包括的支援体制構築に向けた市町村保健センターと他分野の連携に関する研究

文献情報

文献番号
201826013A
報告書区分
総括
研究課題名
包括的支援体制構築に向けた市町村保健センターと他分野の連携に関する研究
課題番号
H30-健危-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤内 修二(大分県福祉保健部)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学)
  • 清水 由美子(東京慈恵会医科大学医学部看護学科)
  • 松永 洋子(日本医療科学大学保健医療学部看護学科)
  • 村山 洋史(東京大学高齢社会総合研究機構)
  • 大澤 絵里(国立保健医療科学院国際協力研究部)
  • 中板 育美(武蔵野大学 看護学部 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国の市町村保健センター及び類似施設(以下、保健センター)は、個別支援と地域支援の両面から対人保健サービスの中核を担う拠点であるものの、その活動実態や課題については必ずしも明らかではない。また、少子高齢社会・核家族化の進展に伴い、住民の健康課題が多様化・複合化し、従来の公助・共助のみではその対応が困難になってきた。そこで、保健センターが公助・共助を強化するためには諸機関との連携策が求められる。
しかし、現実には保健センターを取り巻く庁内外の部門・団体との連携体制は十分ではなく、さらなる連携の必要性が指摘されている。
本研究では、保健センターを首座においた庁内外の部門・団体との連携についての調査と検討を行うものである。
研究方法
初年度は、以下の5つの研究を行った。
【研究1】
保健センターに関するこれまでの調査報告書及び関連資料を用い、保健センター等の設置の背景や変遷について、年代ごとに出来事を精査した。保健センターの類似施設とされる母子健康センターの経過についても文献に基づき調査し、変遷を概観した。
【研究2】
「市町村名」+「保健センター」をキーワードに、保健センターの情報を提供しているホームページを検索した。
【研究3】
全国の自治体を対象に、2018年9月~10月に電子メールによる調査を実施した。調査内容は、保健センターを核とする庁内外の部門・団体との連携についての好事例(最大3件)を記載してもらった。
【研究4】
研究3から、103件の好事例が得られた。その中から20自治体より29件の特筆すべき好事例を抽出し、第二次調査として深掘りヒアリング調査を実施した。
【研究5】
ヒアリングガイドの項目を分析枠組みとして、全事例を横断的に読み解いた上で、活動の契機、拡大、事業のポイントの特徴・共通点を洗い出し、保健師活動の戦略的視点を抽出した。
結果と考察
【研究1】保健所と比較し、保健センターの運営や位置づけは法的な規定が少ないからこそ、柔軟な活動ができる反面、保健活動の拠点としての機能を十分に発揮できない。こうした仕組みに起因する脆弱性を含んでいるため、むしろ、保健センターを「機能」と捉える必要があると考えられた。
【研究2】保健センターの設置について、独立型、役所(庁)内型、複合施設内型の3類型に整理出来ることがわかった。
【研究3】全国の自治体を対象に、保健センターが組織として他部門・団体と連携ができている事例を紹介してもらった結果、連携数は、平均6.3個であり、内訳を見ると、庁内の連携では子育て支援部門、高齢者福祉部門が、庁外との連携では住民組織、保育園、地域包括支援センター、医療機関等との連携が多く、子育て支援や地域包括ケアシステムにおける多分野連携が今日的行政課題となっていることを鑑みると妥当な結果と考えられる。
【研究4】連携が十分なされている保健センターに対するヒアリングをおこない、他分野連携の好事例を有する保健センター事業に見られる特徴を明らかにした。その結果、
好事例の多くは、庁内での連携と庁外の組織等との連携を重層的に組み合わせておこなっていた。
【研究5】保健師が常に以下の4点を意識しながら、戦略的にPDCAサイクルを回転させている様子が示された。
1.各種計画に事業を位置付ける
2.横展開やネットワーク拡大、ソーシャル・キャピタルの醸成を意識して取り組む
3.積極的にデータを活用し、数値で結果を可視化する
4.多機関・多職種連携により、保健センターの活動や事業では対象になりづらい層と接点を持つ
結論
保健センターは社会や時代の変化と共に、市町村における保健活動の拠点として各種の保健事業や、すべての住民を対象とした活動を行ってきたため、多様性と可塑性を持った活動の場となった。
全国の保健センター設置の類型は、①独立型、②役所(庁)内型、③複合施設内型に分類され、連携の好事例は、母子領域や高齢者領域を中心とした組織・団体との連携が進んでいることがわかった。そして、円滑な活動のためには庁内連携と庁外連携を重層的に組み合わせる必要がある。連携先機関が事業運営の中核を担い、保健センターが連携のサブにまわる場合もあるが、緩く関わりを持ち続けることが重要である。
また、事業担当者が流動的であっても、支障がでないように、庁内・外部ともに、組織として連携のネットワークに参画する必要性がある。
最後に、地域共生社会の実現に向けて、市町村保健センターの包括的支援体制を構築していく上で保健師が担う戦略的手法について明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2019-10-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-10-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201826013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,855,000円
(2)補助金確定額
5,756,000円
差引額 [(1)-(2)]
99,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 634,076円
人件費・謝金 978,161円
旅費 332,016円
その他 2,957,424円
間接経費 855,000円
合計 5,756,677円

備考

備考
差額は自己負担した。

公開日・更新日

公開日
2020-04-07
更新日
-