Precision medicineの確立に資する統合医療データベースの利活用に関する研究

文献情報

文献番号
201903016A
報告書区分
総括
研究課題名
Precision medicineの確立に資する統合医療データベースの利活用に関する研究
課題番号
19AC1003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 直樹(国立大学法人九州大学 大学病院メディカルインフォメーションセンター)
  • 鴨打 正浩(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院 医療経営・管理学)
  • 西村 邦宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
  • 井上 創造(国立大学法人九州工業大学 大学院生命体工学研究科 )
  • 小橋 昌司(兵庫県立大学 工学研究科)
  • 清水 周次(国立大学法人九州大学 病院・国際医療部)
  • 吉本 幸司(国立大学法人鹿児島大学 医歯学総合研究科脳神経外科学)
  • 野原 康伸(国立大学法人熊本大学・大学院 先端科学研究部)
  • 大北 剛(国立大学法人九州工業大学大学院情報工学研究院 知能情報工学研究系)
  • 船越 公太(国立大学法人九州大学病院ARO次世代医療センター)
  • 竹上 未紗(国立研究開発法人国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属研究機関変更 (野原康伸)九州大学→熊本大学 

研究報告書(概要版)

研究目的
救急医療の均てん化は喫緊の課題である。現場では病院前救護から急性期医療まで多数の意思決定者が関与するため、医療の断片化が起こり、適確医療の実施が妨げられる可能性がある。現場で生じる多数の指標が患者予後に与える影響を、機械学習をベースとした人工知能(AI)を用いて予測し、結果を意思決定者間で共有できれば、予後改善を達成できる可能性がある。
本研究では、リアルワールドの統合医療データベースを活用し、1)AIを用いた解析、2)従来の統計手法と予測精度の比較、3)遠隔医療システムを介した複数の医療機関との予後予測情報の共有により、医療の質向上を継続的にもたらすシステム(多施設型Learning Healthcare System (LHS))を開発、実装する。
研究方法
本研究で解析するデータベースは、1)救急統合データベース:総務省消防庁の全国悉皆救急搬送データ(約2,200万件)とJ-ASPECT Study脳卒中データベースのマッチングデータ、2)画像、医療情報統合データベース:脳内出血患者のDPCデータ、血液検査データ、CT画像の統合データベース(国内11施設1,484例)、3)くも膜下出血に対する、疾患特異的なアウトカムアセスメントツールを用いた統合データベースである。
上記で構築したデータベースを活用して、臨床現場で発生する患者要因、施設要因、救急搬送と脳卒中医療の評価指標(プロセス指標)や現場の運用ルールの遵守率などのデータがアウトカムに与える影響を、 hierarchical multiple regression modelを用いて解析し、急性期脳梗塞及び脳内出血のアウトカム(退院時および発症90日後)の初期予測モデルを開発する。また九州における医療資源の豊富な地域と、離島が多く医療資源が乏しく、かつ遠隔医療の普及が未だ不十分な地域を選定し、テレカンファレンスの実施を目指す。
さらに、人工知能(AI)による機械学習を併用し、予測精度の向上をはかる。また、遺伝的アルゴリズムにより、変数同士の組み合わせ中予測モデルの境界表面への距離を平均化し、感度を保持して特異度を上昇させるアンサブル学習の手法、勾配ブースティングによる変数選択手法、深層学習などを用いることで従来の線形性モデルに比較して良好な予測精度の達成が期待される。
結果と考察
(結果)救急統合データベースの作成については、2013-2016年の総務省消防庁全国救急搬送データとJ-ASPECT studyにおける急性期脳卒中3病型のマッチングを行った。その結果救急搬送データ約2132万件とJ-ASPECT study急性期脳卒中3病型データ約30万件を確率論的データマッチング手法に基づいてマッチングを施行し、約16.3万件(77%)が完全マッチングとなり、統合データベースの基礎が作成された。これについて様々な因子について、解析を行っている。
脳内出血統合データベースについては約1500例の脳出血データを統合し、さらにCTにおける脳内出血の血腫量・形状・densityなどの画像特徴量を自動的に判別する、画像解析システムの開発を進めている。
上記に加え、くも膜下出血特異的なアウトカム評価ツールの日本語版を作成しており、くも膜下出血におけるPatient reported outcome判定ツールの開発を進めている。また遠隔医療および医療資源の適正配置についても、共同研究施設と協力し解析を進めている。

(考察)脳卒中、循環器疾患の救急医療は地理的要因や医療体制などの限られた医療資源のもとに至適な体制を構築する必要があるが、地域格差が大きいのが現状である。時間経過やアウトカムに関する指標をチーム内でフィードバック・共有することが効果的であることが報告されている。本研究で作成を目指すClinical Decision Support System(CDSS)の開発は、全ての医療者が救急患者情報を共有することを可能にし、脳卒中・循環器疾患の救急医療の均てん化に寄与することができると考える。
結論
脳卒中の救急医療に関する統合データベースを確立し、これを活用した脳卒中高リスク患者をより正確に診断するCDSSが開発できれば、医療者が救急情報を共有することが可能となり、至適医療体制の構築に寄与する。

公開日・更新日

公開日
2020-11-02
更新日
-

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2020-11-02
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文献番号
201903016Z