洋輔(千葉大学附属病院 集中治療部)
  • 大下 慎一郎(広島大学大学院 救急集中治療医学)
  • 宮田 裕章(慶応義塾大学 医療政策・管理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢化社会に向けて重症患者の確実な増加が見込まれる中、医療従事者不足が恒常化している。特に、集中治療室(ICU)における急性期医療の現場での不足が顕著である。ICUでは、複数の患者を同時に管理しながら、集中治療専門医がバイタルサインや身体所見を統合して病状を評価して重症化の予兆を見定め、適切な医療介入を行う必要がある。しかし、ICUで働く専門知識を有する医師の総数は、重症患者の増加に対応可能なほど増加が見込めず、その結果、非集中治療専門医がICUの重症患者を管理する状況が恒常化している。そこで、集中治療病床の患者を常時監視し重症化の予兆を見定める判断を自動化し、専門医の大幅な負担軽減により対応可能な患者数を増やすことを目的とする。
研究方法
① ICUデータを用いたAIアルゴリズムの検討
実際に臨床運用されている遠隔ICUシステムに蓄積された診療データを用いて、医療ユースケースに特化した機械学習技術の開発を行う。医療ユースケースを研究ビークルとして、説明性の高い機械学習技術の実現させるため、急性期医療に直接的に役立つドメイン固有機能の作り込みと、専門医が自動判断結果を理解し納得して受け入れてもらえるための説明機能を開発する。
ICUにおける重症度アルゴリズムを構築する上でのユースケースを設定する必要がある。疾患毎にアウトカム設定をおき、時系列パネルデータを用いた重症度アルゴリズムのパイロットモデルの構築を行う。
② ICUパネルデータの利活用
Tele-ICUやclosed ICUにおけるパネルデータを活用したAIモデルの開発や利活用は今後の集中治療領域におけるトピックになると思われる。本邦のICUにおいて用いられている日本集中治療医学会が主導しているJIPADとのデータ連携が必要である。遠隔ICU調査研究班が中心となり、学会の承認を受けたTele-ICUプロジェクトが始動する予定でいる。そこで関連する医療機器ベンダーも含めてICUにおけるデータ抽出、蓄積のルールを構築していく。今後、ICUのビッグデータの蓄積、利活用に向けた標準化を進めていく予定である。また、ICUにおけるパネルデータを集積してオープンデータとして活用する意義も高く、Datathon(データ利活用のセミナー)での活用も検討している。
③ 重症度アルゴリズムの構築
一般の遠隔診療と異なり,Tele-ICUでは,多数患者の中から治療介入が必要な重症患者を自動的に選別するシステムが必要である.患者の重症度や重症化の的確な予測ツールによって,Tele-ICUを行う集中治療医の適切な判断・支援を実現することが可能にするため,1)Tele-ICUにおける既存の重症度スコアリング調査・システマティックレビュー,2)詳細なテキスト解析によるTele-ICUに採用すべき新たな重症度スコアリングの評価,の大きく2段階に分け,重症度判定・重症化予測アルゴリズムの確立を行う.
結果と考察
① 集中治療室の時系列データの構造に係る調査
集中治療室で収集している診療データ(経過記録,観察指示,採血項目,指示等)は,各大学,企業毎に仕様・構造が異なっている.本年はその一部のサンプルデータを各大学,各企業から収集し,構造の課題の整理を行っている.本年度末までにこれらを元に,データクリーニング,個人情報の秘匿化などを施されてデータ利活用が可能となる共通のデータベースの設計図を構築する.
② 集中治療室のパネルデータ利用環境醸成のために係る体制構築
本研究は多施設,多企業が連携してデータ収集をする ため,各ステークホルダーが協力する体制の構築に向けた課題整理を実施した.
③ 単施設による時系列データを用いたユースケースの選定
横浜市立大学附属病院集中治療室に入室した患者の時系列のパネルデータを用いて予測モデルの構築を試みた.ある疾患群を対象として,合併症の発生有無に対し,時系列のデータを関数データへと変換し,1つの説明変数として,2群間でオフラインでの予測モデルを構築し,ROC 0.91と高い予測率を導く事が出来た.
④ 24時間後重症度予測システムの妥当性・有用性に関する実証研究
 自治医大附属さいたま医療センターにおいて,24時間後重症度予測システムの実装に向けて,ICU部門電子カルテシステム内にSOFA自動算出システムを構築した.これは手動算出モデルではあるが,精度検証を行い,良好な結果を得た.
結論
それぞれの研究班で研究が進められており,まだ最終的な結論が出せる段階ではないが,集中治療室におけるパネルデータを活用し,人工知能を用いた重症度の予測は臨床に有益な結果をもたらすことが、推測される.

公開日・更新日

公開日
2020-11-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-11-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201903018Z