地域特性に応じた保健活動推進ガイドラインの開発

文献情報

文献番号
201826001A
報告書区分
総括
研究課題名
地域特性に応じた保健活動推進ガイドラインの開発
課題番号
H28-健危-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
麻原 きよみ(聖路加国際大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大森 純子(東北大学大学院医学系研究科)
  • 永田 智子(慶應義塾大学看護医療学部)
  • 鵜飼 修(滋賀県立大学環境科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,404,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健活動の現場で活用可能かつ効果的な「地域特性に応じた保健活動推進のためのガイドライン」とその運用に活用できるツールを開発し、健康な地域づくりのための保健活動の推進に資することを目的とする。
研究方法
本年度は、1.地区活動に関する調査、2.保健活動(地域/地区活動)推進のためのツールの介入調査、3.エコロジカルプランニングによる地域診断法をベースにした「健康まちづくりワークショップ」の評価を行った。
1.については、対象は保健師管理者および保健師であり、全国の自治体から人口規模別で62自治体1,570名をサンプリングし、調査票を送付し、郵送にて回収した。2.については、11の自治体の保健師105名を介入群(59名)と対照群(46名)に分け、介入群にはツール(地域/地区カルテ)を6か月間試行してもらった。両群に試行前(ベースライン)と試行終了時点(6か月目)に質問紙にてアウトカム評価(地域/地区活動の方法、地域/地区活動による保健師自身および地域/住民への認識、道徳的能力、保健師としてのアイデンティティなど)を実施した。介入群には、試行後3か月と6か月目にツールの内容と使用方法の適切性に関するプロセス評価(質問紙調査およびインタビュー)を行った。3.については「健康まちづくりワークショップ」を2回実施し、住民および保健師による評価を行った。
結果と考察
地区活動に関する調査の分析の結果、業務体制の実態や地域/地区活動の方法・地域/地区活動による保健師自身および地域/住民への認識・地域/地区活動を促進する環境が明らかとなり、それらに関連する基本属性やアウトカム(道徳的意識やアイデンティティ)が明らかとなった。これらについて、今まで自治体規模別保健師数を反映した全国規模の調査はみられず、本研究は初めての試みであった。この結果をガイドラインや関連会議、学会等で周知することで、地域/地区活動を促進することに寄与すると考えられる。保健活動推進のためのツール「地域/地区カルテ」の介入調査の分析の結果、介入・対照群の群間に変化量の有意な差は見られなかったが、群内でベースラインから6ヶ月後の変化をみたところ、対照群では有意に変化した指標はなく、介入群では「地域・住民との一体感」、「保健師としての自信」で有意な向上がみられた。地域/地区カルテ自体のフェイスシート・日々の記録・サマリーシートの各構成内容について、分かりやすさや重要性が評価できた。分かりにくいとの意見は最も高い項目でも20%台であり、ほとんどの項目について50%以上の保健師が重要であると評価した。また、保健師が抱いている地域/地区活動に対する認識や日頃の保健活動におけるツール活用のための課題が明確になった。地域診断や地域/地区活動の記載等については、多くのものがあるが、エビデンスのあるものはほとんどみられない。本研究は介入調査によってエビデンスのある初めての地域/地区活動推進のためのツールを開発した。本ツールの周知によって、自治体保健師に広く活用されることによって、地域全体をとらえる視点や個別の支援と地域全体を連動する活動を促進できると考える。エコロジカルプランニングによる地域診断法をベースに「健康まちづくりワークショップ」を実施・評価して、保健師に活用可能であることを確認した。今後、地域診断から地域づくりまで一貫した保健活動の手法として日常の活動に取り入れることが期待される。。
結論
地域における保健師の保健活動を推進するためのガイドラインとその運用に活用できるツールを開発することを目的として、今年度は、地区活動に関する調査を実施し、業務体制や保健活動の実態と関連要因が明らかとなった。また、保健活動推進のためのツール「地域/地区カルテ」の介入調査を実施し、具体的な活用方法を明らかとした。エコロジカルプランニングによる地域診断法をベースにした「健康まちづくりワークショップ」を実施・評価し、保健師に活用可能である結果を得た。3年間の研究結果に基づき、「地域特性に応じた保健活動推進のためのガイドライン」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2019-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-27
更新日
2019-08-13

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201826001B
報告書区分
総合
研究課題名
地域特性に応じた保健活動推進ガイドラインの開発
課題番号
H28-健危-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
麻原 きよみ(聖路加国際大学 大学院看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐伯 和子(北海道大学 大学院保健科学研究院)
  • 大森 純子(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 永田 智子(慶應義塾大学 看護医療学部)
  • 鵜飼 修(滋賀県立大学 地域共生センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健活動の現場で活用可能かつ効果的な「地域特性に応じた保健活動推進のためのガイドライン」とその運用に活用できるツールを開発し、健康な地域づくりのための保健活動の推進に資することを目的とした。
研究方法
研究枠組みとして、1.知識基盤の構築、2.実践的方法論の開発と評価、3.ガイドライン推進のための普及方法の開発、で構成し研究を進めた。1.として2つの調査を実施した。デルファイ調査では、「地域における保健師の保健活動について(平成25年4月、健発 0419 第 1 号)」 における「地域における保健師の保健活動に関する指針」で示された23の保健活動に関する主要用語について、全国の自治体の保健師の管理者と事務職、保健師教育機関の教育責任者、社会福祉協議会職員、合計800名を対象に2回調査を実施した。地区活動に関する調査では、保健師管理者および保健師を対象に、全国の自治体から人口規模別で62自治体1,570名をサンプリングし、質問紙調査を実施・分析した。2.として、「気づき」から行う地域診断方法の検討と作成、保健活動の評価指標と方法の整理を行った。エコロジカルプランニングによる地域診断法をベースにした「健康まちづくりワークショップ」を実施・評価した。また、保健活動推進のためのツール「地域/地区カルテ」については、11の自治体の保健師105名を介入群(59名)と対照群(46名)に分け、介入群には「地域/地区カルテ」を6か月間試行してもらった。両群に試行前(ベースライン)と試行終了時点(6か月目)にアウトカム評価を実施し、効果を評価した。介入群には、試行後3か月と6か月目にツールの内容と使用方法の適切性に関するプロセス評価を行った。3.として、作成したツール活用と普及のための「教育研修プログラム」を作成した。
結果と考察
デルファイ調査の結果、第1 回調査の回収数は230 名(回収率28.8%)であり、各用語の定義の適合度は平均91.4%であった。第2 回質問紙調査は回収数は90 名(76.9%)であり、適合度は平均は94.6%であり、これらから最終的な定義を作成した。本定義は、実践における多職種との協働を促進すると共に、知識基盤を共有した教育の実施を可能にし、研究における現象の範囲の明確化や共通指標使用による知見の蓄積および発展に寄与すると考える。地区活動に関する調査では、管理者票の有効回収数は39(75.0%)、保健師票の有効回収数は721名(34.8%)であった。業務体制(地区担当制、業務担当制など)の実態や保健活動(地域/地区活動)の方法・地域/地区活動による自身および地域/住民への認識・地域/地区活動を促進する環境、が明らかとなり、それらに関連する基本属性やアウトカム(道徳的意識やアイデンティティ)が明らかとなった。このことで、自治体における保健師の業務体制のあり方、地域づくりを意識した保健活動(地域/地区活動)の方法や促進する環境整備のあり方が明確になった。保健活動推進のためのツール「地域/地区カルテ」の介入調査では、すべてのアウトカムで介入群・対照群間で変化量に有意な差は見られなかったが、群内で6ヶ月後の変化をみたところ、介入群では「地域・住民との一体感」、「保健師としての自信」で有意な向上がみられた。また、ツールを構成する項目の重要性が示された。本研究は、介入調査によってエビデンスのある初めての保健活動のツールを開発したものであり、本ツールが自治体保健師に広く活用されることによって、地域全体をとらえる視点や個別の支援と地域全体を連動する活動を促進できると考える。「健康まちづくりワークショップ」の実施・評価の結果、保健師に活用可能であることを確認した。今後、地域診断から地域づくりまで一貫した保健活動の手法として活動に取り入れることが期待される。以上の研究結果から「地域特性に応じた保健活動推進のためのガイドライン」を作成した。
結論
本研究は、保健活動の現場で活用可能かつ効果的な「地域特性に応じた保健活動推進のためのガイドライン」とその運用に活用できるツールを開発し、健康な地域づくりのための保健活動の推進に資することを目的として行った。研究結果に基づき、「地域特性に応じた保健活動推進のためのガイドライン」を作成した。本研究結果の普及を図ることで、「地域における保健師の保健活動に関する指針」で示された地域特性に応じた保健活動や地区活動の推進につながり、「健康なまちづくり」のための地域保健活動が推進されることが期待できる。また、本研究結果は保健師の基礎・現任教育、地域保健に関する研究、国民の健康に資することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-27
更新日
2019-08-13

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201826001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域保健に関する主要用語の定義を保健師と他職種との合意で確定したこと、母集団を代表するサンプリングで行った調査により、業務体制(地区担当制、業務分担制)の実態、保健活動(地域/地区活動)の方法、保健師自身および地域/住民への認識、促進する環境および関連する要因を明らかにしたこと、介入研究により効果を検証した保健活動ツールを作成したこと、以上から地域特性に応じた保健活動推進のためのガイドラインを作成したことは、科学的手順に基づく初めての成果であり、公衆衛生看護の専門的・学術的成果である。
臨床的観点からの成果
地域保健の主要用語の定義によって多職種との協働が促進されると共に、知識基盤を共有した教育の実施が期待できる。地区活動に関する調査によって、地域づくりを意識した保健活動(地域/地区活動)の方法やアウトカム、および促進する環境整備のあり方が明確になり、効果的な保健活動のための体制づくりを促進できると共に、効果を検証した保健活動ツールを含むガイドラインの活用によって健康なまちづくりのための保健活動を促進することができ、もって国民の健康と安寧に寄与することが期待できる。
ガイドライン等の開発
「地域における保健師の保健活動について(平成25年4月9日付け健発0419第1号)」における「地域における保健師の保健活動に関する指針」で示された保健師の保健活動を推進するために、地域保健に関する用語の定義、地区活動に関する調査結果、および効果を検証した保健活動ツール(地域/地区カルテ)等で構成されたエビデンスに基づく「地域特性に応じた保健活動推進のためのガイドライン」を作成した。
その他行政的観点からの成果
「地域における保健師の保健活動に関する指針(平成25年4月9日付け健発0419第1号)」を実用化するための本研究結果、および「地域特性に応じた保健活動推進のためのガイドライン」を自治体としての対策や取り組みに反映することで、保健活動を推進することが期待できる。2021年2月時点で、自治体からの「地域/地区カルテ」送付依頼は48件あり、使用しているとの報告も受けている。また、本研究の研究者は、特定の自治体と地域/地区カルテを用いた地域づくり活動に継続して関わっている。
その他のインパクト
「厚生労働省 保健指導室だより」で「厚生労働科学研究成果データベース報告システム」に登録されたガイドラインについて自治体および保健師に周知をしてもらう予定である。また、1019(平成31)年度保健師中央会議で研究結果を報告した。その後、全国保健師長会研修会はじめ、20カ所以上の自治体等において本研究結果に関する報告を行っている。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
永井智子, 梅田麻希, 麻原きよみ, 他
地域保健活動における主要用語の定義:デルファイ法を用いた全国調査
日本公衆衛生雑誌 , 68巻 (8号) , 538-549  (2021)
10.11236/jph.20-079
原著論文2
永井智子, 米倉佑貴, 梅田麻希, 他
自治体保健師のための地区活動に関する評価尺度の開発:地区活動の内容、保健師の認識、組織環境に着目して
日本公衆衛生雑誌  (2023)

公開日・更新日

公開日
2019-06-18
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
201826001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,125,000円
(2)補助金確定額
3,125,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 382,327円
人件費・謝金 979,931円
旅費 655,718円
その他 387,730円
間接経費 721,000円
合計 3,126,706円

備考

備考
自己資金:1,706円

公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
-