文献情報
文献番号
201824017A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ薬剤師の専門性の検討とそのアウトカムの調査
課題番号
H29-医薬-指定-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
今井 博久(東京大学 大学院医学系研究科 地域医薬システム学講座)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤 秀昭(医療法人社団明芳会イムス三芳総合病院 薬剤部)
- 中尾 裕之(宮崎県立看護大学)
- 松原 和夫(京都大学・医学部付属病院薬剤部)
- 益山 光一(東京薬科大学・薬事関係法規)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,190,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の目的は、地域包括ケアシステムにおける「かかりつけ薬剤師」の専門的な機能や役割を検討し、専門性や有用性などについて理論および実証分析を行うことである。本年度では、主に長期処方の分割調剤に焦点を当ててかかりつけ薬剤師の機能を検討し、また多剤処方の改善介入の方法論の開発のためにパイロット(予備的)研究を実施した。さらに患者が薬局に安心して相談できるための環境の構築に向けて薬剤師へのアンケート調査も実施した。
研究方法
がん化学療法を行い服薬指導した患者を対象にアンケート調査を行い、長期投薬の分割調剤の導入について患者の意識調査を実施し分割調剤の普及促進対策について検討した。また、乳癌術後ホルモン治療薬投与患者を対象として分割調剤を実施し、3症例について症例検討を行った。さらに、かかりつけ薬剤師の機能として、高齢患者の不適切な多剤処方に対して改善介入があり、本年度はその具体的な方法(保険者のデータ取扱い・医師との連携手順・行政との手続き方法など)をひと通り実施した。更に、患者が薬局に安心して相談できるための環境の構築に向けて薬剤師へのアンケート調査も実施した。
結果と考察
長期投薬の分割調剤の導入について患者の意識調査を実施した結果、分割調剤を希望する患者は希望しない患者と比較して、抗がん剤を服用している、病院・診療所から提供された検査結果の報告書を保険薬局に提出している、服用期間が 30 日分以上のお薬が処方されている、「かかりつけ薬局」に関心がある、これらの各項目で高い割合を示した。分割調剤を希望する患者は、薬剤師に検査値報に基づきお薬の副作用を回避するなど薬学的な管理を薬剤師に期待していることが示唆された。
乳がん患者の3症例を検討した。重要な症例として、閉経前右乳がんに対して、術後ホルモン療法が開始となった患者症例を示す。遠方に在住しており頻繁な通院は困難であったが、京大病院での治療を希望したため、患者のかかりつけ薬局と連携した薬物治療管理を実施した。患者が遠方の自宅に帰る前に、かかりつけ薬局に連絡して分割調剤の流れを確認した。この薬局に来局の際に患者の副作用モニタリングを実施して頂き、トレーシングレポートにて報告を受け、カルテに貼付した。180日処方に対して60日ごとの分割調剤を実施した。このような、遠隔地に居住し頻繁な来院が難しい患者、服薬管理や副作用発現に不安を持つ患者に有用であることが明らかになった。
また、患者が薬局に安心して相談できるための環境の構築に向け、患者が服用する薬剤の個別の内容以外で、これまで相談を受けた内容を薬剤師に調査した結果、検査値、アドヒアランス、健康に関係する内容の相談が多いことが判明した。それらの内容について患者向けチラシを作成し、チラシを使用した場合と使用しない場合で相談数に影響があるか調査を実施したところ、チラシの使用により有意に相談数が増え、患者も相談しやすい状況がわかった。
医薬分業が始まり40年ほどの時間が過ぎたが、その間に薬剤師に要請される役割は変化してきた。とりわけ、近年では「対物業務」から「対人業務」へのシフトが求められ、「かかりつけ薬剤師」として臨床的な専門性ある機能発揮が期待されている。長期処方の分割調剤や多剤処方の改善介入は地域包括ケアシステムの中で薬剤師が担う役割のひとつになるだろう。研究班の初年度である本年度に実施したアンケート調査や、小規模ながら症例検討およびパイロット研究は今後につながる調査研究になった。
乳がん患者の3症例を検討した。重要な症例として、閉経前右乳がんに対して、術後ホルモン療法が開始となった患者症例を示す。遠方に在住しており頻繁な通院は困難であったが、京大病院での治療を希望したため、患者のかかりつけ薬局と連携した薬物治療管理を実施した。患者が遠方の自宅に帰る前に、かかりつけ薬局に連絡して分割調剤の流れを確認した。この薬局に来局の際に患者の副作用モニタリングを実施して頂き、トレーシングレポートにて報告を受け、カルテに貼付した。180日処方に対して60日ごとの分割調剤を実施した。このような、遠隔地に居住し頻繁な来院が難しい患者、服薬管理や副作用発現に不安を持つ患者に有用であることが明らかになった。
また、患者が薬局に安心して相談できるための環境の構築に向け、患者が服用する薬剤の個別の内容以外で、これまで相談を受けた内容を薬剤師に調査した結果、検査値、アドヒアランス、健康に関係する内容の相談が多いことが判明した。それらの内容について患者向けチラシを作成し、チラシを使用した場合と使用しない場合で相談数に影響があるか調査を実施したところ、チラシの使用により有意に相談数が増え、患者も相談しやすい状況がわかった。
医薬分業が始まり40年ほどの時間が過ぎたが、その間に薬剤師に要請される役割は変化してきた。とりわけ、近年では「対物業務」から「対人業務」へのシフトが求められ、「かかりつけ薬剤師」として臨床的な専門性ある機能発揮が期待されている。長期処方の分割調剤や多剤処方の改善介入は地域包括ケアシステムの中で薬剤師が担う役割のひとつになるだろう。研究班の初年度である本年度に実施したアンケート調査や、小規模ながら症例検討およびパイロット研究は今後につながる調査研究になった。
結論
研究班の平成30年度の成果として、「地域包括システム」においてかかりつけ薬剤師が積極的に患者の薬物治療に関与することが患者の安全安心の治療につながり、またそれを実現するためには現状の地域医療システム(医師と薬剤師の連携、患者教育、薬局薬剤師の意識など)を変えて行かなければならないことが示唆された。長期処方の分割調剤の導入による、患者アウトカムへの影響、患者の動向、残薬調査など患者の服薬状況、薬局の労力や業務内容などについて今後の調査の方向性が明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2019-12-05
更新日
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