ICTを活用した医師に対する支援方策の策定のための研究

文献情報

文献番号
201903011A
報告書区分
総括
研究課題名
ICTを活用した医師に対する支援方策の策定のための研究
課題番号
H30-ICT-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
上家 和子((公社)日本医師会 女性医師支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 信之((公社)日本医師会 日本医師会総合政策研究機構 )
  • 亀田 真澄((公大)山陽小野田市立 山口東京理科大学 共通教育センター )
  • 浜野 久美子 ((独法) 労働者健康安全機構 関東労災病院 糖尿病・内分泌内科 )
  • 黒木 春郎 (医療法人社団 嗣業の会 外房こどもクリニック )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
9,488,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師の働き方改革が喫緊の課題となっているなか、医師の働き方支援のためにICT の活用を検討することの意義は大きい。
本研究は、医師の働き方支援のためにどのようなICTの活用方策があるかを探ることを目的として、医師の ①勤務環境の改善、②専門性の確保、③診療形態の多様化、④医師人材マッチング、の4つの視点から、ICT活用に関する実態を把握し、諸外国の情報も得て、ICT活用における課題を整理した。
研究方法
①医師の研修等におけるWEB活用全国調査
継続回収中のデータを含め、解析するとともに、好事例を収集する。
②専門領域別研修状況調査
継続回収中のデータを含め、解析するとともに、好事例を収集する。
③オンライン診療指針の習得のための教材開発
オンライン診療の適切な実施に関する指針に関するe-Learning教材についてフィージビリティを検証し、事例を盛り込んで具体化する。あわせて、遠隔診療に関する現状と課題を整理する。
④復職転職におけるICTによるマッチング支援システムの構築女性医師に限らず、定年を迎えたシニア医師、クリニックの承継医等対象とする医師の範囲の拡大についての可能性と課題、臨床のみならず、今般必置となった児童相談所をはじめ行政分野、働き方改革のなかで重要性を増す産業医等、対象とする活躍の場の拡大についての可能性と課題を検討するとともに、さらに400例程度の事例をインプットしたうえで、ICTによるマッチング支援システムの試行を行い優先重みづけの結果を検討する。
⑤海外情報把握
HIMMS20に参加し,情報を収集する。
結果と考察
(ア) 大学病院を含む臨床研修病院および医学会へはQRコードによるWEB調査として実施したが、回答が得られたうち、前者では29%、後者では51%がWEBによる回答で、その他は調査用紙郵送による回答であった。調査への回答方法自体がまずICTを利用しきれていない実態の一端を示す結果であった。臨床研修病院への調査では、電子カルテ情報へのアクセスは極めて制限的であり、制限の最大の理由として挙がったのは『セキュリティ対策』であった。医学会へのWEB参加やe-Learning推進はごく少数にとどまり、その主な理由は『セキュリティ対策』と技術的財政的支援であった。
(イ) D to Pのオンライン診療は患者の治療継続を支援する手段とはなるものの、医師の働き方としては対面診療と変わるところはなく、むしろ導入に際しての説明や確認等に時間を要しており、直接的な働き方支援とはなっていない。
(ウ) D to Dによる診療支援については、従来、専門医による高度な技術支援の可能性が大きくとりあげられてきたが、事例取材の結果、医師不足地域、専門医不足領域において専門外の医師への専門領域の医師による日常診療上の支援として効果があることが明らかとなった。
(エ) 医師の人材バンク機能については、公的に実施している女性医師バンクでのマッチング事例を踏まえ、マルチ・デバイスに対してのプッシュ通知、チャット機能を用いてのプラットフォームの構築をコーディネーター支援に用いる可能性を検討した。
(オ)新型コロナウイルス感染症対応のためHIMMS20開催は中止となった。
結論
ICTリテラシーが高まり、医療機関内でのカンファレンスや医学会の開催におけるオンライン実施が普及し、D to Dを中心とする遠隔医療システムによる日常的な地域医療の支援が拡大し、即時性のある人材マッチング・システムが構築されることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2020-11-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201903011B
報告書区分
総合
研究課題名
ICTを活用した医師に対する支援方策の策定のための研究
課題番号
H30-ICT-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
上家 和子((公社)日本医師会 女性医師支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 信之((公社)日本医師会 日本医師会総合政策研究機構)
  • 亀田 真澄((公大)山陽小野田市立 山口東京理科大学 共通教育センター)
  • 浜野 久美子((独法) 労働者健康安全機構 関東労災病院 糖尿病・内分泌内科)
  • 黒木 春郎(医療法人社団 嗣業の会 外房こどもクリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師の働き方改革が喫緊の課題となっているなか、医師の働き方支援のためにICT の活用を検討することの意義は大きい。本研究は、医師の働き方支援のためにどのようなICTの活用方策があるかを探ることを目的として、医師の ①勤務環境の改善、②専門性の確保、③診療形態の多様化、④医師人材マッチング、の4つの視点から実態を把握し、諸外国の情報も得て、課題と可能性を検討した。。
研究方法
医師の働き方に資するICT活用に関する臨床研修病院調査、専門性確保と研鑽の場である医学会におけるICT活用の実態調査、D to PおよびD to Dの遠隔医療事例の収集、医師人材マッチングの現状の把握、および関連する海外情報の収集等を行い、これらをもとに、①医師の勤務環境改善のためのICT活用、②医師の専門性確保のためのICT活用、③遠隔医療の活用による医師の働き方支援、④医師と職場のマッチングのための医師と職場の関係の特徴の分析および新たなシステムの可能性を検討した。さらに、2020年1月以降の新型コロナウイルス禍による状況の変化について概観し考察を加えた。
結果と考察
大学病院を含む臨床研修病院および医学会へはQRコードによるWEB調査として実施したが、回答が得られたうち、前者では29%、後者では51%がWEBによる回答で、その他は調査用紙郵送による回答であった。調査への回答方法自体がICTを利用しきれていない実態の一端を示す結果であった。臨床研修病院への調査では、電子カルテ情報へのアクセスは極めて制限的であり、制限の最大の理由として挙がったのは『セキュリティ対策』であった。この時点では、医学会へのWEB参加やe-Learning推進はごく少数にとどまり、その主な理由も『セキュリティ対策』と技術的財政的支援であった。なお、2020年2月以降の新型コロナウイルス感染症対策として、多くの学会、各種会議や大学の講義等もWEBによるオンデマンドまたはWEB会議形式で行われ始めた。この急速な変化を一過性と捉えず、効果とデメリットを検証し、新たなICT活用につないでいくべきである。

D to Pのオンライン診療は医師の働き方としては対面診療と変わらず、むしろ短期的には導入に際しての説明や確認等に時間を要し、直接的な働き方支援とはなっていないことが明らかとなった。しかし、アプリやデバイスの開発も進み、患者の治療継続や治療への参加意識を支援する手段となる可能性も示され、長期的には医療支援となり得ると考えられる。なお、2020年2月以降の新型コロナウイルス感染症対策の一環として4月中旬以降、時限的・特例的に実施対象が拡大された。これについてもオンライン診療においての課題と効果を医師の働き方の観点からも検証すべきである。

D to Dによる診療支援は、事例取材の結果、医師不足地域、専門医不足領域において日常診療上の支援として効果があることが明らかとなった。あわせて、D to DへのSNS利用について、セキュリティの観点から情報を整理した。

医師の人材バンク機能については、産休・育休による欠員の補充やシニア人材の活用など需要は高いが、現在は、社会保障上の資源である医業収益が人材紹介手数料の名目でビジネス分野に流出している実態がある。公的にコーディネーターによるマッチングをきめ細かく行うために、マルチ・デバイスに対してのプッシュ通知、チャット機能を用いてのプラットフォームの構築を提案した。

諸外国の情報も収集したが、Personal Health Recordの連携共有は医療ビジネスとして広く展開されているものの、医師の働き方支援においては電子カルテ上への診療ガイドライン搭載等の細かな工夫等にとどまっていた。
結論
新型コロナウイルス感染症発生により、日本の社会全体のICT活用の状況が激変している。セキュリティへの懸念や財源の問題から、医師の働き方支援としてのICT活用もこれまでは制限的であった。新型コロナ禍下の経験も活かして、医療機関内でのカンファレンスや医学会の開催におけるオンライン実施が普及し、D to Dを中心とする遠隔医療システムによる日常的な地域医療の支援が拡大し、即時性のある人材マッチング・システムが構築される等、医師の働き方を支援するICTの活用が一層進むことを期待する。

公開日・更新日

公開日
2020-11-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201903011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本遠隔医療学会等へ発表済みである。
臨床的観点からの成果
各地の医師会に紹介したほか、日本遠隔医療学会等からの問い合わせに対し、具体的な成果を紹介したうえで意見交換を行ってきたところ。日常臨床で広く参照される医学書院刊「今日の治療指針」にも執筆し、オンライン診療の指針の広報に努めた。
ガイドライン等の開発
日本医師会「オンライン診療研修・調査事業」(厚生労働省委託)を通じて、オンライン診療の適切な実施に関する指針(厚生労働省2020年3月)の習得にかかる教材に使用されている。
その他行政的観点からの成果
D to Dの地域医療支援方策を中心に新潟県南魚沼市ほか各地の自治体に紹介し、検討会等での資料とされている。
その他のインパクト
オンライン診療研究会にて紹介。
わが国の臨床現場において広く参照されている医学書院発行「今日の治療指針2021」に本研究の成果の一部について執筆した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
日本遠隔医療学会へ3回内容を加えつつ報告している。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
オンライン診療の適切な実施に関する指針(厚生労働省2020年3月)のeLearning教材の一部として使用されている。
その他成果(普及・啓発活動)
4件
三重県医師会、横浜市医師会、日本登山医学会、九州大学大学院での研修材料として使用している。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-29
更新日
2024-05-23

収支報告書

文献番号
201903011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,488,000円
(2)補助金確定額
8,786,195円
差引額 [(1)-(2)]
701,805円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,195,942円
人件費・謝金 1,432,164円
旅費 596,097円
その他 5,561,772円
間接経費 0円
合計 8,785,975円

備考

備考
海外学会への参加が新型コロナウイルス感染症のため中止となったため。

公開日・更新日

公開日
2024-05-22
更新日
-