水道事業の流域連携の推進に伴う水供給システムにおける生物障害対策の強化に関する研究

文献情報

文献番号
201826016A
報告書区分
総括
研究課題名
水道事業の流域連携の推進に伴う水供給システムにおける生物障害対策の強化に関する研究
課題番号
H30-健危-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 道宏(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 修(東北大学 大学院工学研究科)
  • 柳橋 泰生(福岡大学 工学部)
  • 藤本 尚志(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 高梨 啓和(鹿児島大学 学術研究院理工学域工学系)
  • 下ヶ橋 雅樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 越後 信哉(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 清水 和哉(筑波大学 生命環境系)
  • 浅田 安廣(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,776,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では「水道事業の流域連携の推進に伴う水供給システムにおける生物障害対策の強化」に資する成果を得ることを目指し,流域での障害生物の発生状況やそのメカニズムの把握,流域スケールでの生物障害発生の広域モニタリングシステムの開発,流域連携による水供給システムの生物障害適応性の強化方策の例示に関連する研究を実施した。
研究方法
ダム湖内のクロロフィルa濃度について,予測対象日の前7日間の気象データおよび1か月前の栄養塩濃度を説明変数として階層ベイズモデルを用いて予測モデルの構築を行った。
日本での過去のカビ臭発生事例調査について,平成5年から平成30年の約25年間に発行された文献やインターネット調査と中国での湖沼水質改善への対策について文献調査を行った。
琵琶湖を対象として藍藻類の単離を行い,遺伝子解析を行った。
16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンシングを用いて,浄水場処理工程水の微生物相を解析した。
全国の水道原水について,Orbitrap質量分析計による精密質量分析を適用し,水道原水の識別を試み,精密質量分析に基づいた溶存有機物の変化検知のための基礎的知見を収集した。
全国21か所の水道原水中での2-MIBの粉炭への短時間接触による吸着量を実測した。
高分解能LC-MSおよび高分解能GC-O-MSを用いて生ぐさ臭原因物質の探索と構造推定を行った。
形態観察では判別が困難なジェオスミン産生・非産生Anabaena属を簡易に識別・定量する方法の開発を試みた。
結果と考察
測定誤差等を考慮に入れた階層ベイズを導入することによりクロロフィルa濃度の予測精度を向上させることに成功した。
日本での過去のカビ臭発生事例調査について,収集した76件のカビ臭発生事例と気象データを用いて,カビ臭発生事例発生傾向と気象条件との関係性についてとりまとめ,カビ臭が発生する気象条件を抽出した。また中国での湖沼水質改善への対策として工場排水の規制,下水道の整備,流入河川の浄化対策,浚渫,水生生物による水質浄化対策など総合的な対策の他に,導水事業による水質浄化事業の実施が湖沼水質改善の対策として有効である可能性が考えられた。
琵琶湖を対象として,単藻培養できた藍藻類12株について,2-MIB産生種が確認された。
浄水場処理工程水の微生物相を解析した結果,沈澱処理水における主要な生菌は,Sphingomonas属,Methylocystis 属,Methylobacterium属であると考えられた。ろ過水における主要な生菌は,Sphingomonas属,Methylocystis 属であると考えられた。
国内22か所の水道原水について,Orbitrap質量分析計を用いた精密質量分析により原水中溶存有機物(DOM)に関する情報を収集し,その特徴や共通点を調査した結果,DOMの精密質量分析により,微生物の異常増殖等DOMの極端な変化を検知できる可能性を指摘した。
DOMが2-MIBの粉末活性炭吸着量に与える影響を推定した結果,超純水中(除去率:84%)に比べて,水道原水では吸着量が低下(26~56%)することがわかった。
生ぐさ臭の原因生物であるウログレナが発生した際に採取した水道原水と,ウログレナの培養液を分析結果,共通する物質が1物質発見された。
藍藻類のジェオスミン合成酵素遺伝子を標的とした半定量whole-cell PCR法による簡易定量技術を構築した。
結論
ダム湖におけるクロロフィルa濃度の予測において,測定誤差等を考慮に入れた階層ベイズを導入することにより予測精度を向上できた。
全76件のカビ臭発生事例調査結果から国内におけるカビ臭発生に関連する気象条件について抽出した。
中国における重要湖沼の水質の改善状況をみると,顕著に改善されている事例が確認された。その対策として導水事業による水質浄化事業の実施があげられた。
琵琶湖から単離した藍藻株の中には2-MIB産生種が存在し,さらに2-MIB合成酵素遺伝子を保有していることが確認された。
PMA処理を適用した16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンシングを用いて浄水場処理工程水中の生菌の挙動を評価できることが示唆された。
精密質量スペクトルに対して因子分析を行うことにより,原水水質を湖沼・島嶼等のグループを捉えることができ,微生物の異常増殖等溶存有機物の極端な変化を検知できる可能性を示した。
2-MIBの粉炭吸着において,水道原水では吸着量が低下することがわかった。
生ぐさ臭の原因物質が1物質発見された。
水源におけるジェオスミン産生株のモニタリングのために,形態観察では困難なジェオスミン産生藍藻類の識別に有効と期待できるmultiple whole-cell PCR法を開発した。

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201826016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,776,000円
(2)補助金確定額
6,772,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,049,452円
人件費・謝金 0円
旅費 2,243,143円
その他 480,058円
間接経費 0円
合計 6,772,653円

備考

備考
自己負担額:653円

公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
-