国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究

文献情報

文献番号
201824015A
報告書区分
総括
研究課題名
国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究
課題番号
H29-医薬-指定-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
  • 秋本 義雄(金沢大学 医薬保健学総合研究科 )
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本に入る偽造医薬品は、インターネットの個人輸入代行サイトを通じて専ら海外から送付されると考えられていた。平成29年1月にC型肝炎治療薬ハーボニー配合錠の偽造品が卸売販売業者を通じて,薬局から患者に渡る事案が発生し、我が国も偽造薬禍を免れないことが明らかになった。そこで、世界の偽造薬対策を継続的に調査するとともに、偽造薬による健康被害の発生や、個人輸入医薬品の保健衛生上の実態解明と真贋判定法の改善・改良を図る。以て、偽造品の迅速な発見、鑑別、遡及調査を可能にし、我が国の偽造薬対策の参考に資する。
研究方法
(1)国際的な模造医薬品対策の進展:文献・情報の検索・収集・整理並びに「医薬品の品質と公衆衛生」国際会議に参加。
(2)模造薬による健康被害に関する調査:PubMedに検索式「(counterfeit OR fake OR bogus OR falsified OR spurious) AND (medicine OR drug)」を適用して2018年3月から2019年2月までに検索した英語論文から、模造薬による健康被害の論文を抽出した。
(3)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの含有成分の同定:インターネットの個人輸入代行サイトを介して以前購入し、表示有効成分であるオルリスタットを含有しない偽造抗肥満薬Zenigalに含まれる未知成分を質量分析計(MS)により分析し、同定した。
(4)個人輸入メトホルミンの真正性と品質並びにテラヘルツ波(THz)分光分析の応用:個人輸入代行サイトを介して購入したメトホルミン500 mg錠と徐放錠(500、750 及び1000 mg)計40サンプルの真正性調査とUSPに準拠した品質試験を行った。また、THz波分光分析を行い、品質不良薬や偽造薬の鑑別法として有用性を見た。
(5)個人輸入アモキシシリン/クラブラン酸配合剤の保健衛生調査:インターネット上の日本語個人輸入代行サイトを介してアモキシシリン/クラブラン酸配合剤500 mg/125 mgを購入した。日本向け逆輸入販売サイトからは125 mg/62.5 mg、250 mg/125 mgを購入。個人輸入代行サイト上の記載事項、発送形態および入手製品の外観を観察した。
結果と考察
(1)国際的な模造医薬品対策の進展:米国では医薬品関連事犯の42.6%(20件)が麻薬以外の偽造関連事犯だった。EUは2019年2月安全機能委任規制を施行した。インターポールのパンゲア作戦XI で3,671サイトが閉鎖された。WHOは偽造被疑薬の試験手引きを公表した。欧州評議会医療製品犯罪条約の締約国は15か国となった。英国オックスフォードで初の規格外薬・偽造薬会議「医薬品の品質と公衆衛生」が開催された。
(2)模造薬による健康被害に関する調査:模造薬による健康被害はA型ボツリヌス神経毒素を含む偽造Neuroxin○Rにより9名、及び合成麻薬U-47700 を含む偽造Xanaxによる健康被害1名であった。
(3)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの含有成分同定:Q3スキャンによりm/z 152、280のピークを検出した。m/z 280のピークは標準品と比較し、本薬には含有表示がない抗肥満作用を有するシブトラミンであった。1カプセル中のシブトラミン含有量を定量したところ、平均635 ng/1カプセルであった。m/z 152のピーク同定には至らなかった。
(4)個人輸入メトホルミンの真正性と品質並びにTHz波分光分析の応用: 真正性調査では、7サンプル(17.5%)が真正品、33サンプル(82.5%)には回答が得られなかった。台湾の発送業者は医薬品販売業免許を持っていなかった。品質試験の結果、6サンプル(15%)が不適合となった。THz波分光分析の結果、全ての個人輸入したメトホルミン錠と正規品の吸収係数、誘電率、誘電損失、屈折率に差が認められなかった。
(5) 個人輸入アモキシシリン/クラブラン酸配合剤の保健衛生調査:サイト上で必要な記載が不十分あるいは記載内容に問題があるサイトが多く、特定商取引法や薬機法に抵触する可能性がある。また、送付された一部のサンプルでは外箱および添付文書の欠落、日本語の説明文書がないなど、製品情報を十分に得ることができないために医薬品が適切に使用されない恐れがあった。
結論
偽造医薬品による健康被害報告は絶えず、米国や欧州、国際機関は偽造医薬品対策を強化している。個人輸入サイトや送付製品に帯同する情報の不適切、不十分、あるいは製品の規格不適合が認められ、重要な治療薬の自己判断での個人輸入は厳に慎むべきことを消費者に徹底する必要がある。LC/MSは、偽造が疑われる医薬品中の未知含有成分を同定・定量する有用な手段であった。

公開日・更新日

公開日
2019-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-06-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201824015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
2,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 730,175円
人件費・謝金 0円
旅費 529,050円
その他 279,775円
間接経費 461,000円
合計 2,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-06-03
更新日
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