ICTを活用した卒前・卒後のシームレスな医学教育の支援方策の策定のための研究

文献情報

文献番号
201903013A
報告書区分
総括
研究課題名
ICTを活用した卒前・卒後のシームレスな医学教育の支援方策の策定のための研究
課題番号
H30-ICT-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
門田 守人(一般社団法人 日本医学会連合)
研究分担者(所属機関)
  • 伴 信太郎(愛知医科大学 医学教育センター)
  • 福井 次矢(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 田中 雄二郎(東京医科歯科大学 )
  • 木内 貴弘(東京大学医学部附属病院)
  • 高木 康(昭和大学)
  • 河北 博文(日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
11,872,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、15年にわたる臨床研修制度の実績と卒前医学教育改革を踏まえ、ICTを活用したシームレスな医学教育支援のための評価法を構築し、さらには医師国家試験のICT化、臨床研修制度の体系的評価法について基礎的検討を行った。
研究方法
①ICTを活用したシームレスな評価体系構築(田中、木内):平成30年度に開発した卒前臨床実習および卒後臨床研修の内容と評価を一貫して記録できるICTを活用した評価システムのうち、大学病院等を対象に実証的運用試験行い、明らかとなった課題の検討およびシステムの改良を行い、ICTを活用した卒後臨床研修評価システム(運用系)を開発した。
②ICTを活用した卒前の臨床実習と卒後臨床研修の支援と評価法の開発(高木):マルチメディアを活用したCBTを単なる知識や技能評価だけでなく、参加型臨床実習で修得すべき技能や態度の可視的教材としてのプレテスト、2020年実施予定のPost-CC OSCEの補助評価指標としての教材・システムを開発した。
③国家試験CBT化/共用試験の公的位置付けについての研究(伴):医師国家試験のCBT化のための教育測定学/テスト理論的観点からの準備条件、CBT化をテストベンダーに委託する場合の運営の仕方について検討した。また、共用試験CBTについては、共用試験の公的化の様々な可能性について法的側面を中心に検討した。
④臨床研修の評価体系の構築(福井):幅広い基本的な臨床能力を研修医が身に付けるためには、どのような研修プログラムが望ましいのかを検証する目的で、「継続」プログラムで研修している医師群と「弾力化」プログラムで研修している医師群の2群を対象に、英国のGMCが実施している客観的な基本的臨床能力試験を実施した。
⑤ICTを活用した医学教育コンテンツ等の開発(河北):各フェーズにマッチする医学教育コンテンツを作成するために、海外のシミュレーションコンテンツの評価やEBMの教育活用状況の分析を行い、臨床推論、EBMの応用、音声・動画を駆使した4疾患のモデルシナリオを作成した。シナリオを作成するにあたっての留意点を作成して、我が国で広く利用されるような医学教育コンテンツの作成について提言を取りまとめた。
結果と考察
①卒後臨床研修評価システムの実証的運用試験の結果明らかとなった課題に関して、検討およびシステムの改良を行い、令和2年4月から供用開始するためのICTを活用した卒後臨床研修評価システム(運用系)を開発した。
②動画や音声を活用したマルチメディア活用CBTを開発した。診療参加型臨床実習前CBTへ応用する時のCBTの課題、Post-CC OSCEの補完評価として応用する時のCBTの課題を実際にPost-CC OSCEの1課題として活用することでの評価を実施したい。さらに、卒後臨床研修修了評価としての応用についても課題の深さ・内容についても検討することで、シームレスな臨床実習・研修、さらには良質な医師の育成への活用について検討する必要がある。
③医師国家試験のCBT化には数多くのメリットがあり、その実施運営についても大きな障壁は無いことが明らかとなった。共用試験CBTの公的化に関しては,国家試験の一つとして位置付けるには,かなり高いハードルがある。
④7診療科のローテーションを必須とする「継続」プログラムに属する研修医群では、より少数の診療科のローテーションを必須とする「弾力化」プログラムに属する研修医群に比べてPLAB試験の点数が高く、合格率が有意に高かった。幅広い基本的診療能力を研修医が身に付けるためには、より幅広い診療科のローテーションを必須とする研修プログラムが望ましいことを示唆する。
⑤我が国の医学教育では、EBMの活用は十分ではなかった。また、ポルトガルの医学教育においては、教育資源が限られるという状況が、シミュレーション教育の導入の動機を与えていた。医学教育コンテンツの作成のためのシナリオ作成では、臨床推論とEBMの応用を意識し、総合診療で遭遇しやすいcommon diseaseを題材に動画・音声ファイルなどを駆使して作成し、シナリオ作成の留意点についてまとめた。作成した医学教育コンテンツの使用後のアンケート結果から、医学教育コンテンツを整えることで医療の質の向上に資する可能性が示唆された。
結論
今後、期待される成果として、EPOCによる卒前・卒後の臨床実習・研修の評価を一貫性のあるものとすることによって、卒前実習の質の均てん化を図ることができる。また、医師国家試験をCBT化することにより、より臨床現場の臨床能力に近い推論能力を問うことができるようになる。また、マルチメディアを活用した作問は、今後生涯教育にも活用できるような試験問題の作成への可能性を開くことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2020-11-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201903013Z