文献情報
文献番号
201824021A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な血液の安定供給を目指した血液事業の今後の在り方に関する研究
課題番号
H30-医薬-指定-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 日野 学(日本赤十字社)
- 中島 一格(日本赤十字社 )
- 津田 昌重(一般社団法人 日本血液製剤機構)
- 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血液事業は献血者の確保ならびに健康保護から始まり、製剤の安全性の向上および安定供給、さらには医療機関での適正使用にまで及んでいる。
本研究は、血液製剤の安全性と安定供給および献血者の健康保護を基盤として、現状および将来を見据えて今後の血液事業の在り方を総合的に研究し、政策提言することが目的である。
本研究は、血液製剤の安全性と安定供給および献血者の健康保護を基盤として、現状および将来を見据えて今後の血液事業の在り方を総合的に研究し、政策提言することが目的である。
研究方法
血液製剤の安全性や安定供給などに関する論文や行政資料、日赤資料、国際会議資料、(株)日本医療データセンターのデータ等をレビューし、結果を血液事業の全体像の中で位置づけた。
結果と考察
1.献血状況の経年変化と献血者確保について
男性では、10、20、30歳代でこの20年間に献血者数は低下していた。特に10および20歳で半減していた。しかし、都市部を中心に40歳代では献血者数が増加していた。この年齢層が献血を支えていると言っても過言ではない。女性は10、20歳代の落ち込みが男性より大きく、平成7年の3割前後に低下していた。40歳代については男性とは違って平成7年に比べて減少しているものの減少割合は少なく、献血者低下をある程度食い止めていると考えられる。
人口の少子高齢化が進行している地域などで献血状況が悪かった。また、都市部でも悪いところが散見された。一方、北海道や広島県などの市町村では献血状況が良いところもあった。
2.新たな感染症に対処するための新技術の導入について
皮膚常在菌の血液製剤への混入を低減する目的で初流血除去を実施して、特に血小板製剤中での細菌の増殖を防いでいる。加えて近年は、HEV対策にも取り組んでいる。HEV-NATの便益は、患者1人あたりの社会的損失を37万4,216円回避することができる。
3.献血者の体重基準と健康保護について
献血という行為について自ら意思決定できる新たな成人年齢である18歳という年齢および献血者の健康保護の観点から年齢と体重を考慮すると、献血基準を男女とも「年齢18歳以上」かつ「体重50kg以上」かつ「HB12.0g/dL」に変更することが望ましいと考える。特に女性献血者が減少するが、それを補う方策を併せて考える必要がある。
4.医療機関での血液製剤運用方法の改善について
本調査により、大中規模医療機関での血液製剤運用方法に関する認識がある程度明らかになった。但し、本調査は輸血部門の意向が反映されたものであり、病院全体の意見ではない点に注意が必要である。大規模病院ではすでに赤血球製剤の廃棄率は低く抑えられているが、さらに廃棄削減が必要と考えている施設が多く、そのための有効期限延長の要望も多いことが判明した。また、適正使用の推進や異型適合血の理解を深めるために院内教育体制の整備が必要であることも浮き彫りとなった。今後の血液製剤運用方法の改善のためには、血液事業の中での施設内での輸血管理・実施の支援体制並びに各施設と血液センターとの連携の強化が必要と考えられた。
5.血漿分画事業について
献血由来の原料血漿を有効利用するためには連産品である血漿分画製剤の需要バランスを適正化する必要があり、①免疫グロブリン製剤の製造収率を改善することにより必要原料血漿量を抑制すること、②免疫グロブリン製剤以外の製剤については、国内自給率を向上させることや効能追加により使用量の増加を図ること、③輸出貿易管理令が改正されたことに伴い自給率を満たした免疫グロブリン製剤以外の製品を海外に輸出することなどが考えられる。薬価については、血漿分画製剤はその価値に見合った単品単価契約による適切な取引がなされるよう尽力し、基礎的医薬品への指定制度を活用して薬価を維持することが肝要である。
6.血液事業関係者の血液事業の課題認識と解決方策について
血液事業に精通している各分野の関係者から問題点や問題の重要度、今後の解決方策等についての意見を集約した。さらに、インターネットを通じて厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の各調査会の議事録から議題等を抽出し、血液事業関係者の問題意識と厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の各委員会の論点との間の乖離状況を調べた。厚生労働省調査会との認識の乖離が、時宜を得た血液事業の改善を阻害している要因の1つと考えられる。
男性では、10、20、30歳代でこの20年間に献血者数は低下していた。特に10および20歳で半減していた。しかし、都市部を中心に40歳代では献血者数が増加していた。この年齢層が献血を支えていると言っても過言ではない。女性は10、20歳代の落ち込みが男性より大きく、平成7年の3割前後に低下していた。40歳代については男性とは違って平成7年に比べて減少しているものの減少割合は少なく、献血者低下をある程度食い止めていると考えられる。
人口の少子高齢化が進行している地域などで献血状況が悪かった。また、都市部でも悪いところが散見された。一方、北海道や広島県などの市町村では献血状況が良いところもあった。
2.新たな感染症に対処するための新技術の導入について
皮膚常在菌の血液製剤への混入を低減する目的で初流血除去を実施して、特に血小板製剤中での細菌の増殖を防いでいる。加えて近年は、HEV対策にも取り組んでいる。HEV-NATの便益は、患者1人あたりの社会的損失を37万4,216円回避することができる。
3.献血者の体重基準と健康保護について
献血という行為について自ら意思決定できる新たな成人年齢である18歳という年齢および献血者の健康保護の観点から年齢と体重を考慮すると、献血基準を男女とも「年齢18歳以上」かつ「体重50kg以上」かつ「HB12.0g/dL」に変更することが望ましいと考える。特に女性献血者が減少するが、それを補う方策を併せて考える必要がある。
4.医療機関での血液製剤運用方法の改善について
本調査により、大中規模医療機関での血液製剤運用方法に関する認識がある程度明らかになった。但し、本調査は輸血部門の意向が反映されたものであり、病院全体の意見ではない点に注意が必要である。大規模病院ではすでに赤血球製剤の廃棄率は低く抑えられているが、さらに廃棄削減が必要と考えている施設が多く、そのための有効期限延長の要望も多いことが判明した。また、適正使用の推進や異型適合血の理解を深めるために院内教育体制の整備が必要であることも浮き彫りとなった。今後の血液製剤運用方法の改善のためには、血液事業の中での施設内での輸血管理・実施の支援体制並びに各施設と血液センターとの連携の強化が必要と考えられた。
5.血漿分画事業について
献血由来の原料血漿を有効利用するためには連産品である血漿分画製剤の需要バランスを適正化する必要があり、①免疫グロブリン製剤の製造収率を改善することにより必要原料血漿量を抑制すること、②免疫グロブリン製剤以外の製剤については、国内自給率を向上させることや効能追加により使用量の増加を図ること、③輸出貿易管理令が改正されたことに伴い自給率を満たした免疫グロブリン製剤以外の製品を海外に輸出することなどが考えられる。薬価については、血漿分画製剤はその価値に見合った単品単価契約による適切な取引がなされるよう尽力し、基礎的医薬品への指定制度を活用して薬価を維持することが肝要である。
6.血液事業関係者の血液事業の課題認識と解決方策について
血液事業に精通している各分野の関係者から問題点や問題の重要度、今後の解決方策等についての意見を集約した。さらに、インターネットを通じて厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の各調査会の議事録から議題等を抽出し、血液事業関係者の問題意識と厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の各委員会の論点との間の乖離状況を調べた。厚生労働省調査会との認識の乖離が、時宜を得た血液事業の改善を阻害している要因の1つと考えられる。
結論
血液事業は献血者の確保ならびに健康保護から始まり、製剤の安全性の向上および安定供給、さらには医療機関での適正使用にまで及んでいる。本研究により、血液製剤の安全性と安定供給および献血者の健康保護に関わる諸課題の実情を明らかにすることができた。次年度以降に研究を繋ぎ、課題解決のための政策提言を行なっていく。
公開日・更新日
公開日
2021-01-06
更新日
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