血漿分画製剤の安定的確保・製造供給体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201824011A
報告書区分
総括
研究課題名
血漿分画製剤の安定的確保・製造供給体制のあり方に関する研究
課題番号
H28-医薬-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院政策科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 津田 昌重(一般社団法人 日本血液製剤機構)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院)
  • 松田 利夫(北里大学)
  • 谷 慶彦(大阪府赤十字血液センター)
  • 長井 一浩(長崎大学附属病院細胞療法部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
7,920,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、血漿分画製剤の安定供給のための関係者・関係機関の連携体制や機能分化のあり方などを提示し、体制構築のために直ちに役立つ政策研究を行なうことが目的である。
危急時に採漿から医療機関への製剤供給に至る過程にどのような制度上および製造・供給・搬送体制に関する課題や問題点があるかを明確にし、血漿分画製剤の安定的確保・製造供給体制の在り方の検討を網羅的に行なうことも目的である。
さらに血漿分画事業に関してAPECやラオス、インドネシア、ベトナムなど国際的な動向を調査するとともに海外諸国に対する人道支援や技術協力なども含めた血漿分画製剤産業の将来像を検討し、研究結果をもとに危機管理や国際協力に関する政策提言を行なうことが目的である。
研究方法
 日本赤十字社および日本血液製剤機構が作成しているBCPの特徴を分析した。また、豪州とカナダの危機管理計画の記載内容を分析した。さらにこれらの結果を用いてわが国でC-BCPを作成する際の必要項目を提示した。
第5回APEC Blood Safety Policy Forumに参加し、政策等を整理した。その際、ラオス、ベトナム、インドネシアに関する情報も得た。
医療機関における災害時等の輸血用血液製剤ならびに血漿分画製剤供給不足への対策準備状況の調査を行い解析した。
そのほか、公表資料やガイドライン、論文、Webサイトなどの各種公開情報をもとに調査した。
結果と考察
本研究では、①血漿の確保、②血漿分画製剤の製造工程、③原材料の輸送および製品の流通の各段階において、自然災害、人為的災害等がもたらす影響を考慮し、製剤別、工程別にその脆弱性を明らかにし、脆弱性をカバーする対策について検証した。とりわけ、血漿の確保に関してアジア諸国との協力が必要である。
 また、有事に対応するためには、BCP等の危機管理計画を作成し、臨床的ニーズに基づき倫理原則に従って患者に必要な血液製剤が確実に届くようにしなければならない。計画作成により関係者はこれらの状況に対応するために必要な連携体制を確保し、連絡網を整備するとともに管理戦略を立てることができる。そして、全体的に血液製剤の使用を削減して、最優先の緊急患者のために必要な供給量を確保できる。
関係者を包括したBCPを作成する際の検討事項を網羅的に提示した。本研究成果をもとにComprehensive Business Continuity Plan(以下、“C-BCP”と称す。)の策定および関連医療機関と血液センター、血漿分画製剤製造供給事業者、行政との連携構築が可能となる。
 さらに、近年急速に普及してきている遺伝子組換え製剤が不足したときの代替手段についても検討した。遺伝子組み換え製剤については、①血液凝固第Ⅷ因子製剤の供給企業数が増加したこと、②同一企業が複数の血液凝固第Ⅷ因子製剤を供給していることから、血液凝固第Ⅷ因子製剤の供給体制が強化され、血液凝固第Ⅷ因子製剤の安定供給に対する懸念は薄れている。加えて、日本国内で生産される機能代替製剤が血友病A治療薬として承認され、今後本剤が普及することが予想されことから、今後は血友病A治療薬の供給をより一層確保しやすくなると考えられる。
廃棄血漿が多いアジア諸国に対して、原料血漿として使用することができる技術協力やGMPなどの規制作成の支援を行っていくべきである。
原料血漿の安定した価格での確保のための採血・保管・搬送方法についても検討した。現状の輸血用血液の採血から余剰血漿をできるだけ多く確保する方策だけでは、需要増大する原料血漿の確保は困難となることが予想される。輸血用血液のみならず、今後は原料血漿に特化した採血も講じていく必要がある。それにかかる経費の増大については、保管検体の分離保管や検査項目の見直しを含めた事業の効率化が求められる。
インドネシアは、国内の血液事業を充実させ、先進国基準にレベルを向上させることに専念していた。また、APECの「血液の安全性に関するイニシアチブ‐白書‐」から、その政策の方向性を分析した。血液製剤のスクリーニング検査と製剤化工程の中央集約化とGMPなどの行政監督制度の統一化に重点を置いていた。
結論
血液事業関係者が協力・連携して包括的な活動として行うことで国や地域、そして組織全体の事業継続能力が高まる。官民が一体となって包括的なBCP(C-BCP)を策定しなければならない。
また、血漿分画製剤のサプライチェーンを維持するためには、まだ十分な国内製造体制が整っていないアジア各国との連携が最も効果的であると考えられる。
 遺伝子組み換え製剤を含めて、血液事業を国内だけではなく、アジア太平洋諸国を俯瞰して進めていかねばならない。

公開日・更新日

公開日
2019-09-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-30
更新日
2021-01-18

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201824011B
報告書区分
総合
研究課題名
血漿分画製剤の安定的確保・製造供給体制のあり方に関する研究
課題番号
H28-医薬-指定-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院政策科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 津田 昌重(一般社団法人 日本血液製剤機構)
  • 友清 和彦(一般財団法人 化学及血清療法研究所)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院)
  • 長井 一浩(長崎大学附属病院)
  • 谷 慶彦(大阪府赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は想定される事象に対する血漿分画製剤の安定供給に資するために採漿から医療機関への供給に至る過程にどのような課題や問題点が存するかを明らかにして、それらの解決方策を提示するものである。
研究方法
現行法令や健康危機管理事象に対する種々の行政計画などを分析して、その問題点を同定することで危機管理事象が生じた際の血液事業が円滑に運営されるための計画策定の可能性を検討した。併せて、米国AABBの災害対応ハンドブックの内容を明らかにし、その特性を分析し、わが国で同種の計画を策定するために解決せねばならない論点を整理した。
次に、法令違反など人為的原因による供給危機を防止するために、製造事業者のコンプライアンス・ガバナンス体制のあり方を検討した。また、血液事業分野でのAPECの会議の進捗状況や今後の国際的な血液事業の政策の方向性などを調べた。
結果と考察
コンプライアンスの要は、“予防処置”と“リスクマネジメント”であり、コンプライアンス重視の組織体制が構築され、それに支えられた形で、安心と安全、製剤の安定供給を可能とする信頼性保証体制が機能する必要がある。
また、血漿分画製剤を製造している国内3社を主体にした危急時の代替的製造体制の構築や平時と緊急時の法体制や各種規則等についての比較研究を行なうことにより、血漿分画製剤の平時・有事における安定的確保・製造供給体制のあり方を提示する必要がある。
特に、血漿分画製剤は、止血・凝固領域に関する急性・慢性疾患の治療に不可欠な生物由来製剤である。また遺伝子組換え製剤への切り替えが進んでいるが、一部の希少疾患治療薬については、企業としての社会的責任に基づいて製造されている背景もあり、安全性を含め開発コストを要する遺伝子組換え製剤への切り替えは難しい。本研究では、①血漿の確保、②血漿分画製剤の製造工程、③原材料の輸送および製品の流通の各段階において、自然災害、人為的災害等がもたらす影響を考慮し、製剤別、工程別にその脆弱性を明らかにし、脆弱性をカバーする対策について検証する。平成28年度においては、平成27年度に作成した脆弱性評価フローの見直しと血漿分画製剤毎の評価を行うとともに脆弱性の克服に向けた対応を検討した。
経済発展がめざましいアジア太平洋地域では、APECが設置され政治・経済政策、貿易等のみならず、経済的視点に立ちながら血液事業の問題も分科会を設けて討議されている。
原料血漿を確保する方法として、成分血漿採血があるが、これに要する費用が高額である。輸血用血液と同等の検査や品質を求めるのではなく、安全性に配慮しつつ人件費を削減するなどの方法を新たに考える必要がある。
 国内外の製造体制にも注目した。海外の血漿分画事業者と東南アジア諸国における血漿分画事業の動向を調査したところ、欧州や韓国の血漿分画事業者が東南アジア諸国で血漿分画工場建設を計画していたが、タイ以外では多くが頓挫していることがわかった。また、安全な原料血漿を確保するためのGMPが整備されていない国も存在する。
 世界的な血漿分画製剤の需要増に伴い、原料血漿の必要量は増加の一途をたどっていることから、東南アジア諸国でも自国で原料血漿を確保することが必要となってきている。自国の原料血漿による血漿分画製剤の自給率を向上させるには、国外の血漿分画事業者に製造を委託することを優先し、将来に環境が整った時点で工場建設を考えることが得策である。
有事に対応するためには、BCP等の危機管理計画を作成し、臨床的ニーズに基づき倫理原則に従って患者に必要な血液製剤が確実に届くようにしなければならない。計画作成により関係者はこれらの状況に対応するために必要な連携体制を確保し、連絡網を整備するとともに管理戦略を立てることができる。そして、全体的に血液製剤の使用を削減して、最優先の緊急患者のために必要な供給量を確保できる。
本研究では、関係者を包括したBCPを作成する際の検討事項を網羅的に提示した。本研究成果をもとにComprehensive Business Continuity Plan(以下、“C-BCP”と称す。)の策定および関連医療機関と血液センター、血漿分画製剤製造供給事業者、行政との連携構築が可能となる。
結論
 世界的な血漿分画製剤の需要増に伴い、原料血漿の必要量は増加の一途をたどっている。わが国とて例外ではない。国内自給を視野に入れて平時・有事にも一貫した安定的な血漿分画製剤事業を構築しなければならない。

公開日・更新日

公開日
2019-09-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-09-30
更新日
2021-01-18

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201824011C

収支報告書

文献番号
201824011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,920,000円
(2)補助金確定額
7,920,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 112,990円
人件費・謝金 3,800,701円
旅費 2,537,022円
その他 1,471,499円
間接経費 0円
合計 7,922,212円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-