文献情報
文献番号
201826018A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時において高齢者・障害者等の特に配慮が必要となる者に対して適切な医療・福祉サービスを提供するための調査研究
課題番号
H30-健危-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 原岡 智子(活水女子大学 看護学部看護学科)
- 横山 由香里(日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科)
- 島崎 敢(国立研究開学法人防災科学技術研究所)
- 梅山 吾郎(SOMPOリスクマネジメント株式会社 BCMコンサルティング部社会公共グループ)
- 高杉 友(SOMPOリスクマネジメント株式会社 リスクマネジメント事業本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
災害発生直後の行政機能が十分に機能していない状況下で、医療・福祉サービス提供に関わった種々の機関による情報共有から相互の連携を含めて支援提供までの対応に関する課題を抽出し、今後の対応のための基礎資料及び提言をまとめることである。
研究方法
(1) ヒアリング調査:熊本地震において要配慮者を支援した種々の機関を対象に、支援の内容や経緯、発災前後の取り組み等に関してヒアリング調査を行い、課題の抽出等を行った。(2) 資料調査と基礎資料のとりまとめ:要配慮者の対象者については、都と県、政令指定都市のWeb上において検索し、文献収集は、国立情報学研究所論文情報ナビゲータ(CiNii)と医学中央雑誌Web版、Google Scholarのデータベースについて検索した。また、災害時要配慮者の全体像に関する基礎資料として、災害時要配慮者のそれぞれの種類ごとに全国の既存統計から人口1万人当たりの災害時要配慮者数を算定した。また全国の中でも高齢者割合の高い秋田県と、高齢者割合の低い東京都中央区の年齢別人口構成の場合の算定も行った。(3) 提言のとりまとめ:ヒアリング調査や資料調査等で収集された情報等をもとにして、研究班内で検討を進め、今後の災害時要配慮者への適切な支援等のための課題と提言をまとめた。
結果と考察
(1) ヒアリング調査
・保健医療・福祉サービスの情報共有体制
「保健医療・福祉サービスの情報共有体制の課題」、「行政機関職員のマンパワー不足」、「他の団体・住民等との連携の重要性」が抽出された。これらの課題を解決するためには、民間事業者、関係団体、地域住民等と行政機関が連携した支援方法を検討する必要がある。
・多様な避難形態
要配慮者が、車中泊やテント、倒壊のおそれのある自宅などを含め、指定避難所以外の場所に避難していたことが確認された。一般の指定避難所に関しては、バリアフリーの不十分さや、社会の理解不足など、多数の課題が挙げられたが、同時に、一般避難所での工夫や、近隣住民の協力によって要配慮者への対応力を上げていくことができる可能性があることに複数の関係者が言及した。
・平時の取り組みと発災時の支援との関係
要配慮者に関する情報共有の課題、平時の関係性が災害対応に活かされた例、要配慮者も福祉避難所ではなく一般避難所を利用したほうが良い場合があること、社会全体の障害者に対する理解不足が要配慮者の一般避難所利用の障壁になっていることなどが明らかとなった。
(2) 資料調査と基礎資料のとりまとめ
・資料調査
災害時要配慮者の概念について、多くの自治体において、高齢者、乳幼児、妊産婦、肢体不自由者、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、精神障害者、内部障害者、外国人等が共通していた。災害時要配慮者に関連する文献資料としては、整備していた対応体制、実際の災害時の対応状況、情報共有体制の現状把握と課題に関するものなどがみられた。
・災害時要配慮者数
全国平均でみた場合の人口1万人当たりの災害時要配慮者数は、75歳以上の後期高齢者1,284人、乳児79人、身体障害者402人、要介護(要支援)認定者497人、通院者3,786人、透析患者26人、在宅酸素療法13人などとなった。地域によって人口1万人当たりの人数の高低があると考えられるが、災害発生直後の十分な情報が把握できない時期においては、例えば人口3万人の町ではまずはこの人数の3倍の災害時要配慮者がいると考えて対応を進める必要があろう。
(3) 提言のとりまとめ
研究で抽出された課題等に対応するため、以下の6項目を提言したい。① 福祉避難所だけではなく、一般避難所への避難や在宅避難を含めた支援、② 避難所運営担当者(自治体職員や地区組織役員等)への多様な配慮への理解の推進、③ 中程度の要配慮者や、自ら支援を求めない要配慮者への対応、④ 情報通信技術(ICT)の活用と訪問等を組み合わせた情報収集・共有、⑤ 要配慮被災者への多様な情報提供手段の活用、⑥ 自助・互助・外助・民助・公助を総動員した平常時からの備えや災害時の対応である。
・保健医療・福祉サービスの情報共有体制
「保健医療・福祉サービスの情報共有体制の課題」、「行政機関職員のマンパワー不足」、「他の団体・住民等との連携の重要性」が抽出された。これらの課題を解決するためには、民間事業者、関係団体、地域住民等と行政機関が連携した支援方法を検討する必要がある。
・多様な避難形態
要配慮者が、車中泊やテント、倒壊のおそれのある自宅などを含め、指定避難所以外の場所に避難していたことが確認された。一般の指定避難所に関しては、バリアフリーの不十分さや、社会の理解不足など、多数の課題が挙げられたが、同時に、一般避難所での工夫や、近隣住民の協力によって要配慮者への対応力を上げていくことができる可能性があることに複数の関係者が言及した。
・平時の取り組みと発災時の支援との関係
要配慮者に関する情報共有の課題、平時の関係性が災害対応に活かされた例、要配慮者も福祉避難所ではなく一般避難所を利用したほうが良い場合があること、社会全体の障害者に対する理解不足が要配慮者の一般避難所利用の障壁になっていることなどが明らかとなった。
(2) 資料調査と基礎資料のとりまとめ
・資料調査
災害時要配慮者の概念について、多くの自治体において、高齢者、乳幼児、妊産婦、肢体不自由者、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、精神障害者、内部障害者、外国人等が共通していた。災害時要配慮者に関連する文献資料としては、整備していた対応体制、実際の災害時の対応状況、情報共有体制の現状把握と課題に関するものなどがみられた。
・災害時要配慮者数
全国平均でみた場合の人口1万人当たりの災害時要配慮者数は、75歳以上の後期高齢者1,284人、乳児79人、身体障害者402人、要介護(要支援)認定者497人、通院者3,786人、透析患者26人、在宅酸素療法13人などとなった。地域によって人口1万人当たりの人数の高低があると考えられるが、災害発生直後の十分な情報が把握できない時期においては、例えば人口3万人の町ではまずはこの人数の3倍の災害時要配慮者がいると考えて対応を進める必要があろう。
(3) 提言のとりまとめ
研究で抽出された課題等に対応するため、以下の6項目を提言したい。① 福祉避難所だけではなく、一般避難所への避難や在宅避難を含めた支援、② 避難所運営担当者(自治体職員や地区組織役員等)への多様な配慮への理解の推進、③ 中程度の要配慮者や、自ら支援を求めない要配慮者への対応、④ 情報通信技術(ICT)の活用と訪問等を組み合わせた情報収集・共有、⑤ 要配慮被災者への多様な情報提供手段の活用、⑥ 自助・互助・外助・民助・公助を総動員した平常時からの備えや災害時の対応である。
結論
災害初期は必要な物資が届かず、災害時要配慮者のそれぞれの特性に応じた支援が難しい状況であり、情報共有も困難であった。多様な災害時要配慮者について平常時から一般の人の理解を高め、必要に応じて一般避難所への避難も可能としておくこと、ICTと訪問等の併用による情報収集や提供、自助・互助・外助・民助・公助を総動員した平常時からの備えや災害時の対応が重要である。また、地域内の災害時要配慮者の人数を念頭に置いた上での対応を進める必要がある。
公開日・更新日
公開日
2019-10-07
更新日
-