公衆衛生医師の確保・育成のためのガイドライン策定と女性医師を含む多様性包括型キャリアパス構築に関する研究

文献情報

文献番号
201826012A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆衛生医師の確保・育成のためのガイドライン策定と女性医師を含む多様性包括型キャリアパス構築に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 穂波(神奈川県立保健福祉大学  ヘルスイノベーションスクール設置準備担当)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邊亮(神奈川県立保健福祉大学  ヘルスイノベーションスクール設置準備担当 )
  • 吉村健佑(千葉大学 病院経営管理学研究センター)
  • 佐藤大介(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、自治体の公衆衛生医師の確保を促進するために、1)公衆衛生医師の具体的な活躍のイメージを関係組織と共有すること、2) 地域保健総合推進事業(全国保健所長会協力事業、以下「全国保健所長会事業」)が推進する人材育成手法に加え、社会医学系専門医認定プログラムや自治体の公衆衛生医師養成プログラムを基に行政機関の公衆衛生医師におけるコンピテンシーとその育成プログラムポリシーを検討すること、3)公衆衛生医師に求められる資質や育成に関するガイドラインを整備するための基礎資料を作成すること、を目的としている。これらの成果について関連事業である全国保健所長会事業と共有しながら、各都道府県が公衆衛生医師の確保・育成のために活用出来る基礎資料とする方針である。
研究方法
本研究事業では、医師が保健所をはじめとする公衆衛生分野で活躍するための認識や課題、障壁などを抽出するため、新たな調査を行うとともに、離職率が高いとされる公衆衛生医師の確保・育成についての知見を取りまとめた。公衆衛生医師の現状に関する分析として、具体的には「医師・歯科医師・薬剤師調査(以下、三師調査)」の個票を用いた公衆衛生医師動態分析、全国保健所長会のメーリングリストを活用した現職公衆衛生医師における意識調査、臨床に従事する女性医師における公衆衛生医師に関するインターネット調査を行った。また、教育機関における公衆衛生研修を行う、全国保健所長会が開催する公衆衛生セミナーに参加する、ウェブサイトで研究成果を発信するなど、具体的な手法にも着手をした。
結果と考察
平成26年度から平成28年度の3年間にわたる三師調査の分析では年齢階級が低い医師群の約半数が移動しているのに対し、年齢階級が50歳以上の医師群の移動割合は30%未満となった。男性医師、女性医師ともに移動した割合は男性31.59%に対し、女性26.56%とやや男性の方が多く移動する傾向がみられた。次に、全国保健所長会のメーリングリストを活用した現役公衆衛生医師における意識調査において、「これからも公衆衛生医師としてのキャリアを重ねていきたい」に対する回答を被説明変数とし、現在の業務に関する項目を説明変数とした順序ロジステック回帰分析を実施した結果、男性では、「興味のある仕事だ」「社会にとって有益な仕事だ」「学位取得、留学、研究の機会がある」の項目と、女性では、「興味のある仕事だ」のほかに「子供あり」「雇用が安定している」「コミュニケーションがとりやすい職場だ」の項目と有意な関連が見られた。また、臨床に従事する女性医師における公衆衛生医師に関するインターネット調査では、「今までに公衆衛生医師のキャリアを考えたことがある」と答えた女性医師は3割弱だった。既存資料の整理では、これまで開発されたガイドラインやチェックリストなどのツールや好事例集の類似点、相違点が明らかになり、人口減少や専門医制度、地域医療構想等、時代の変容に合わせた利活用方法が明らかになった。
結論
以上の調査からの傾向を踏まえると、確保・育成に向けた施策への示唆として、公衆衛生医師のモチベーションや業務意欲を高める要因は男女間で異なっている可能性がある。男性医師では、学位取得等の機会が確保されることや、公衆衛生医師の社会的価値を認識し社会から認められるような施策が仕事の継続医師と関連しており、確保・育成の上でも有効であることが示唆された。現在の業務上、学位取得等の機会が限られていることは本調査や同様の先行研究でも指摘されているが、様々な形で自己研鑽の機会を提供することが極めて重要であることが明らかになった。本研究班では、自己研鑽の機会を増やすために「オンライン講習」の充実や、人事交流制度の導入などについて提案している。また女性医師ではライフワークバランスが比較的とりやすい環境であることが認識されており、実際に子供を持つ女性医師の業務継続意思が高いことが明らかになった。したがって、特に女性医師に対するリクルーティングにおいて、働きやすさに関する魅力を発信することは有効な方策かもしれない。また、働きやすさを向上させることは、公衆衛生業務に従事する女性医師の業務継続意思を維持する上でも重要な方策であろう。本研究は、現場の意見を反映させながら新たな定量的調査及び分析を行うことで、公衆衛生医師の人材確保ならびに人材育成プログラムの整備を進めるためこれまでの全国保健所長会事業の取り組みを踏まえながら人材育成プログラムの開発と行政機関における現場の実態把握とを一体的に検討し、具体的な公衆衛生医師確保のためのガイドラインおよび指針に繋げた。今後は、これらの知見を踏まえ、より具体的な人材確保および育成手法の確立が求められる。

公開日・更新日

公開日
2019-11-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-12-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201826012B
報告書区分
総合
研究課題名
公衆衛生医師の確保・育成のためのガイドライン策定と女性医師を含む多様性包括型キャリアパス構築に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 穂波(神奈川県立保健福祉大学  ヘルスイノベーションスクール設置準備担当)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邊 亮(神奈川県立保健福祉大学  ヘルスイノベーションスクール設置準備担当 )
  • 吉村 健佑(千葉大学 病院経営管理学研究センター)
  • 佐藤 大介(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
公衆衛生医師の確保・育成を目的として、公衆衛生医師確保・育成のためのガイドライン策定の支援や、女性医師を含む多様性包括型キャリアパス構築を目的として、アンケート調査、インタビュー調査、医師・医学生を対象とした教育プログラムの試行等を実施し、新たに得られたエビデンスをもとに、公衆衛生医師の確保・育成に向けた効果的・効率的な具体策・アクションプランを提示する。具体的には、自治体の公衆衛生医師の確保を促進するために、1)女性医師、若手医師、ベテラン医師が公衆衛生医師の具体的な活躍のイメージを関係組織と共有すること、2)社会医学系専門医認定プログラムや自治体の公衆衛生医師養成プログラムを基に、行政機関の公衆衛生医師におけるコンピテンシーとその育成プログラムポリシーを策定すること、3)公衆衛生医師に求められる資質や育成に関するガイドラインを整備することが目的である。
研究方法
女性医師や若手医師、50~60代の比較的高齢の医師が保健所をはじめとする公衆衛生分野で活躍するための認識や課題、障壁などを抽出するため、新たな調査を行うとともに、離職率が高いとされる公衆衛生医師の確保・育成についての知見を取りまとめ、これらをもとに具体的な手法についての検討を行った。臨床医に対するアンケート調査では、25歳~70歳の医師412名を対象に行政機関勤務の公衆衛生医師に対する認知度、イメージおよびコンピテンシー習熟度やキャリア意識を測定した。新たな現状分析調査として、全国保健所長会事業や関連組織と連携し、現場で働く公衆衛生医師のうち①全国の保健所長または保健所勤務医師②都道府県の保健福祉部門に勤務する医師(行政医師) を対象とした半構造化質問票を用いたリサーチ・インタビューを実施した。加えて平成22年から平成26年までの「医師・歯科医師・薬剤師調査(以下、三師調査)」の個票を解析した。さらに、研究手法の重複や無駄を省き知見を統合するため既存研究の時系列レビューを行い、これまでの主な厚生労働省の公衆衛生医師確保対策の網羅的に探索し、論点整理と課題抽出を行った。これらをもとに都道府県の公衆衛生医師確保対策や職場環境の整備、人材育成制度等の基礎資料としてまとめた。
結果と考察
公衆衛生医師の現状分析に関する新たなデータ収集として臨床医に対するアンケート調査を行った結果、公衆衛生医師領域の認知率はベテラン医師で比較的高い一方、関心がある割合は女性や若手医師で比較的高い傾向がみられた。行政医師に対するインタビュー調査については、医師確保の課題として公衆衛生行政医師業務の魅力を効果的に発信できていないことが示唆された。一方、公衆衛生行政業務のやりがいやワークライフバランスを踏まえると、潜在的な「なり手」は存在すること、組織や地域を越えた人材交流の枠組みを構築することによって医師確保を促進しうることが示唆された。育成上の課題としては「育成プログラム」や「研修機会」の欠如が挙げられ、キャリアラダーなどを用いてコンピテンシーを踏まえたキャリアパスを明示することに加え、オンライン研修の充実や自治体内研修受講の義務化が重要であると考えられた。厚生労働省の公衆衛生医師確保政策における論点整理と課題抽出においては、これまで開発されたガイドラインやチェックリストなどのツールや好事例集の類似点、相違点が明らかになった。
結論
これらの成果を関連事業である地域保健総合推進事業(全国保健所長会協力事業、以下「全国保健所長会事業」)と共有しながら、各都道府県が公衆衛生医師の確保・育成のために活用出来る基礎資料を提供した。現場の意見を反映させながら客観的な計量分析を行うことで、公衆衛生医師の増加に資する政策がリアリティを持つものとなり、人材確保ならびに人材育成プログラムの整備が進むと考えられる。本研究は、自治体の公衆衛生医師の確保を促進するために、女性医師、若手医師、ベテラン医師、都道府県の修学資金制度を利用した医師など、細分化したターゲット別のアプローチを関係組織と共有し、社会医学系専門医認定プログラムや自治体の公衆衛生医師養成プログラムと連動した研修手法を検討することに寄与できた。今後は、新たな定量的調査及び分析による人材育成プログラムの開発と行政機関における現場の実態把握とを一体的に検討しエビデンスに基づいて抽出された公衆衛生医師確保のポイントを自治体担当者向けに簡便かつ魅力的に見せ、自治体規模や地域特性に応じて公衆衛生医師確保の手段として役立てられるようなツールを構築していく必要があると考えられる。本研究を通じて教育・研究期間、臨床で働く医師のネットワークが交流する機会を持ち、連携し、公衆衛生領域の意義を広め、活性化を促し、より具体的で精緻な人材確保および育成手法を確立していくことが求められる。

公開日・更新日

公開日
2019-11-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-12-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201826012C

収支報告書

文献番号
201826012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,848,000円
(2)補助金確定額
1,848,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 62,217円
人件費・謝金 17,414円
旅費 63,106円
その他 1,537,263円
間接経費 168,000円
合計 1,848,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-04-06
更新日
-