危険ドラッグ及び関連代謝物の有害作用解析と乱用実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201824009A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグ及び関連代謝物の有害作用解析と乱用実態把握に関する研究
課題番号
H30-医薬-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原正明(国際医療福祉大学)
  • 浅沼幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科神経情報学分野)
  • 北市清幸(岐阜薬科大学薬物動態学教室)
  • 嶋根卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,631,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、様々な新規精神活性物質が危険ドラッグとして流通しており、乱用による健康被害の発生が社会問題となっている。これまでに、合成カンナビノイドおよびカチノン系化合物は、依存性や細胞毒性等の強力な有害作用を示すため、包括指定等による規制拡大がなされた。最近の問題としては、米国を中心にフェンタニル類縁化合物の流通が台頭し、過量摂取による死亡例が多発している。フェンタニル類縁化合物の有害作用を検証し、包括指定等の対応が急務である。本研究では、フェンタニル類縁化合物の有害作用解析、カチノン系化合物および合成カンナビノイドの検出手法に関する研究を実施した。合成カンナビノイドについては、生体からの検出を目論み、代謝産物の検出およびその機能解析を行った。また、危険ドラッグの乱用状況および周知に関する調査を実施し、より適切な危険ドラッグ対策手法の立案に関する考察を行った。
研究方法
新規精神活性物質であるフェンタニル類縁化合物の行動薬理学的解析および細胞による毒性評価を行い、有害作用予測法の妥当性を検討した。コンピュータシミュレーションによる危険ドラッグの有害性予測法に関する研究としては、フェンタニル類縁化合物についてインシリコ活性予測法として、構造活性相関(QSAR)法を用いてQSARモデル構築について検討した。検出系の研究としては、毒性発現における核内DNA結合タンパク質high mobility group box-1 (HMGB1)の役割を検討した。また、ヒト肝ミクロソームを利用して、合成カンナビノイドの代謝物産生をMS/MSおよびIT-TOF-MSにより測定した。疫学調査:音楽系の野外フェスティバルをフィールドとして、危険ドラッグならびに大麻乱用実態に関する携帯端末を活用したオンライン調査を実施した。
結果と考察
フェンタニル類縁化合物cyclopropyl fentanyl、methoxyacetyl fentanyl、ortho-fluorofentanyl、para-fluorobutyrfentanyl、paramethoxybutyrfentanylについて、動物実験とオピオイド受容体発現細胞による評価から、中枢作用強度ならびに毒性発現について予測できると考えられる。同様に、コンピュータシミュレーションによる有害性予測では、フェンタニル類縁化合物については、非常に相関性の高いQSARモデルが得られた。QSAR法でオピオイドµ受容体強度が予測可能であることから、有害性を予測できると考えられる。オピオイドµ受容体作用強度を指標に、QSAR解析を利用することにより、フェンタニル類縁化合物の包括規制への展開が期待できる。本研究における解析方法は、多くの類縁誘導体が存在する危険ドラッグの中枢作用強度の解析および細胞毒性などの有害作用予測に活用できることが示唆された。また、覚せい剤によるドパミン神経細胞における細胞毒性の発現において、核内DNA結合タンパク質HMGB1の誘導が関与していることが明らかになった。HMGB1は覚せい剤類似作用を示すカチノン系化合物などの危険ドラッグにより惹起される神経細胞毒性発現の共通分子となりうる可能性がある。さらに、合成カンナビノイドについては、代謝プロファイルの解析と異性体を含む構造解析法を確立した。LCによる全ての異性体のピーク分離と、MS/MSおよびIT-TOF-MSによる識別に成功した。疫学調査:音楽系の野外フェスティバルをフィールドとして、危険ドラッグおよび大麻乱用に関する実態調査を行った。129名より有効回答を得た。大麻の生涯経験率(過去1年経験率)は、16.3%(5.4%)であった。
結論
本研究より、フェンタニル類縁化合物は中枢興奮作用を有することが明らかになった。これらの薬物の中枢興奮作用は、オピオイドµ受容体を介して発現する作用であることが明らかになった。さらに、細胞毒性を惹起することから、フェンタニル類縁化合物は乱用することにより重篤な健康被害の発生が危惧される。コンピュータシミュレーションによるQSAR解析を利用することにより、フェンタニル類縁化合物の有害作用の推測が可能となり、包括規制への展開が期待できる。また、合成カンナビノイドの異性体同定および代謝プロファイルについては、機器分析による識別法を確立した。更に、本検討で見出したHMGB1はカチノン系化合物により惹起される神経細胞毒性発現の共通分子となりうる可能性がある。本研究の評価システムは、危険ドラッグの中枢作用および有害作用発現の迅速な評価法として有用であり、得られる科学データは規制根拠として活用できると考えられる。同時に、様々なイベントを通じて、危険ドラッグや大麻などの薬物依存症からの回復へ向かうための対策が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2019-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201824009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,880,000円
(2)補助金確定額
3,880,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,637,059円
人件費・謝金 366,274円
旅費 308,022円
その他 319,645円
間接経費 249,000円
合計 3,880,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2019-05-29
更新日
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