室内空気環境汚染化学物質の標準試験法の策定およびリスク低減化に関する研究

文献情報

文献番号
201825017A
報告書区分
総括
研究課題名
室内空気環境汚染化学物質の標準試験法の策定およびリスク低減化に関する研究
課題番号
H30-化学-指定-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 神野 透人(名城大学 薬学部)
  • 田原 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 香川 聡子(横浜薬科大学 薬学部)
  • 田辺 新一(早稲田大学 創造理工学部)
  • 金 ヒョンテ(山口大学 工学部)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 東 賢一(近畿大学 医学部)
  • 埴岡 伸光(横浜薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
43,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
室内空気環境汚染化学物質は,シックハウス症候群の病因あるいは増悪因子となることから,厚生労働省では揮発性/準揮発性有機化合物(13物質)に室内濃度指針値を定めている.近年,室内濃度指針値策定物質の代替化学物質による室内空気汚染が報告されるようになり,シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会において,室内濃度指針値の採用を新たに検討すべき化学物質リストが提案され,それらのリスク評価が進行中である.室内濃度指針値を新たに策定する際には,対象化学物質毎に妥当性の評価された標準試験法を提示する必要がある.また,室内濃度指針値の新規策定に際しては,ステークホルダーとの適切なリスクコミュニケーションや国民の不安を払拭するための効果的な低減策の提示が望まれる.そのためには,室内における主要な発生源を特定し,その発生源によってもたらされる定量的なリスク情報を提供する必要がある.本研究では,シックハウス検討会における審議に必要な科学的エビデンスを集積することを主たる目的として,研究組織内に【標準試験法グループ】と【リスク評価グループ】の2つのサブグループを設置した.
研究方法
【標準試験法グループ】では,室内濃度指針値の採用を新たに検討すべき化学物質について標準試験法を策定する.さらに,既存の室内濃度指針値策定13物質の測定法についても,最新の分析技術を基に汎用性の高い標準試験法に改訂し,国内・国際規格化を推進する.【リスク評価グループ】では,室内環境中の多種多様な消費者製品から放散されるVOCsについて, 放散源の特定および曝露評価ならびにハザード評価の両面から研究を実施する.
結果と考察
【標準試験法グループ】
室内濃度指針値代替化学物質の調査研究:室内濃度指針値策定化学物質の用途として可塑剤について,文献を調査して最新情報を収集した.代替可塑剤については,室内空気中の実態調査,製品からの放散試験,ハザード情報の収集等を計画的に実施することが重要であると考えられた.
室内空気中総揮発性有機化合物(TVOC)試験法の開発:室内空気質に対する消費者製品等から放散するVOCsならびに建築物自体から放散するVOCsの寄与を評価するために,一般の居住住戸におけるTVOCの放散量/放散速度の総体的な評価を実施した.
室内空気中揮発性有機化合物 (VOC)・準揮発性有機化合物 (SVOC) 試験法の開発:捕集剤に粒状活性炭を用いた捕集管を用い,二硫化炭素を抽出溶媒とした標準試験法を確立し,妥当性評価を行った.
室内空気環境汚染化学物質の標準試験法の国内規格化:DBPおよびDEHPについて改定指針値に対応可能な標準試験法を策定し,日本薬学会編 衛生試験法・注解2015:追補2019に公表した.
室内空気環境汚染化学物質の標準試験法の国際規格化:国内規格化されたDBPおよびDEHP試験法をISO 16000-33: 2017に提案する検討を進めた.
室内空気環境汚染化学物質のオンサイト試験法の開発:バックグラウンド試験,トラベルブランク試験,回収試験を行い,実用化のための諸条件を検討した.

【リスク評価グループ】
定常型放散源の探索・定量的リスク評価:レースカーテン製品の放散試験を行い,測定対象となる化合物の放散速度データを解析し,製品のベイクアウトによるVOCs低減化が有用であることを示した.
瞬時型放散源の探索・定量的リスク評価:スプレー製品からのフタル酸エステル類およびグリコールエーテル類の抽出方法を構築し,定量分析を行った.製品使用時の平均室内空気濃度を推定し,DEHPおよびDBPの室内濃度指針値の1/100以下であることを明らかにした.
ハザード情報収集・評価および国際的な規制動向の調査:シックハウス検討会における初期曝露評価・初期リスク評価を実施したVOC 5物質について,ハザード情報を収集した.また,既存の室内濃度指針値策定物質に関するハザード情報について,各物質の室内濃度指針値策定以降の情報を収集した.
気道刺激性および皮膚刺激性に関する情報収集・不足データの補完:初期曝露評価および初期リスク評価の終了した物質について,気道刺激性および皮膚刺激性に関する毒性情報を収集した結果,MIBKの有害性が高いことが示唆された.
吸収・分布・代謝・排泄に関する情報収集不足データの補完:室内空気環境汚染化学物質調査において検出された化学物質のうち,酢酸エチル,酢酸ブチルおよびMIBKについて,体内動態に関する論文を調査した.
結論
シックハウス検討会に研究成果を随時提供することにより,円滑な運営に引き続き貢献していく.さらに,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課化学物質安全対策室の担当官と定期的に協議することにより,行政ニーズの把握と支援体制の構築を強化していく.

公開日・更新日

公開日
2019-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201825017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
43,000,000円
(2)補助金確定額
43,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 31,011,026円
人件費・謝金 3,387,148円
旅費 1,786,131円
その他 6,815,911円
間接経費 0円
合計 43,000,216円

備考

備考
216円を自己資金として充当した。

公開日・更新日

公開日
2021-09-07
更新日
-