薬害資料データ・アーカイブズ基盤構築とその為の体制整備

文献情報

文献番号
201824023A
報告書区分
総括
研究課題名
薬害資料データ・アーカイブズ基盤構築とその為の体制整備
課題番号
H30-医薬-指定-009
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
藤吉 圭二(追手門学院大学 社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 哲彦(関西学院大学 社会学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
6,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の最終目的は、戦後の薬害事件に関連する資料を整理・公開して誰もが閲覧・活用できるようなアーカイブズを構築し、それを通じて薬害を二度と起こすことのないような社会の構築に寄与することである。とはいえ、このような遠大な目的は、小さな本研究班が数年活動した程度で達成できるものではない。本研究班ができるのは、この目標に向けて薬害アーカイブズを構築する要素を一つひとつ着実に整備していくことである。
研究方法
 今年度も昨年度にひきつづき「薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築」を目標とし、データベース構築に欠かすことのできない基盤づくりに取り組む。具体的には、薬害被害者団体が所蔵する資料のうち、関係者の高齢化により手当の緊急性が高いものを対象に、目録作成を進める。基本的にはファイル(簿冊)レベルでの目録作成完了を目標とし、アイテム(件名)レベルについてはファイルレベルの作業がひと段落したところで検討した。
 また一方で、薬害被害者に対して実施している証言インタビュー映像の分析を実施し、それを今後どのように活用できるか、具体的にはインタビュイーの権利や利益を損なわないようなかたちで閲覧提供などが可能かどうかを検討する。
結果と考察
 資料整理については、本年度も継続して主として福岡スモン関係資料の目録化を進めた。全体で30箱分ある資料について、ファイル(簿冊)レベルでの目録化作業を実施した。作業は2016年度までに全体の3分の2まで完了していたので、残り3分の1のファイルレベルでの目録化を進めた。ただし、作業途中において作業者によりファイル名を付与する際のバラつきが見られるようになったため、あらためてその調整に時間を要したが、この作業を通じてファイル名の付与方法について検討を深めることができたのは収穫であった。この先、一部についてはアイテムレベルでの目録作成およびスキャニングを実施し、デジタルベースでの公開を可能とするための準備も進めていく。公開準備にあたってはセンシティブ情報の保護等の観点から当事者の視点での検討を被害者団体に要請していく予定である。
 資料整理の作業と並行して作業の進捗に関する報告を、国内各地の被害者団体を訪れて実施した。今年度は、東北、東京、名古屋の被害者団体、弁護団に向けた報告を実施し、作業の現状について情報共有を図るとともに、現地での資料整理等についての疑問や課題に、可能な範囲で答えるように努めた。
 被害者証言のインタビュー映像の分析については、従来通り、まずはトランスクリプトを整える作業から始め、いくつかの証言映像のシークエンスおよびMCD(成員カテゴリー化装置)の使用状況について試験的に分析した。それらを総合的にみたところ、従来と同様に、形式的には薬害被害特有のシークエンスがあると同時に、患者や被害者といった一連のカテゴリーの使用が観察できた。また、薬害ディスコース(佐藤 2016, 2018)の使用という観点からは、展示準備という段階にいたるには、証言映像展示に一般的に見られるような継時的な展示が適切なのか、それとも薬害ならではの記述的特徴でそれらのディスコースを横断的に展示することが適切なのか、などについて、技術的な工夫も含めて検討が必要であることが示された。
 そのような検討を具体的な資料に基づいて行うために、幾つかの証言映像展示を調査・観察し、併せてインタビューを行った。調査先は、国立ハンセン病資料館、ひめゆり平和祈念資料館、国立療養所沖縄愛楽園である。
結論
 本研究の最終的な目標は、戦後の薬害事件に関連する薬害資料を対象に、その保存状況の調査、整理を踏まえ、そうした資料を共有・活用するシステムとして「薬害資料データ・アーカイブズ」を構築することである。この最終目標を念頭に、今年度は、(1)大阪人権博物館での資料整理と調査、(2)資料整理・調査に関する当事者団体、弁護団との情報共有、(3)薬害被害者証言インタビュー映像の分析に取り組んだ。この結果、大阪人権博物館での安定した資料整理・調査の目処が立つと共に、今後どのように薬害資料を活用していくかに関する意識を薬害被害当事者の間にも具体的に持っていただくことができたという感触を得た。息の長い作業になると見込まれるが、今後も当事者との信頼関係を大事にしつつ調査、研究を推進していきたい。

公開日・更新日

公開日
2019-07-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201824023C

収支報告書

文献番号
201824023Z