文献情報
文献番号
201901014A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模データを用いた漢方製剤のアウトカム評価および費用分析に関する研究
課題番号
19AA2001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
康永 秀生(東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
研究分担者(所属機関)
- 小川 純人(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、漢方製剤に関する基礎研究・臨床研究は少しずつ増加しており、その効果に関するエビデンスは徐々に増えているものの、いまだ十分とは言えない。後向きの大規模データを用いることにより、多くの症例数を用いた効果比較研究、費用分析、プラクティス・パターン分析を実施可能であり、それらは漢方診療の実態把握やその改善に向けて重要である。
研究方法
本研究では、既存の大規模データベースであるDPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースおよび株式会社JMDCが提供するJMDC Claims Databaseを用いた分析を行った。
研究デザインはすべて後向き観察研究であり、テーマごとにデータベースから該当症例を抽出した。
本年度は、漢方製剤のアウトカム評価及び費用分析として、(i) 薬剤性肺障害の発症リスク、および(ii)カルボプラチン併用タキサン系抗癌剤の末梢神経障害に対する牛車腎気丸の効果と医療費について分析した。また、漢方製剤に関する医療現場におけるプラクティス・パターン分析として、(i)外来における漢方製剤処方の網羅的な分析、(ii)インフルエンザに対する漢方製剤、(iii)妊婦の便秘に対する漢方製剤、(iv) 慢性呼吸器肺疾患を有する入院患者に対する漢方製剤、について分析を実施した。
研究デザインはすべて後向き観察研究であり、テーマごとにデータベースから該当症例を抽出した。
本年度は、漢方製剤のアウトカム評価及び費用分析として、(i) 薬剤性肺障害の発症リスク、および(ii)カルボプラチン併用タキサン系抗癌剤の末梢神経障害に対する牛車腎気丸の効果と医療費について分析した。また、漢方製剤に関する医療現場におけるプラクティス・パターン分析として、(i)外来における漢方製剤処方の網羅的な分析、(ii)インフルエンザに対する漢方製剤、(iii)妊婦の便秘に対する漢方製剤、(iv) 慢性呼吸器肺疾患を有する入院患者に対する漢方製剤、について分析を実施した。
結果と考察
薬剤性肺障害の発症リスクについては、期間中に薬剤性肺障害で入院した患者1541人を抽出した。各症例と性・年齢・主病名が一致する対照群をコホート内からリスクセットサンプリングにより5,677人抽出した。症例群と対照群の使用率の比が4を超える薬剤は、EGFR阻害薬とⅢ群抗不整脈薬の2つであった。
カルボプラチン併用のタキサン系抗抗癌剤の末梢神経障害に対する牛車腎気丸の効果と医療費については、牛車腎気丸の予防投与の有意な効果は明らかにされなかった。医療費についても投与群と対照群の間で有意な差は認められなかった。
外来における漢方製剤処方の網羅的な分析においては、外来診療における各漢方製剤の処方状況および各漢方製剤の処方を受けている患者の背景を明らかにした。
インフルエンザに対する漢方製剤の分析においては、インフルエンザと診断された患者1,853,405人のうち、1,731,407人(93.4%)に抗インフルエンザ薬が使用されていた。また、75,539人(4.1%)に麻黄湯が使用されていた。
妊婦の便秘に対する漢方薬・西洋薬の使用状況の分析では、便秘の診断名が記録された妊婦86,623人のうち、便秘薬の使用なしは30251人(34.9%)、漢方薬のみ使用は1,913人(2.2%)、西洋薬のみ使用は52,668人(60.8%)、漢方・西洋薬両方使用は1,791人(2.1%)であった。
慢性呼吸器肺疾患を有する入院患者に対する漢方製剤の分析では、大建中湯、補中益気湯、芍薬甘草湯、六君子湯の4剤が上位を占めた。COPDの患者に対して使用されることの多い抗コリン薬の副作用である便秘などを緩和する目的で、これらの製剤が使用されている可能性が推察される。
カルボプラチン併用のタキサン系抗抗癌剤の末梢神経障害に対する牛車腎気丸の効果と医療費については、牛車腎気丸の予防投与の有意な効果は明らかにされなかった。医療費についても投与群と対照群の間で有意な差は認められなかった。
外来における漢方製剤処方の網羅的な分析においては、外来診療における各漢方製剤の処方状況および各漢方製剤の処方を受けている患者の背景を明らかにした。
インフルエンザに対する漢方製剤の分析においては、インフルエンザと診断された患者1,853,405人のうち、1,731,407人(93.4%)に抗インフルエンザ薬が使用されていた。また、75,539人(4.1%)に麻黄湯が使用されていた。
妊婦の便秘に対する漢方薬・西洋薬の使用状況の分析では、便秘の診断名が記録された妊婦86,623人のうち、便秘薬の使用なしは30251人(34.9%)、漢方薬のみ使用は1,913人(2.2%)、西洋薬のみ使用は52,668人(60.8%)、漢方・西洋薬両方使用は1,791人(2.1%)であった。
慢性呼吸器肺疾患を有する入院患者に対する漢方製剤の分析では、大建中湯、補中益気湯、芍薬甘草湯、六君子湯の4剤が上位を占めた。COPDの患者に対して使用されることの多い抗コリン薬の副作用である便秘などを緩和する目的で、これらの製剤が使用されている可能性が推察される。
結論
大規模データベース研究という新たな手法を用いて漢方製剤のエビデンスの確立に貢献するとともに、入院医療等で用いられる漢方製剤の有効性や費用を明らかにすることにより、日常臨床における漢方製剤の役割やその位置づけを明確にすることができる。
今後、データベース研究から得られた知見を、さらなる介入研究を行うための資料として利用でき、漢方製剤の臨床試験に橋渡しすることによりさらにレベルの高いエビデンスの創出に貢献しうる。
今後、データベース研究から得られた知見を、さらなる介入研究を行うための資料として利用でき、漢方製剤の臨床試験に橋渡しすることによりさらにレベルの高いエビデンスの創出に貢献しうる。
公開日・更新日
公開日
2020-10-19
更新日
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