文献情報
文献番号
201901008A
報告書区分
総括
研究課題名
診断群分類を用いた急性期等の入院医療の評価とデータベース利活用に関する研究
課題番号
H30-政策-指定-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
- 石川ベンジャミン光一(国際医療福祉大学・大学院医学研究科)
- 今中 雄一(京都大学・大学院医学研究科)
- 阿南 誠(川崎医療福祉大学・医療福祉マネジメント学部)
- 康永 秀生(東京大学・大学院医学系研究科・)
- 藤森 研司(東北大学・大学院医学系研究科)
- 池田 俊也(国際医療福祉大学・医学部公衆衛生学)
- 松田 晋哉(産業医科大学・医学部公衆衛生学)
- 堀口 裕正(国立病院機構本部・総合研究センター診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
32,516,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的を以下の3つとした。
① 適切な診断群分類作成のための研究
② DPCデータの第三者提供に関する研究
③ DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究
① 適切な診断群分類作成のための研究
② DPCデータの第三者提供に関する研究
③ DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究
研究方法
厚生労働省DPC調査データを医療機関と個別に守秘義務契約を結んだ上で収集し、分析資料とした。
結果と考察
①適切な診断群分類作成のための研究
令和2年度のDPC分類改定に伴う修正や平成31年度の研究結果を基に令和2年度のテキスト改定案を作成した。
②DPCデータの第三者提供に関する研究
DPC制度の適正運用とDPC データ活用促進のためのセミナーを病院関係者および地方行政担当者向けに計8回のセミナー実施し、述べ600人程度の受講者があった。研究班の研究成果の報告に関する講義とパソコン用いた実習形式の演習を行った。DPCデータ分析の普及、啓発のために、詳細な薬効分類等を含むレセプト電算コードマスター、手術コードマスター等の分析用マスターを整備し、配布した。
③DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究
DPC調査対象病院の側から見た介護施設・福祉施設からの搬送事例の分析では、介護施設・福祉施設からの入院患者の主たる傷病は誤嚥性肺炎、肺炎・急性気管支炎・急性細気管支炎、股関節大腿近位骨折、腎臓または尿路の感染症、心不全、脳梗塞のような急性疾患が主体であり、約20%が死亡退院となるが、軽快した場合、その多くは介護施設に再入所していた。
特定集中治療室の評価に関する研究では、多くの医療機関において手術後のICU利用が多く、入室時のSOFAスコアは、非手術例と比較して低い傾向がみられた。ICU入室時のSOFAスコアは医療機関によって差が大きく、患者数の多い医療機関において、入室時のICUスコアが低い傾向がみられた。
急性期病院における認知症ケア加算導入の効果についての分析では、多変量解析の結果、認知症併存ありの場合は、ない場合と比較して、在院日数の偏回帰係数1.45(95%信頼区間CI 0.69-2.21)であった。院内死亡、院内骨折、再入院とは有意な関連はみられなかった。急性期病院における認知症併存が高齢者の大腿骨頸部骨折後のアウトカムに関連していることが明らかとなった。
子宮頸部の悪性腫瘍の現状分析では、処置や化学療法において使用されているレジメンは,治療ガイドラインを遵守していた。有害食物反応によるアナフィラキシーショックの原因食物に関する分析では、原因食物が明らかになっているものでは、特定原材料が多く、卵、小麦、乳、落花生、そばの順に多かった。特定原材料以外では、魚介類とナッツ類が4年間で10件以上認められた。
病院輸血管理体制の構築がアルブミン製剤の適正使用の促進に与える影響に関する分析では、血液製剤の適正使用基準を導入している病院輸血管理部門を設置している病院に入院した患者は、出血、敗血症、熱傷いずれの病態においてもアルブミン製剤の使用の調整オッズ比が約30%少ない一方、当該基準の導入に伴い医療の質が経時的に低下するという傾向は認められなかった。
DPCデータを活用した医療の質と効率性・医療費の評価では、全ECMO症例の施設症例数の増加と呼吸ECMO症例の院内死亡率の低下との関連、歯科医師による術前口腔管理は、開胸・胸腔鏡下食道切除術後の誤嚥性肺炎の予防および胸腔鏡下食道切除術後の医療費削減と関連が示され、急性骨髄性白血病(AML)/骨髄異形成症候群(MDS)患者への化学療法において、経口第一世代アゾール薬と比較し経口ボリコナゾール処方は点滴抗真菌薬使用割合を有意に減少させた。また、小児・思春期若年成人世代の化学療法においては、成人領域と比較してガイドラインの遵守率は低く、中度・高度催吐性リスクの抗がん剤治療であっても同様に低い傾向だった。
DPCデータを用いた臨床疫学研究では、DPCデータベースを用いた臨床疫学研究およびヘルスサービスリサーチの原著論文が45編、本分担研究チームから英文誌に掲載(または受理)された。
医療の評価手法に関する検討では、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)において、抗TNFα製剤と内視鏡的バルーン拡張術を併用することによって、狭窄の再発リスクを有意に下げる可能性があることが示唆された。また、神経性食思不振症の死亡率において、男性、年齢,理想体重に対する実体重の割合,合併症,病院種別,カテコラミンの使用が独立した危険因子であった
令和2年度のDPC分類改定に伴う修正や平成31年度の研究結果を基に令和2年度のテキスト改定案を作成した。
②DPCデータの第三者提供に関する研究
DPC制度の適正運用とDPC データ活用促進のためのセミナーを病院関係者および地方行政担当者向けに計8回のセミナー実施し、述べ600人程度の受講者があった。研究班の研究成果の報告に関する講義とパソコン用いた実習形式の演習を行った。DPCデータ分析の普及、啓発のために、詳細な薬効分類等を含むレセプト電算コードマスター、手術コードマスター等の分析用マスターを整備し、配布した。
③DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究
DPC調査対象病院の側から見た介護施設・福祉施設からの搬送事例の分析では、介護施設・福祉施設からの入院患者の主たる傷病は誤嚥性肺炎、肺炎・急性気管支炎・急性細気管支炎、股関節大腿近位骨折、腎臓または尿路の感染症、心不全、脳梗塞のような急性疾患が主体であり、約20%が死亡退院となるが、軽快した場合、その多くは介護施設に再入所していた。
特定集中治療室の評価に関する研究では、多くの医療機関において手術後のICU利用が多く、入室時のSOFAスコアは、非手術例と比較して低い傾向がみられた。ICU入室時のSOFAスコアは医療機関によって差が大きく、患者数の多い医療機関において、入室時のICUスコアが低い傾向がみられた。
急性期病院における認知症ケア加算導入の効果についての分析では、多変量解析の結果、認知症併存ありの場合は、ない場合と比較して、在院日数の偏回帰係数1.45(95%信頼区間CI 0.69-2.21)であった。院内死亡、院内骨折、再入院とは有意な関連はみられなかった。急性期病院における認知症併存が高齢者の大腿骨頸部骨折後のアウトカムに関連していることが明らかとなった。
子宮頸部の悪性腫瘍の現状分析では、処置や化学療法において使用されているレジメンは,治療ガイドラインを遵守していた。有害食物反応によるアナフィラキシーショックの原因食物に関する分析では、原因食物が明らかになっているものでは、特定原材料が多く、卵、小麦、乳、落花生、そばの順に多かった。特定原材料以外では、魚介類とナッツ類が4年間で10件以上認められた。
病院輸血管理体制の構築がアルブミン製剤の適正使用の促進に与える影響に関する分析では、血液製剤の適正使用基準を導入している病院輸血管理部門を設置している病院に入院した患者は、出血、敗血症、熱傷いずれの病態においてもアルブミン製剤の使用の調整オッズ比が約30%少ない一方、当該基準の導入に伴い医療の質が経時的に低下するという傾向は認められなかった。
DPCデータを活用した医療の質と効率性・医療費の評価では、全ECMO症例の施設症例数の増加と呼吸ECMO症例の院内死亡率の低下との関連、歯科医師による術前口腔管理は、開胸・胸腔鏡下食道切除術後の誤嚥性肺炎の予防および胸腔鏡下食道切除術後の医療費削減と関連が示され、急性骨髄性白血病(AML)/骨髄異形成症候群(MDS)患者への化学療法において、経口第一世代アゾール薬と比較し経口ボリコナゾール処方は点滴抗真菌薬使用割合を有意に減少させた。また、小児・思春期若年成人世代の化学療法においては、成人領域と比較してガイドラインの遵守率は低く、中度・高度催吐性リスクの抗がん剤治療であっても同様に低い傾向だった。
DPCデータを用いた臨床疫学研究では、DPCデータベースを用いた臨床疫学研究およびヘルスサービスリサーチの原著論文が45編、本分担研究チームから英文誌に掲載(または受理)された。
医療の評価手法に関する検討では、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)において、抗TNFα製剤と内視鏡的バルーン拡張術を併用することによって、狭窄の再発リスクを有意に下げる可能性があることが示唆された。また、神経性食思不振症の死亡率において、男性、年齢,理想体重に対する実体重の割合,合併症,病院種別,カテコラミンの使用が独立した危険因子であった
結論
本研究は、DPC診断群分類の今後の維持・整備手法を明らかとし、令和2年度以降の改定手法の基盤を提供するとともに、DPC包括評価の妥当性の確保につながる分析と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2020-10-19
更新日
-