2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等に向けた化学テロ等重大事案への準備・対応に関する研究

文献情報

文献番号
201826023A
報告書区分
総括
研究課題名
2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等に向けた化学テロ等重大事案への準備・対応に関する研究
課題番号
H30-健危-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院)
  • 本間 正人(国立大学法人鳥取大学)
  • 水谷 太郎(茨城県西部医療機構・公益財団法人日本中毒情報センター)
  • 吉岡 敏治(公益財団法人日本中毒情報センター・森ノ宮医療大学)
  • 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、化学テロ発生時の多数傷病者対応や、必要医薬品の種類・量の再検討、既存の化学災害・テロ対応の資料の再整理、緊急時用医薬品の国家備蓄等の配送スキームの整理等を行い、我が国における化学テロ対応体制の向上を図ることに加え、平成29年度先行研究で抽出された新規課題の整理と具体的な対応策の検討を行うことである。
研究方法
①化学テロ等発生時の多数傷病者対応(病院前)について
先行研究での課題に基づき、世界における最新の知見を踏まえ、安全性を担保しつつ、被害者の救命率を最大化する実効性のある活動の在り方の提言を、我が国の国情に合わせた内容で作成した。
②化学テロ等発生時の多数傷病者対応(病院内)について
各種訓練から医療機関の受け入れの課題を抽出の上、有識者WGを開催し、医療機関における「3次救急・災害医療体制が整備された救急医療機関における化学テロ対応標準初動マニュアル改定案」を作成した。
③化学テロ発生時の必要薬剤の種類・量の再検討について
先行研究で未回答の都内災害拠点病院及び都外主要競技会場近隣の災害拠点病院等への解毒剤の備蓄に関するアンケート調査を実施し、在庫量の現状を確認した。その上でサリンテロを想定した被害シナリオを作成した。
④化学災害・化学テロ対応に関する資料の収集と新たなテロ対策の構築について
既存の各種化学剤に関するデータを更新するとともに、発災時に使用できる概要版を作成した。神経剤・びらん剤の対応の基本をポスターとして作成し、オリパラ会場近隣の災害拠点病院等に配布し内容・使用感等についてのアンケートを実施した。
⑤国家備蓄及び流通在庫の配送スキーム(ロジスティック面含む)について
(1)東京都23区以外の開催地域における戦略的配備案と搬送スキームの考案、(2)解毒剤投与の時間目標を達成するための具体的な指揮命令系統・搬送ツールの検討、(3)作成した搬送スキームに基づく訓練シナリオを作成し、解毒剤配備と配送時の連携体制を検討した。
結果と考察
①化学テロ等発生時の多数傷病者対応(病院前)について
「化学剤の特性」「事案の想起」「避難・救助」「多様な要救助者対応」「被災者との良好なコミュニケーション」「除染」「防護と検知」「ゾーニング」「現場医療のあり方」「犯罪・テロとしての特性」の10項目について、『化学テロ等発生時の多数傷病者対応(病院前)に関する提言2018』をまとめた。
②化学テロ等発生時の多数傷病者対応(病院内)について
机上訓練から、医療機関における除染能力の脆弱性、ゲートコントロール前の大行列、除染前トリアージ判断の困難、除染前トリアージ結果を除染エリア担当者への伝達が困難、水除染前の大行列、防護衣の数の不足、交代要員の不足(防護服の不足)、病院に入るまでに時間がかかり重症患者の救命困難があげられた。この結果と欧米の最新の知見をふまえ、初動マニュアルの改訂を行った。
③化学テロ発生時の必要薬剤の種類・量の再検討について
アンケート調査の結果、屋外/屋内大型競技会場でのサリン散布シナリオにおいて、各施設における解毒剤の保有数量は初期および継続投与量に不足が生じる可能性があると考えられた。
④化学災害・化学テロ対応に関する資料の収集と新たなテロ対策の構築について
8類型25種類の古典的化学剤と、フェンタニル、リシン、ノビチョクのデータベースを作成した。医療機関向けポスターについては情報提供に関する一定の有用性が確認された。
⑤国家備蓄及び流通在庫の配送スキーム(ロジスティック面含む)について
解毒剤の2時間以内の投与を目標に掲げ、「二つの矢構想」を用いて搬送を行う戦略的搬送スキームとして、国家備蓄を開催都道県に事前に分配配備し、さらにその一部を特定の医療機関等に初期配置する戦略的配置を考案した。また、これを踏まえた搬送スキームの流れと訓練用フロー図を作成した。
結論
本研究により、現場対応者の安全を確保とより多くの危機的な被災者の救命を両立させる観点から、効率的・現実的な対応に向けた提言がなされた。今後、現場での解毒薬投与に向けた自動注射器の準備や、現場における除染の即応性・迅速性の向上について、オリパラ前に早急に体制整備を検討する必要がある。
また、各種化学剤に関するデータベースの改訂・新規策定により、最新知見に基づいた対応が行える形に再整備された。今後はCBRNEテロ等における包括的な医療対応について、現場の幅広い医療従事者が迅速・簡便に活用出来る形に整理する必要がある。
更に、現状の解毒薬の保有状況を鑑み、国家備蓄の開催都道県への事前配置を含めた、戦略的配備・搬送スキーム案を策定した。今後は科学的知見に基づいたテロ対応シミュレーションモデル等により、様々な発生状況・場所を想定した配置・配送の最適化の検討を行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2020-04-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-04-01
更新日
2020-11-09

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201826023C

収支報告書

文献番号
201826023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 457,535円
人件費・謝金 4,053,528円
旅費 1,501,670円
その他 1,680,283円
間接経費 2,307,000円
合計 10,000,016円

備考

備考
自己資金16円

公開日・更新日

公開日
2020-03-13
更新日
-