民泊サービスにおける衛生管理等に関する研究

文献情報

文献番号
201826009A
報告書区分
総括
研究課題名
民泊サービスにおける衛生管理等に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
阪東 美智子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀田 祐三子(和歌山大学 観光学部)
  • 松村 嘉久(阪南大学 国際観光学部)
  • 本間 義規(宮城学院女子大学 生活科学部)
  • 山田 裕巳(長崎総合科学大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、住宅宿泊事業法施行前後の民泊の衛生管理の実態や保健衛生部局の取組みに関する情報を収集・整理することにより、民泊の衛生管理等項目や具体的手法を考案し、保健所その他関係機関における衛生管理体制の構築や民間への事業委託の活用を検討するための資料を提供することを目的とする。
研究方法
(1)住宅宿泊事業法制定前後の民泊サービスの動向:平成29年12月末から平成31年2月初めまでのクローリングデータを用い、保健所設置自治体ごとの届出民泊数と比較検討する。特徴的な6都市を抽出し、都市ごとの特徴と都市間比較を試みる。また、大阪市の特区民泊について、特区民泊リストの6時点を入手して分析を行うとともに、昨年度の調査対象地域の違法民泊の建物の物件ベースのデータを、最新状況と照合する。
(2)民泊施設・簡易宿所の室内衛生環境の実態:新法民泊・特区民泊・未登録民泊の三種類の民泊を対象とし室内居住環境(CO2濃度・温湿度・アレルゲン濃度等)を測定する。簡易宿所を追加して調査を実施し、民泊施設の測定結果と比較分析する。また、簡易宿所の経営者・管理者に対するインタビュー調査を実施する。さらに、潜在的な民泊ストックとしての一般住宅の環境性能の実態把握を行う。
(3)民泊の衛生管理等に関する事業者・管理者の意識:昨年度実施したアンケート調査結果を用い、総定員規模およびフロントの有無別にその特徴を分析する。事業者に対してインタビュー調査を行い、衛生管理についてより詳細な実態把握を行う。
(4)民泊の衛生管理に関する宿泊者の関心・意識・評価:訪日外国人旅行者および外国人留学生を対象に、民泊利用の全般、仲介サイト、衛生、利用方法などの聞き取り調査を行う。
(5)自治体における取組み状況:保健所設置自治体のホームページ等から条例等の制定状況と特徴を抽出する。主要都市を対象に担当者にインタビュー調査を行う。
(6)諸外国における民泊の衛生管理等の状況:フランス・パリとイギリス・ロンドンの関係機関・団体、有識者等を訪問し、インタビュー調査を実施する。収集した情報から、日本における民泊の衛生管理等に対して参考となる資料や事例を整理する。
(1)~(6)の成果を踏まえ、民泊における環境衛生管理項目や具体的手法を考案する。また、研究成果の公表や発信を行う。
結果と考察
民泊は住宅宿泊事業法施行を境に仲介サイト登録数が大きく減少したが、届出民泊件数の2.5倍程度に上り無届営業の継続が懸念される。昨年度の調査により判別した違法民泊を追跡踏査した結果からは、新法民泊や特区民泊に移行したものとともに、どちらにも属さず開店休業か廃業状態にあるものも多く発見された。
室内衛生環境の実測調査では、清掃不足など衛生管理が不十分な建物において浮遊真菌や付着真菌、ダニアレルゲンなどのリスクが高まる可能性があることが示唆された。
民泊の衛生管理等に関する事業者・管理者の意識調査からは、小規模な民泊では清掃専門業者の利用は少ないこと、衛生管理に対する危機意識は経営や火災・犯罪などの危機管理と比較して高くないこと、日々の管理が適切に実施されているかのチェック体制は十分ではないこと、などが明らかになった。
宿泊客に対する調査からは、宿泊施設の内実を判断しづらい状況にあること、オーナーとの接触のない民泊が多いこと、他方で日本の民泊の清潔さに対する意識が非常に高いことがわかった。
自治体で民泊条例を制定しているのは都道府県で19、市で39であり、民泊の担当部局は殆どが衛生部局だが、約25%は観光部局が関わっていた。積極的な取組を展開している自治体でも、衛生管理について特別な取組みはほとんど行われていないが、感染症対策部局では宿泊施設向けの啓発リーフレットを作成し配布する動きが見られた。
海外の事例では、パリ・ロンドンの両都市とも、住宅供給の不足や家賃の高騰が社会的な問題になっており、民泊の拡大がそれらに大きく影響することが懸念されていた。民泊に関する特別な安全・衛生基準等は設定していないが、住宅一般に関して評価や監査が実施されていた。
結論
民泊の衛生管理については、清掃の徹底と感染症対策に関する啓発・指導が重要である。実効性のある具体的な清掃方法や頻度等については、実測等を行いさらに検証していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2019-10-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-10-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201826009B
報告書区分
総合
研究課題名
民泊サービスにおける衛生管理等に関する研究
課題番号
H29-健危-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
阪東 美智子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀田 祐三子(和歌山大学 観光学部)
  • 松村 嘉久(阪南大学 国際観光学部)
  • 本間 義規(宮城学院女子大学 生活科学部)
  • 山田 裕巳(長崎総合科学大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
住宅宿泊事業法施行前後の民泊の衛生管理の実態や保健衛生部局の取組みに関する情報を収集・整理することにより、民泊の衛生管理等項目や具体的手法を考案し、保健所その他関係機関における衛生管理体制の構築や民間への事業委託の活用を検討するための資料を提供することを目的とする。
研究方法
本研究の研究期間は2年間である。研究期間中に住宅宿泊事業法が制定され、施行要領(ガイドライン)も作成されるなど、行政の動きが先行しているために動向の把握が難しいところもあったが、初年度は住宅宿泊事業法施行前の状況を、2年目は住宅宿泊事業法後施行後の状況を、それぞれ予定していた研究計画(①民泊の分布と建物の特性の調査、②民泊の室内環境の実測調査、③民泊事業者・管理者に対する調査、④宿泊者に対する調査、⑤主要自治体に対する調査、⑥海外都市の民泊対応に関する調査)に基づき実施した。
初年度の研究後、①の研究にAirbnbのクローリングデータや住宅地図情報からのデータを追加した分析を、②の研究に一般住宅の実測調査結果との比較分析を、⑤の研究に民泊条例の制定状況に関する情報収集と整理を、それぞれ追加した。また、④の研究については、当初はWeb調査を予定していたがインタビューによる質的調査に変更した。
研究方法の具体的内容については、各年度の概要版を参照されたい。
結果と考察
平成29年度は住宅宿泊事業法施行前の状況について、民泊施設の実測調査や民泊事業者に対するアンケート調査を行った。平成30年度は住宅宿泊事業法施行後の動向をモニタリングしながら、平成29年度に引き続き民泊施設の実測調査を行い、外国人宿泊者に対するインタビュー調査も実施した。また、2か年にわたって、民泊対策において先行する自治体の取組みや諸外国の事例について情報を収集した。得られた知見は以下のとおりである。
民泊は住宅宿泊事業法施行後、届出民泊件数は増加しているが、無届営業の継続も多く、海外サイトの利用で潜在化するものも多い。届出・認定後の民泊の営業状況の把握が不十分である。
住宅宿泊事業法施行前の時点では特区民泊や旅館業の許可を得ず営業するものが多く、場所の特定は半分程度しかできなかった。立地密度に濃淡があり、指導・管理を行う上での困難性が示唆された。法施行後は新法民泊や特区民泊に移行したものとともに、どちらにも属さず開店休業か廃業状態にあるものも多い。
室内衛生環境については、換気システムの確保や運用の不適切性など建物由来の問題や、清掃・管理不足による湿気や汚染など清掃由来の問題がある。清掃不足など衛生管理が不十分な建物において浮遊真菌や付着真菌、ダニアレルゲンなどのリスクが高まる可能性がある。
民泊の住所地や種類(特区民泊か簡易宿所か)によって清掃や衛生対策の対応に違いがある。また、感染症対策に対する事業者の意識は相対的に低い。小規模な民泊では清掃専門業者の利用は少ない。衛生管理に対する危機意識は経営や火災・犯罪などの危機管理と比較して高くない。日々の管理が適切に実施されているかのチェック体制は十分ではない。
外国人宿泊客は、宿泊施設の内実を判断しづらい状況にある。オーナーとの接触のない民泊が多い。日本の民泊の清潔さに対する意識は非常に高い。
民泊条例の制定は、都道府県レベルより市区レベルで多い。民泊の担当部局は殆どが衛生部局だが、約25%は観光部局が関わっている。独自ルールの設定により地域住民の安心・安全の確保や違法民泊の取締りなど積極的な取組を展開している自治体でも、衛生管理については特別な取組みはほとんど行われていない。一方、感染症対策部局では宿泊施設向けの啓発リーフレットを作成し配布する動きが見られる。
海外の事例では、パリ・ロンドンの両都市とも、住宅供給の不足や家賃の高騰が社会的な問題になっており、民泊の拡大がそれらに大きく影響することが懸念されている。民泊に関する特別な安全・衛生基準等は設定していないが、住宅一般に関して評価や監査が実施されている。
結論
最終成果物として、衛生管理項目や具体的手法を考案し、衛生管理等のチェックシートや啓発リーフレットなどを作成する予定であったが、衛生管理項目として清掃と感染症対策が重要であることは見いだせたものの、具体的手法やその効果については更なる実証が必要であると判断し、今後の課題とした。
なお、研究成果の一部は、生活と環境全国大会における民泊をテーマとしたシンポジウムや環境衛生監視員講座等で、主に環境衛生監視員を対象に報告した。

公開日・更新日

公開日
2019-10-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-10-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201826009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
住宅宿泊事業法施行前後の民泊の動向について、分布や件数の変化に加え、建築物的特徴や室内衛生管理の実態を、実測調査や事業者・管理者に対する調査から明らかにした。研究成果は、日本建築学会大会や観光学術学会大会などで報告した。
臨床的観点からの成果
特記事項なし。
ガイドライン等の開発
研究期間中の平成29年12月に「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」が作成されている。本研究はこのガイドラインの内容を踏まえ、さらに具体的な衛生管理手法の考案のための基礎資料となる実態把握を行った。
その他行政的観点からの成果
本研究を通じて、主要自治体の関係部局と情報・意見交換を行い現状と課題を共有した。また、日本環境衛生センターが主催する環境衛生監視員講座、厚生労働省が主催する生活衛生関係技術担当者研修会で、主に環境衛生監視員を対象に、成果の一部を報告した。国立保健医療科学院で実施している自治体職員対象の短期研修「環境衛生監視指導研修」「建築物衛生研修」「住まいと健康研修」において成果の一部を活用した。
その他のインパクト
日本環境衛生センターが主催する「生活と環境全国大会」において、民泊をテーマとしたシンポジウムを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
『生活と環境』(2019)
その他論文(英文等)
1件
『保健医療科学』(2019)
学会発表(国内学会)
7件
日本建築学会大会(2018)(2019)、観光学術学会(2018)、人間-生活環境系シンポジウム(2018)、日本公衆衛生学会(2019)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
環境衛生監視員講座(2018)(2019)、生活衛生関係技術担当者研修会(2019)(2020)
その他成果(普及・啓発活動)
4件
「生活と環境全国大会」シンポジウム(2018)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-06-18
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
201826009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
5,896,000円
差引額 [(1)-(2)]
104,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,656,491円
人件費・謝金 585,046円
旅費 2,217,244円
その他 1,438,160円
間接経費 0円
合計 5,896,941円

備考

備考
利息5円、自己負担936円を含む。

公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
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