家庭用品中有害物質の試験法及び基準に関する研究

文献情報

文献番号
201825015A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品中有害物質の試験法及び基準に関する研究
課題番号
H29-化学-指定-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大嶋 智子(仲村 智子)(大坂健康安全基盤研究所 衛生化学部)
  • 西 以和貴(神奈川県衛生研究所 理化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(家庭用品規制法)」により、21種類の有害物質について指定家庭用品に含まれる有害物質の含有量や溶出量について基準が定められている。これらの有害物質について、現在の分析技術水準から乖離した分析機器や有害な試薬の使用が問題となっており、試験法の改正が求められている。また、対象有害物質について新たなハザード情報や曝露に関する知見を加え、現行基準値の見直しを検討したり、現行の「検出されないこと」とされている有害物質の基準に対して、基準値を設定したりする必要がある。さらに、有害性が懸念される代替物質の使用や、生活様式の多様化に伴う新形態の家庭用品の創出、及び新たな化学物質の使用可能性もあり、健康被害の発生が懸念される。本研究では、現行の家庭用品規制法における有害物質の改正試験法の開発及び規制基準値改正、並びに現行規制基準では対象外の家庭用品及び有害物質に対する規制基準設定に資する情報収集を目的として、溶剤3種類(メタノール、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン)、防炎加工剤3種類(TDBPP、BDBPP化合物、APO)及び防虫剤2種類(ディルドリン、DTTB)について、キャピラリーカラムを用いたGC-MSを用いた試験法を検討すると共に、それらのハザード及び曝露情報を収集し、基準値について検討する。さらに、新規に対象とすべき家庭用品又は有害物質について、諸外国の規制基準、健康被害状況等を調査し、規制基準設定の是非の検討に必要な情報を提供する。
研究方法
試験法の改正では、溶剤は試料の溶解溶媒及び実試料に含まれる規制対象外の物質との分離の検討、並びに実試料による添加回収試験を行った。防炎加工剤はGC-MS分析時の誘導体化法及びサロゲート法の検討、防虫剤は精製方法及び実試料による添加回収試験を行った。ハザード及び曝露情報の収集では、防虫剤2種類及び防炎加工剤3種類について国際的な研究機関等の評価文章を中心に、体内動態・代謝、ヒト及び実験動物に対する毒性情報並びに許容濃度等について収集・整理して得られたハザード情報と、曝露情報とを比較して基準値について検討した。諸外国等の規制基準等に関する情報収集では、欧州を中心に繊維製品中の有害物質について規制基準設定の動きがあることから、その動向や国際的な試験法についても併せて調査した。また、米国における溶剤の規制状況も調査した。
結果と考察
溶剤では、溶解溶媒に複数の溶媒を検討したところ、乳酸エチルが最も適していた。また、エアゾル製品から高頻度で検出される酢酸エチル、メチルエチルケトン等と対象3物質はクロマトグラム上で十分な分離が確認でき、実試料による添加回収率で良好な回収率が得られた。防炎加工剤では、BDBPP化合物は誘導体化にトリメチルシリルジアゾメタンを使用することで低濃度での分析が可能なこと、誘導体化試薬の影響でTDBPP化合物の回収率が低下すること等がわかった。そして、誘導体化無しで測定し、BDBPP化合物の含有が疑われる場合には、メチル誘導体化による確認を行うことが望ましいと考えられた。防虫剤では、ディルドリン及びDTTBの同時抽出及び精製法を開発した。ディルドリンは試料マトリックス存在下でDTTB誘導体化試薬の影響でレスポンスが低下し、GC-MS測定時は別々に測定することとした。精製法については、Bond Elut PRSを用いることで夾雑物質を除去し、ディルドリン及びDTTBを損失なく回収できる効果的な精製法を開発することができた。この試験法にて添加回収試験を行い、両物質とも良好な回収率が得られた。防虫剤2種類並びに防炎加工剤3種について、ハザード及び曝露に関する情報収集を実施し、収集した情報を基にリスク評価を行った。その結果、防虫剤は現行基準値改正の必要性はなく、防炎加工剤は現行試験法の検出下限値を基準値として設定することが望ましいと考えられた。なお、今回検討した有害物質は一部情報が不足しており、新たな知見が得られた場合は当該基準値の見直し等を検討することが必要と考えられた。規制対象外の有害物質等について欧米の動向を調査し、欧州における衣類等に含まれる有害物質に関する新たな規制に関する情報を入手した。また、米国の動向としてジクロロメタンの規制に関する情報を入手した。
結論
溶剤及び防虫剤については、現行法よりも高感度、高精度な分析法が開発できた。今後、開発した試験法について研究代表及び分担者の各機関が連携して、妥当性評価を実施する。ハザード情報及び曝露情報の収集について、防虫剤2種類及び防炎加工剤3種類を対象とし、基準値について検討した。欧州における衣類等に含まれる有害物質に関する新たな規制並びに米国のジクロロメタンの規制動向に関する情報を入手した。

公開日・更新日

公開日
2019-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201825015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,000,000円
(2)補助金確定額
16,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,977,940円
人件費・謝金 0円
旅費 204,886円
その他 6,817,709円
間接経費 0円
合計 16,000,535円

備考

備考
超過分は自己資金(535円)にて補填した

公開日・更新日

公開日
2021-09-07
更新日
-