建築物環境衛生管理基準の検証に関する研究

文献情報

文献番号
201826010A
報告書区分
総括
研究課題名
建築物環境衛生管理基準の検証に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
林 基哉(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 開原 典子 (国立保健医療科学院  生活環境研究部)
  • 欅田 尚樹(産業医科大学 産業保健学部 )
  • 東 賢一 (近畿大学 医学部)
  • 中野 淳太(東海大学 工学部)
  • 李 時桓(イ シファン) (信州大学 学術研究院工学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,713,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、平成26-28「建築物環境衛生管理に係る行政監視等に関する研究」による、空気環境衛生基準、衛生管理体制、新しい健康リスク等に関する提案に基づいて、環境衛生管理基準不適率の上昇が顕著である空気環境を中心に4つの研究を行い、建築物衛生環境の効果的向上を図るための基準改正に資する科学的根拠を示す。
研究方法
B-1基準案の検証(エビデンス整理)
国立情報学研究所論文情報ナビゲータCiNii、科学技術振興機構J-Dream III、米国国立医学図書館Pubmedの文献検索等を行い、平成22年度「建築物環境衛生管理基準の設定根拠の検証について」以降のエビデンスについて調査及び整理を行った。
B-2測定評価法提案(ケーススタディー)
空間の用途、空調方式、立地の多様性を考慮した、空気環境の測定方法の提案を目的とし、ASHRAE:55-2017およびISO7730:2005を参考に空気環境測定法を提案し、実際の測定により有効性の検証を行った。
B-3測定評価法の検証(実建物試行)
B-3-1調査対象物件の建物特性
温度、相対湿度、二酸化炭素の2週間程度の連続測定を行う測定調査1、及び、浮遊粉じんの量、浮遊微生物や化学物質などの空気環境項目及び空調機内部の汚れ具合などの調査を行う測定調査2について、協力の得られる特定建築物の建物特性について整理を行った。
B-3-2健康影響に関する検証
自記式調査票を会社等に配付・回収した。「建築物の維持管理状況の調査」(管理者用調査)、「職場環境と健康の調査」(従業員用調査)を実施した。
B-4制度提案(自治体等ヒアリング)
B-4-1維持管理体制・測定値の代表性・立入検査時における課題抽出
行政報告データを用いて、不適率の要因に関する分析を行った。
結果と考察
C-1基準案の検証(エビデンス整理)
WHOが温度の室内ガイドラインとして18℃を2018年に公表した。これは冬期の高齢者における血圧上昇に対する影響を考慮したものであった。またWHOは、微小粒子状物質(PM2.5)、一酸化炭素の室内空気質ガイドラインを公表しており、微小粒子状物質では循環器疾患への影響、一酸化炭素では虚血性心疾患への影響に基づくものであった。室内の粒子状物質については、浮遊粉じんよりも粒径の小さいPM2.5に対する室内空気指針値の設定が近年諸外国でなされてきており、WHOにおいても2018年に開催された「空気汚染と健康に関する世界会合」において、大気と室内におけるPM2.5による健康被害の問題が大きく取り上げられた。これらの物質については、今後検討すべき項目であると考えられた。
C-2測定評価法提案(ケーススタディー)
温熱環境に関する快適性の基準が時代の要請に合わせて改定されているのに対し、測定方法には大きな変更が見られないことが確認されたため、ASHRAE 55基準に準拠した測定方法を提案し、北海道、東京、大阪の実際のオフィスを3季節に分けて調査した。従来の測定法に比べ、水平方向や垂直方向の温熱環境の分布を詳細に評価できることが確認された。
C-3測定評価法の検証(実建物試行)
測定調査1に協力できると22件から回答が得られた。また、この22件のうち、測定調査1に加え、測定調査2に協力できると16件の調査を進めている。
建築物利用者の健康状態の実態調査については、冬期・夏期の断面調査として、500社に対してアンケート調査を依頼し、途中段階であるものの、冬期に185社1969名、夏期に152社1543名からアンケートの回答を得ている。
C-4制度提案(自治体等ヒアリング)
首都圏(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県)の空気環境測定実務者の協力を得て、空気環境測定に関するアンケート調査を試行した結果、空気環境の測定点、測定時間、測定後の改善に関する課題が抽出できることが確認された。
空気環境の湿度、気温、二酸化炭素の不適率は、持続的に増加して高いレベルに達している。ビルメンテナンス業による定期的測定のデータを利用して判断される報告徴取の増加がこの一因であることが確認された。
結論
最新知見によって基準改正の対象候補となる項目決定の基礎が得られつつある。
主に温熱環境に関する評価方法の進歩が大きい中、温度、湿度、気流等の温熱環境に関する基準の追加、組み換えの提案に資する知見が得られた。
測定評価法の提案に基づく実物件での検証の準備として、対象建物の選定及び属性分析を行うとともに、衛生管理、室内環境と健康影響に関する調査・分析を行っている。
制度提案(自治体等ヒアリング)では、実効性のある基準の見直しのための基礎として、行政報告における不適率上昇の分析、自治体における立入検査及びその報告に関する状況把握として空気環境測定の実態に関する調査方法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2019-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201826010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,713,000円
(2)補助金確定額
5,706,000円
差引額 [(1)-(2)]
7,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,835,454円
人件費・謝金 1,272,500円
旅費 475,083円
その他 1,123,743円
間接経費 0円
合計 5,706,780円

備考

備考
自己負担780円

公開日・更新日

公開日
2020-04-09
更新日
-